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「アベノミクスは、エンジンの空ぶかし。いくらふかしたって、一歩も前に進まない」――
6月22日に公示を迎えた参議院議員選挙。今回の選挙で定数が5から6に増えた東京選挙区で、民進党は候補者2人の当選を目指す。民進党から東京選挙区での出馬を表明しているのは、蓮舫氏、そして冒頭で「アベノミクスはエンジンの空ぶかし」と辛辣に批判する声を張り上げた小川敏夫氏である。
小川氏は、党代表代行として圧倒的な存在感を放ち、東京選挙区でのトップ当選が予想される蓮舫氏の陰に隠れがちだが、元検事でかつ元裁判官という経歴を持ち、現在は弁護士でもある。裁判官、検察官、弁護士という法曹三者を経験した法律家というのは、そうそういない。しかも、野田佳彦内閣では法務大臣も務めた、民進党のベテラン議員である。
この日、17時から新宿の伊勢丹前で行われた小川氏の街頭演説では、民進党の岡田克也代表をはじめ、長妻昭代表代行、柿沢未途衆議院議員、連合の神津里季生会長がマイクを握り、小川氏への支援を訴えた。
▲民進党・小川敏夫氏
小川氏は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、「非正規雇用をさらに増やそうとするものだ」と述べ、次のように訴えた。
「今やらなくてはならないのは、働く人を大切にするということです。働く人が消費できるようにならなければ、企業も投資できないですよ。
若い世代の閒では、非正規雇用が４７パーセント。半数近くが派遣労働などの非正規雇用なのです。派遣労働や非正規雇用ですと、いつ雇用がなくなるかわからないのです。賃金が安定しないのです。
子どもも持てなくなり、少子化が促進され、どんどん活力がなくなってしまう。このままでは若者から日本の社会が崩れ去ってしまいますよ」
法律家としては、改憲の問題など、論じれば言いたいことがあるに違いないが、この日はアベノミクスがもたらした負の影響について有権者に訴えていた。
東京選挙区は、自民党の中川雅治候補、公明党の竹谷とし子候補、民進党の蓮舫候補は組織が強く、手堅く当選すると思われるが、それ以外に、誰が入ってくるか。実際は無党派層、浮動層の票が多いため、予断を許さない。
4人目の議席は、共産党の山添拓候補が頭ひとつ抜け出して、当確に近いところまで迫っているとも言われる。山添氏は弁護士。法曹界での実績で圧倒する小川氏とはしては、負けたくないところであろう。
おおさか維新の会からなぜか出馬を決めた田中康夫氏は、作家で、元長野県知事、知名度はきわめて高く、シャープで鋭い権力批判が持ち味である。しかし、橋下氏を批判していたはずなのに、おおさか維新から出馬というのは、どうしても引っかかる。出馬会見をぜひチェックしてみていただきたい。
また、毛色が変わるが、自民党から急遽出馬が発表された朝日健太郎氏は、ビーチバレーの五輪代表であり、長身、イケメンのスポーツマンで、知名度、好感度は高いだろうが、政治家としてはまったく未知数である。だが、自民党から出る限りは、これまで政治についてたいして考えてこなかったとしても、議場では改憲の発議に賛成するだろう。間違いなく、「さわやか」スポーツマンであっても「改憲派」である。
そして、同じくギリギリの出馬表明となった三宅洋平氏。どこまで若い無党派層を集められるか。三宅氏にはIWJは前回の参院選も含め、ずっと注目を続けてきた。
これら4人の有力候補と競い合いながら、小川敏夫氏は「非改憲派」の1人として議席をとることができるか。しかし、この4議席を争うライバルたちは、知名度が高い候補者が多い。共産党の山添拓氏、おおさか維新の田中康夫氏、自民党の朝日健太郎氏、無所属の三宅洋平氏。
初日の街頭演説で、岡田代表をはじめ、民進党の幹部が応援に入ったのは、小川氏を当選させ、「東京選挙区でなんとしても2議席を獲得する」という民進党の強い意志の表れであるとみられる。民進党は、東京選挙区で2議席を獲得することができるか。
共産党の山添拓候補、民進党の小川敏夫候補、無所属の三宅洋平候補、この3人が4議席目から6議席目までを占めると、自民1、公明1、非改憲勢力が共産1、民進2、無所属1と、2対4で改憲派を上回ることになる。現実的には厳しいが、改憲勢力による「改憲クーデター」の目論見を阻止するには、首都・東京での主権者・国民の自覚と危機感を持った投票が、大きく影響力をもつ。
