【大阪都構想】「いろいろな声を自由に発してほしいと催促するのが大阪市長の役目だが、橋下市長は分断しようとする」――「都構想」の危険性を明らかにする学者記者会見 2015.5.5

記事公開日:2015.5.11取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

※5月11日テキストを追加しました!

 「大阪都構想はイメージばかりが先走り、情報が偏っている。大阪市主催の住民説明会は『催眠商法』と揶揄されるほどの賛成誘導だ。わかりやすさからは、ほど遠い」──。

 大阪市を5つの特別区に分割することの是非を問う住民投票が2015年5月17日に近づく中で、危機感を募らせた関西の学者たちが、5月5日、「『大阪都構想』の危険性を明らかにする学者記者会見 ~インフォームド・コンセントに基づく理性的な住民判断の支援に向けて~」と題した会見を大阪市内で開催し、19人が意見表明を行った。

 京都大学教授の藤井聡氏は、「4月27日、立命館大学教授の森裕之氏と共に呼びかけを始めた。当初、賛同者は6〜7人ほどと予想していが、これまでに賛同者126名、所見寄稿者102名となった。この記者会見にも19名が登場してくれた」と、反響の大きさを語った。

 「橋下市長は、学者が反対を言うと、すぐにデマだと攻撃する。こういう風潮は危惧されるが、どう考えるか」という質問に藤井氏は、「とても憂慮する」と答え、「議論の進め方が危険だ。このまま進むと、日本の自由民主主義社会に大きな破綻を招く。今回、維新の党の松野頼久幹事長は『藤井氏が各メディアに出演することは、放送法4条における放送の中立・公平性に反する』との文書を送りつけた。由々しきことだ」と語気を強めた。

 これについて帝塚山学院大学教授の薬師院仁志氏は、「反対論を話すと、すぐに『負け組になる』と脅される。いろいろな声を自由に発してほしいと催促するのが、大阪市長の本来の役目だが、橋下市長は分断しようとする。マイナス面は隠し、良いことだけを言いたい放題だ。しかし、今日この場に来て、同志がこんなにも大勢いて嬉しかった」と発言した。

記事目次

■ハイライト

賛同者126名、所見寄稿者102名──大阪都構想を危惧する学者たち

 まず、呼びかけ人のひとりである藤井氏が、会見のサブタイトルに使った「インフォームド・コンセント」の説明から始めた。

 「医療現場では、治療のリスクが前もってわかっている場合、医療従事者は、それについて適切な情報を患者に与えなければならず、患者側はそれに基づき、理性的な判断を下す。そのインフォームド・コンセントが、5月17日の住民投票にも必要だと判断した」

 大阪都構想については、行政学、政治学、法律学、地方財政学、都市経済学、都市計画学などの研究者からは、大阪市民の暮らしや都市のあり方に直結する、さまざまな危険性が指摘されている。藤井氏は、「しかし、都構想に関する情報はイメージばかりが先走り、情報が偏っている」と言う。

 そして、「4月27日、森氏と共に呼びかけを始めた。当初、賛同者は6~7人ほどと予想していが、賛同者126名、所見寄稿者102名となった。この記者会見にも19名が登場してくれた」と、短期間での反響の大きさを語り、これまでに寄せられた学者たちの所見を紹介していった。

「二重行政は、そもそも存在していない」

 地方自治論、行政サービスについては、「低下は避けられない」「大阪府への権限集中を危惧」「介護・医療・福祉を統括したケアから遠ざかる」という意見があり、また、「大阪市の自治権喪失」「大都市の活力をそぎ、長期低迷を生む」「大阪市民の共同体消失の危険」との声もある、と紹介した。

 特区制度については、「東京都の場合は、もともと集権的な体制を作る目的があった。特別区は、憲法の定める地方公共団体とは解されておらず、存在が不安定だという指摘も多かった」とした。

