安保関連法案に反対する東海・大学人の集会・共同行動 2015.9.11

記事公開日:2015.9.11取材地: テキスト動画
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(榊原千鶴)

 「安保関連法案の危険性の本質は『新ガイドライン実施法』だということ。アメリカ側が何を狙っているかと言えば、自衛隊の完全なる下請け化、沖縄米軍基地の恒久化だ」――。

 「愛大九条の会」、「安保法案に反対する愛知大学人有志の会」、「自由・平和・民主主義を愛し戦争法案に反対する名古屋大学人の会」、「『九条の会』愛知・大学人の会」主催による「安全保障関連法案に反対する東海・大学人集会&共同行動」が行われた。

 集会では、名古屋大学大学院法学研究科教授・愛敬浩二氏(憲法学)による基調講演「安保関連法案をめぐる国会情勢、世論動向、そして、私たちの課題」を行い、安保法案に隠された米国の思惑を暴いた。また、東海地区の大学から、安全保障関連法案に反対する運動についての報告が行われた。集会には、24大学、100名を超える参加があった。

■ハイライト

  • 17:30〜 集会
    • 国会情勢等報告 愛敬浩二氏(名古屋大学教授、憲法学)
    • 大学人スピーチ 和田肇氏(名古屋大学教授、労働法)/田川光照氏(愛知大学教授、仏文学)/大岡頼光氏(中京大学准教授、社会学)/太田弘一氏(愛知教育大学教授、栽培学)/高橋洋氏(愛知学院大学教授、法学)
  • 19:00〜 共同行動 名古屋駅名鉄百貨店前で街頭宣伝
    • スピーチ 日比嘉高氏(名古屋大学准教授、日本近現代文学・文化研究)/長峯信彦氏(愛知大学教授、憲法学)/岡本祥浩氏(中京大学教授、居住福祉)/伊藤雅之氏(愛知学院大学准教授、宗教社会学)/和田肇氏(名古屋大学教授、労働法)/津田道明氏(日本福祉大学)/南出吉祥氏(岐阜大学准教授、教育学)

 前半では、「安保関連法案をめぐる国会情勢、世論動向、そして、私たちの課題」と題し、愛敬浩二氏が次のように講演した。

安保法案をめぐる世論動向

 愛敬浩二氏:JNNが9月5日・6日に行った世論調査では、「安保法案の今国会成立」に賛成は30%、反対は61%と、3分の2ぐらいが反対で、賛成の2倍であり、「法案の説明」が十分が13%、不十分が61%と、約5倍の人々が説明は不十分であると考えている。

 NNNの調査(9月4~6日)でも、安保法案の今国会成立に、賛成は25%、反対は66%で、いずれのテレビ局の世論調査でも、同じような数字が出ている。
 今日の「中日新聞」に載っていた豊橋市の桜丘中学校の生徒を含めた1712人の回答では、法案に反対は77%で、テレビ局の世論調査よりも高い数字が出ている。法案の説明が不十分と答えたのは86%と高い数字。

 現在の世論動向は、9月中に安保関連法案の通過を許すような状況ではない。これがまず一点目に確認したことである。

安保関連法案をめぐる国会情勢

 「中日新聞」が9月7日に行った中部六県の参議院議員への安保法案に関するアンケートでは、自民党議員13名中、賛成と回答したのは4名、9名は無回答と、賛否を答えられない。

 回答しなかった理由について、愛知県選出の藤川政人議員は、「審議中に付き回答を控える」と言った。国会議員は普通、審議中には責任を持って自分の意見をいうべきだ。岐阜選出の渡辺猛之議員は、「審議で多忙に付き、回答を控える」と答えた。

 改選議員6名のうち、回答したのは1名と回答率は非常に低い。非改選議員7名中、回答したのは3名であった。世論情勢との関係で、来年改選がかかっている自民党議員は回答できない。そこまで我々の世論が追い込んだ。その意味でも、きちんと世論を作っていくことは大切である。

