「アベノミクスの成功に向けて全力を尽くしたい!」~いつまでたっても成功しないアベノミクスに拘泥し、国民のためではなく、安倍総理への忠義を尽くす世耕弘成氏が経済産業大臣に就任 2016.8.3

記事公開日:2016.8.4取材地: テキスト動画
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(取材:阿部洋地、記事:福田玲子、記事構成:岩上安身)

※8月7日テキストを追加しました!

 2016年8月3日に発足した第三次安倍第二次改造内閣。経済産業大臣として就任したのは、それまでも安倍総理の片腕として、総理のゆくところいつも同行していた世耕弘成氏である。

 世耕氏は2012年末の第2次安倍内閣発足以後、内閣官房副長官として、3年7か月の任期を務めてきた。これは実は、「史上初の長さ」である。

 今回は、経済産業大臣のみならず、産業競争力担当大臣、原子力経済被害担当大臣、原子力損害賠償廃炉等支援機構担当の内閣府特命担当大臣と、多数の役職を兼任する形となった。

 世耕氏は会見で、「アベノミクスの成功に向けて全力を尽くしたい!」と意気込みを語った。

■ハイライト

■全編動画

  • 日時 2016年8月3日(水)21:30~
  • 場所 経済産業省(東京都千代田区)

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「安倍総理に貢献」的な発言ばかり~世耕氏が目指すのは、国民のための政治ではなく安倍総理のための政治!?

 「経済最優先を掲げる安倍総理がじきじきに、私を名指しで、官邸での経験を活かし、経済の切り込み隊長になってほしいと言われた」「アベノミクスを世界に売り込んでほしいと言われた」。世耕氏はこのように、嬉しそうに語った。

 「安倍総理の望む方向にどういうふうにもっていけるか、経済産業省としてどのように貢献できるかという視点でもって取り組んでいく。私は官邸で、調整機能的役割も果たしてきた。そうした経験を活かし、先ほど総理が明確にした働き方改革、これも経済産業省としてどういうことができるか考えながら、大臣として役所を引っ張っていきたい」

 短い就任の挨拶であるが、要は、「大臣として安倍総理に貢献していきたい」ということである。「国民」という言葉は、ひとことも出なかった。世耕氏が貢献したいのは国民ではなく安倍総理であることは、腹の中だけでなく、言葉の上でも明白だ。今後、彼が行っていくのは、「国民のための政治ではなく安倍総理のための政治」であるだろう。

原発について「国が前面に立つ」と強調しつつ、山口県の上関原発については「県と中国電力の行政手続」と上手な大とぼけ

 簡単な挨拶のあと、質疑応答に移った。口火を切ったのはIWJだ。鹿児島では、川内原発再稼働反対の三反園訓(みたぞの さとし)知事が就任した。今後、どういうふうに話を進めていくのか?と質問すると、「県知事の考えをうかがい、適切に話し合っていく」と、まずは無難な回答を行った。

 原子力政策については、「原子力発電については依存度は減らしていくべき」だとする。しかし、「重要な電力であるため安全最優先で臨む」と述べる。再稼働は、「独立した原子力規制委員会が世界でもっとも厳しいレベルの新規制の判断に基づいて、地元の理解をえながら再稼働を進めるのが政府の一貫した方針」とのこと。

 また福島第一原発の廃炉および補償について質問が及んだ。

 大臣は、「賠償・廃炉の対策については、当事者である東電がまず責任を負うべき」としながら、「国も支援の前面に立つ必要がある」と述べた。

 「平成25年12月の、国と東電とで、廃炉についての役割の見直し等がなされた。これに沿って適切に対応していく。新たに何が出てくるかわからないので試算ができないのが現状だが、廃炉については、現在2兆円の資金手当てを出しているので、ただちに廃炉作業に不足が生じることはないはず」

 この平成25年の同意とは、“廃炉カンパニー”のことを指すと思われる。もっとも、これは廃炉のための会社が設立されたというもので、廃炉にあたっての現実的な施策のことではない。

 なお、中国新聞からは、山口県の上関原発工事の埋め立て許可延長についての質問があった。これについては、「山口県と中国電力のあいだでの行政手続きと考える」とのこと。また政府としては「原発の新増設は考えていない」と語った。

 先ほどの「国が前面に立つ」という姿勢とは正反対である。山口県と中国電力の背中に隠れて、上関原発新設の動きは、国の責任ではないと言わんばかりだ。

中小企業不振の原因は、「コストがあがっているのにその分が大企業から支払われていない」こと

 次に最重要課題である経済政策について。世耕大臣は、官房副長官時代、下請け取引適正化などに取り組んできた、とアピール。大臣は、「アベノミクスで大企業が空前の利益を上げる一方、その恩恵が下請け企業にまで届いていない」ことをまず述べ、その理由として、下請け企業が「エネルギーコストが上がったり、原料代が上がっているのに、その分が大企業から支払われていない」ことをあげ、続けて「これを是正することで、アベノミクスの果実を地方の中小企業に届けることができる」と語った。

 なんだ、そんな簡単なことで、苦しむ中小企業は救われるのか、だったらもっと早く手を打っておいてくださいよ、という思いと同時に、待てよ、と思う。

 エネルギーや原料の多くは輸入でまかなわれており、そのコストは、円安にすれば高くつくものではないのか?一生懸命円安に誘導してきたのがアベノミクスで、今やそれが破綻して円高に触れているのだが、つじつまがあまりにもあっていないのではないか?

 そのあたりはさておき、大企業と下請け企業との間に不公平な取引きが行われていることを大臣として認めたことは大きい。ぜひとも、この不当取引には果敢にメスを入れていただきたい。

「大臣として安倍総理の政治的意思を実現していきたい」

 NHKは「成長戦略の柱として力を入れていくべき第4次産業について」質問。人工知能、ロボットなどの分野で、ドイツ、アメリカなどで遅れを取っている分野があると指摘した。

 それに対し、世耕大臣は「医療介護、自動走行などが日本が得意としている分野」であると語り、「官民あわせてとりくむ」。そして、世界でも有数の「産学連携イノベーション拠点を作っていく」とも述べた。このイノベーション拠点が、軍事分野と結びつくものでないことを心から願いたい。

 TPPに関しては、世耕大臣は「TPPはオープンで公正な経済ルール」であるとする。そして「資源を持たない日本にとって参加は必須」「昨年、11月、すべての参加国で早期発効が決議された。ぜひ本年中で議会を通過させたい」と述べた。条約の内容、審議の過程も徹底的に秘密にされ、公開されないTPPのどこが「オープン」なのか、理解に苦しむ。

 TPPに対する反対論に対しては、「一部農家で慎重な姿勢があるが、主要5品目の輸出チャンス拡大のためにも丁寧に説明して理解を得たい」と述べた。TPPに入れば、農家の多くがつぶれ、食糧自給率も下がると、政府自ら試算を明らかにしている。「丁寧に説明」されたら、農家は機嫌よく廃業を受け入れるというのだろうか。参院選において、秋田をのぞく東北各県で与党候補が敗退した理由が何であったか、真剣に受け止めているとはいいがたい発言である。

 総じて、「安倍総理のため」に忠義を尽くす姿勢が際立つ会見であった。閣僚のひとりとして、安倍総理に忠実に仕えることは間違いないであろう。しかし、それが必ずしも、国民の利益のために尽力するとは限らないのではないか。

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