4月~6月期で4年ぶりの黒字回復~東京電力「2014年度第1四半期決算 記者会見」 2014.7.31

記事公開日:2014.7.31取材地: テキスト動画
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 2014年7月31日17時から、東京電力で廣瀬直己社長らによる「平成26年度第1四半期決算 記者会見」が開かれた。販売電力料等の売上高が前年同期比+9.9%を達成し、経常費用が増加するも、4年ぶりに4月~6月期で黒字を回復した。

 今期は経常損益段階で4年ぶりに黒字を達成したことから、「原発がなくても経営に支障はないのではないか」と記者が質問した。廣瀬社長は「電気事業の収益は、上期は良くて、下期は悪くなる、構造的なもの」であるから、今期が黒字でも「まったくこれで安心できる状態ではない」と反論した。

 修繕費は繰り延べ等して、「後ろに残している」だけであり、「昨年度より状況は厳しい」という。柏崎刈羽の再稼働をしなくてもいいということは、全くないという考えが改めて確認された。

■全編動画

 

  • 会見者
  • 廣瀬 直己(ひろせ なおみ)・代表執行役社長
  • 文挟 誠一(ふばさみ せいいち)・執行役員経営企画本部事務局長
  • 武谷 典昭(たけたに のりあき)・経理部長

4年ぶりの黒字化達成

 前年同期と比較し、売上高は連結+9.1%、単独+9.9%増え、連結で15,685億円、単独で15,322億円だった。販売電力料は単独で前年同期比+8.2%、13,855億円。販売電力量は-7%、約7億kWh減少したが、単価の上昇が大きな要因だと廣瀬直己社長は説明した。

 一方、経常費用では、燃料費、減価償却費、支払い利息が、前年同期に比べ減少したものの、人件費、修繕費、購入電力料等が増加した。

 燃料費は5年ぶりに前年同期比を下回った。為替レートが前年同期に比べ約3円円安に振れ、100億円の負担増になっている。一方で火力の発電量が8億KWh減少したことで100億円の減、千葉火力、鹿島火力など火力発電のガスコンパインド化による高効率で110億円の減。結果、トータルで110億円の負担減に繋がったという。

 しかし、経常費用全体の42%を燃料が占めており、依然として高止まりしていることは「ご理解いただければ」と廣瀬社長は説明した。

 一方、人件費は退職給与引当金等により前年同期比+18.5%の1,001億円だが、震災前の2010年度4月から6月期の1,154億円に比べると、-13.2%削減している。修繕費は+1.1%の585億円だが、本年度分を一括経常しているためであり、震災前の2010年度4月から6月期の937億円に比べ-37.5%と大きく抑えていることを強調した。

 購入電力量は+8.1%の2359億円で、太陽光発電電力の購入電力費用だという。その他、+14.2%の1980億円は、再生エネルギー特別措置法納付金の費用だと説明した。

 第1四半期決算としては過去最高の売上高となる一方、原発停止による燃料費増加分を打ち消すコストダウンに徹底して取り組んだ結果、経常損益は単独で390億円、連結で525億円と、4年ぶりに4月から6月期で連単ともに経常損益の黒字化を達成した。

通期の見通しは「未定」

 2014年度通期の業績見通しは、いまだ「未定」のままである。柏崎刈羽原子力発電所の運転計画が示せる状態でないため、予想が困難であるという理由だ。

「やるべきことをしっかりやってスタートを切った」

 2014年1月15日に認定された「新総合特別事業計画」のスタートを切る四半期決算発表を黒字で飾ったことから、「やるべきことをしっかりやってスタートを切った」と廣瀬直己社長は自信を見せた。今後も社員一丸となり、さらなるコストダウン等、社員一人一人がやるべきことを責任を持ってやる、と意気込みを見せた。

基本的に電気料金の値上げはしたくない

 北海道電力が電気料金の値上げを申請したことを受け、料金値上げの意思を記者が質問した。「柏崎刈羽原発が動いていないので、引き続き厳しい」と本音を吐露しながらも、「コストダウンに終わりはない」「どこまでできるかは、なお見極める必要がある」と基本的に電気料金の値上げはしたくないという考えを示した。

 コストダウンの努力により電気料金の値上げは避けたいが、「どこまでできるのかということだ」と廣瀬社長は答えた。

柏崎刈羽原発の再稼働は必要か

 柏崎刈羽原発は、新・総合特別事業計画では7月再稼働としていたが、その気配はない。廣瀬社長は、「数字をつくるための仮置きだ」というようなスケジュールありきではなく、やるべきことをまずしっかりやってからだと述べた。

 今期は経常損益段階で4年ぶりに黒字を達成したことから、「原発がなくても経営に支障はないのではないか」と記者が質問した。廣瀬社長は「電気事業の収益は、上期は良くて、下期は悪くなる、構造的なもの」であるから、今期が黒字でも「まったくこれで安心できる状態ではない」と反論した。

 修繕費は繰り延べ等して、「後ろに残している」だけであり、「昨年度より状況は厳しい」という。柏崎刈羽の再稼働をしなくてもいいということは、全くないという考えが改めて確認された。

 続けて、再稼働に際して何が問題なのかという質問に対しては、「どんな安全対策をとっているかを地元に理解していただくとともに、避難計画、退避計画や訓練がまだ不十分。福島第一原発事故の検証もしっかり対応していきたい」と答えている。

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以下、東京電力ホームページより、リンクを表示

 平成26年度第1四半期決算について
添付資料
 決算概要(PDF 16.3KB)
 収支比較表(当社単独)(PDF 14.3KB)
 通期の見通し(PDF 10.5KB)
 <参考1>収支諸元表(単独)(PDF 11.3KB)
 <参考2>カンパニー等の収支(単独) (PDF 17.1KB)

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