 一方、公明党議員は、3名すべてが賛成と回答した。そのうち2名は、丁寧に賛成する理由を述べている。公明党の場合、今国会で通らないと、次に国会を召集して議論するとなると、来年の参議院選挙に影響がでてくるので困る。だからとにかく通したい。もし危ないところに行くなら、もう一度議論すればいい、という立場だと思う。

 だから、法案通過により、これこれの危険があるとなると、公明党議員は反発する。元防衛官僚の柳澤協二さんが、国会に参考人として呼ばれたとき、最も厳しい野次を飛ばしたのは公明党議員だったという。違憲合憲の話より、具体的なことを説明されると嫌なのだと思う。国民に知られる前に通したいと思っている。

 自民党参議院議員は総裁選もできないほど締めつけが強い政党だから、必ず賛成票を投ずるはず。けれど賛成であることを発言したくない。かなり利己的な態度を取らざるを得ないところまできている。

 60日ルールについては、最初から60日ルールを使うつもりだったとは思わない。なぜ95日に延長したかと言えば、きわめて単純な理由。これまでの過去最長は、1981年第96通常国会94日。これより長い95日。これで、ちゃんと議論したと言いたいためで、最大の関心は『戦後最長』という話だと思う。

 60日ルールが使えるか、使えないかについては、精一杯使わないはずだと思う。政府与党側が使うと明らかにすれば、参議院議員はぐだぐだと議論し、投票せずに60日を使わせて、後で、「衆議院は参議院を馬鹿にして」と言って終わらせる。アンケートにも答えたくない人が、積極的に投票したいはずがない。

 60日ルールを使うと言うと、衆議院の公明党に負担をかけることになる。再可決まで付き合わせると、公明党が今度何を言うかという問題がでてくる。無理をしてでも、参議院で通過させて、17日本会議で可決というラインを狙ってくると思う。これも政治なので、それができるかは運動の高まりによる。

 60日ルールを使うと言ってしまえば、参院を甘やかせることになり、その後の政権運営がたいへんになるという考えで、使わない。そういう認識を持って、運動をしていく必要がある。

安保関連法案の廃案に向けた私たちの課題

 今日は時間がないので、安保関連法案の問題点は話さない。ただ、安保関連法案の正確な理解を広げることが重要だ。

 1点目は、本法案は、日米新ガイドライン実施のための立法であり、これにより、日米同盟のグローバルな性質、政府一体となっての対応、切れ目のない対応、つまり『自衛隊は切れ目なく対応する』と約束している。

 集団的自衛権行使に踏み切りたいのは、パートナーがいるから。パートナーと約束している以上、実行しないと約束違反ではないか、という状況にしている。

 法案審議の段階で、いろいろ質問することは大切だが、安保関連法案の危険性の本質は『新ガイドライン実施法』だということ。アメリカ側が何を狙っているかと言えば、一般論のレベルで言えば、自衛隊の完全なる下請け化、沖縄米軍基地の恒久化だ。

 いままでは、日本国憲法9条のもとで、安保条約はぎりぎり正当化されてきた。だから、なぜ沖縄に海兵隊がいるのか、沖縄の安全と日本の安全はどういう関係があるか、と言えた。これは、憲法九条のもとで、米軍が、日本と極東の安全ために駐留すると説明してきたから。だからタダで基地を貸すし、思いやり予算もあげてきた。

 ところが今度の新ガイドラインでは、日米同盟のグローバルな法律と言っているので、アメリカはグローバルに活動するため、日本の基地を使えるし、自衛隊も下請けとして後方支援をさせられることを約束した。

 こうなれば、米軍は出て行く必要がなくなる。アメリカからすれば、このふたつを手に入れられるだけも、願ったり叶ったりだ。だからアメリカは本気。日米新ガイドラインの青写真は『第三次アーミテージ報告書』だ。安保関連法案は、新ガイドライン実施法だということを確認して、危険性を理解することが重要だ。

 2点目は、山口繁・元最高裁長官が、9月3日の「朝日新聞」で安保関連法案は違憲だと言った。9月8日には、大森政輔・元 内閣法制局長官も違憲だと言った。大森さんは、海外派兵体制を構築する際の解釈論を築き上げた張本人。その張本人が違憲だと言った。

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