「6000億円の大阪市の業務は府へ託し、今までの事業は、府の下に一部事務組合を作って受け持つ。その下に特別区があるので、二重行政より悪い三重行政になる。大阪府と大阪市が一緒になれば4000億円浮くと言うが、実際の財源効果は1億円しかない」──。
大阪都構想に伴い、特別区を作ることについて、大阪市議の前田おさみ氏は、このように指摘した。
大阪市24区を特別5区へと改編することの是非を問う住民投票(大阪市における特別区の設置についての住民投票)が、2015年5月17日に行なわれる。かねてから、大阪府と大阪市の二重行政の無駄なくし、地方行政のスリム化を主張する橋下徹大阪市長が、先頭に立って進めている事案だ。
大阪市による住民説明会には橋下市長も出席し、4月14日から連日、各地域で開催されているが、大阪市会議員の有志らは「賛成集会だ」と反発。自由民主党大阪市会議員団が各会派に呼びかけ、公明党やOSAKAみらいの市議らとともに、「大阪市廃止・分割を考える会(仮称)」として全24回の反対集会を企画し、税収の懸念、市民サービスの劣化、政令指定都市の自治権の失権など、懸念される影響を住民に訴えている。
2015年4月16日、大阪市西成区の梅南集会所で「『大阪市廃止・分割を考える会』 IN 西成区」が開催された。元大阪市会議員の柳井伝八氏、前市会議員の小林道弘氏、大阪市会議員の前田おさみ氏と柳本顕氏らが、特別区の問題点や、橋下市長の狙いなどを説明し、集まった市民に「住民投票は棄権せず、正しい判断を」と訴えた。
大阪都構想が現実になれば、現在の財源である宝くじの収益金(年間143億円)や法人税、固定資産税が区に入らなくなり、税収は市民税、タバコ税、軽自動車税の3つだけになるという。さらに、大阪市の年間の生活保護予算2900億円のうち、自治体負担分の150億円がさらに増加する見込みであること、また、ゴミ焼却場とその経費分担の問題についても言及があった。
西成区選出で大阪市議を3期務めた小林氏(2015年4月12日の市議選で落選)は、「大阪市を良くするなら、賛成と反対の両者を交えて話し合うべき。変化も必要だが、2年間で決めるのはあまりにも拙速だ」と主張した。