 また、政治哲学的な議論で、「住民は行政サービスの消費者で、権限を府に渡してもいいという意見があるが、そもそも住民が消費者に成り下がっていいのか」という所見があること、さらに、藤井氏自身の見解として、「大阪市の廃止は、有機体の死を意味する」と述べた。

 今回、大きなイシューになっている二重行政論では、「そもそも(二重行政は)存在していない」という意見と、「二重行政のどこがいけないのか」という2種類の反論があると述べ、「(二重行政を問題とする)市側の主張には根拠がない。大阪都構想は、それに関係のないことを入れ込み、せいぜい単年度で2〜3億円程度しか改善しない」と指摘した。また、リスク管理の観点から二重行政を積極的に求めるケースもある、とした。

大阪都構想を支えているのは、橋下市長の弁舌だけ

 経済・産業政策論では、「都構想は、大企業に奉仕する広域地方経営体を作るだけで、地場のコミュニティの崩壊につながり、さらなる衰退を招く」「大阪市の再生には、都市経済政策の実行が重要」との意見が寄せられているという。民営化反対の筆頭には、住民のライフラインである水道事業が上がっている。

 国土都市計画論の視点からは、「大阪都構想では活性化は望めない。24区に都市計画の権限を委譲すべき」「広域交通インフラが不十分。また、防災への配慮がまったくない」という批判があり、研究・教育面では、「府・市公立校の二重行政への批判は、新大学構想提言書の橋下氏の説明と相反する」「教育は効率性だけで語るものではない」など、その劣化を懸念する意見が出ている、と憂慮した。

 また、政治学的プロセスへの批判も多く、「大阪市主催の住民説明会は、催眠商法と揶揄されるほど賛成誘導に徹していて、わかりやすさからは、ほど遠い」「橋下市長の弁舌だけが、大阪都構想を支えている」という辛辣な指摘もあった、と藤井氏は語る。

 伝統・文化論については、「大阪市を失くすことは、伝統や文化も断ち切ること」「大阪市民の歴史と文化、伝統ある大都市自治体が失われる」と、さまざまな分野から多くの学者が警鐘を鳴らしている、とした。

南海トラフ大地震の想定、防災・減災への備えは?

 次に会見参加者からの発言に移った。まず、京都府立大学教授の川瀬光義氏(財政学・地域経済学)が、「東日本大震災の、政府にとっての一番の教訓は何だったのか」と疑問を投げかけた。

 それは防災・減災の支流化だ、と言葉を続けた川瀬氏は、「日本は、政策を展開する際、防災・減災を見込まなくてはならないのに、政治家は防災・減災は票につながらないと考え、すべて後付けにする。私に、大阪府・市議会からの講演依頼はあるが、大阪維新の会からは、まったく声はかからない。彼らは勉強していない」と話した。

 行政サービスの最大の課題は安全・安心だ、と断言する川瀬氏は、「都構想では『大阪府に任せる』との文言だけで、議論が長引き、その間、防災・減災の議論が停滞してしまった」と懸念を表明し、「市営地下鉄や水道事業の民営化はあり得ない」と語気を強めた。

 南海トラフ大地震の被害予測では、市内100ヵ所からの出火、水道管の耐震化も遅れていることから大規模な断水も予想される、と川瀬氏は言う。「市民が、大丈夫だろうとタカをくくるのは仕方ない。だが、市役所が同じ意識では困る。今回の都構想がいかに未熟であるかは、情報公開がされていない点からもわかる」と述べ、さらに、防災対策は一朝一夕ではできず、20年近くかかることを指摘し、このように続けた。

 「民主主義では、一人ひとりがステークホルダー(利益享受者)になって関係していかなくてはならない。また、民主主義は揉めれば揉めるほど成熟する。急ぐ必要はない。都構想の宣伝文句は嘘っぱちで、専門家が見ればすぐわかる。ちゃんと設計をするべきだ」

府立大と市立大を高く評価したはずの橋下市長の矛盾

(…会員ページにつづく)

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