2014/05/24 【愛媛】「国のやり方に抵抗しようと思ってきたし、今後もそうしたい」 〜小出裕章氏講演「原子力発電所という機械」

記事公開日:2014.5.24
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 京都大学原子炉実験所の小出裕章氏は、新たに原発を作り、輸出するために、福島のことを忘れさせようとしている政府のやり方を批判しながら、「原発事故を起こした世代の人間として、子どもたちを守るための責任を果たさなければならない」と訴えた。

 2014年5月24日(土)、松山市に隣接する愛媛県伊予郡松前町の松前総合文化センターで、小出裕章氏講演会「原子力発電所という機械」が行われた。小出氏は、原発の安全神話が崩壊したことを指摘しながら、いまだに福島第一原発の事故は収束していないとして、「1号機から3号機は炉心が溶け落ちて、どこにあるかすらわからない。ただ、水をかけ続けるだけで、汚染水があふれている。むき出しになった4号機の使用済み燃料の移動作業も完了していない」と語った。

 さらに、福島原発事故で膨大な量の放射性物質が環境にばらまかれ、土地は汚染し、人は被曝したことについて、「どんなに微量の被曝でも危険はある。それが現在の学問の到達点である」と述べ、今回の事故に何の責任もない子どもだけは守らなければならない、と訴えた。

  • 記事目次
  • 原発も機械。事故を起こさない機械などない
  • 浴びていい放射線の量などない。どんなに微量でも被曝は危険
  • 福島原発事故で子どもに責任はない。子どもだけは守らなくては

■Ustream録画
・1/4(13:40~ 3分間)主催あいさつ

・2/4(13:44~ 54分間)小出氏講演

・3/4(14:39~ 10分間)

・4/4(14:49~ 59分間)

  • 講演 小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)

原発も機械。事故を起こさない機械などない

 原子力発電所という施設について、小出氏は「原子力発電所は非常に単純な『機械』。内部にある圧力容器は、厚さが16センチもある猛烈に分厚い鋼鉄製の圧力釜である。その中に水が張ってあって、ウランが浸けてある。そのウランを核分裂させると熱が出てくるので、水が沸騰して蒸気として噴出する。それでタービンという羽車を回して発電する。ただのお湯を沸かす機械である」と語る。

 「しかし、火力発電所は、東京湾、大阪湾にもたくさんあるが、原子力発電所だけは都会に作ることができない。なぜかというと、ここで燃やしているものがウランだからである。ウランを燃やし、核分裂をさせてしまうと、核分裂生成物という放射性物質が大量に溜まる。だから、原子力発電所だけは都会でなく、過疎地に建てるということを、今日までずっとやってきた」と解説した。

 「原発は機械である。事故を起こさない機械なんてない。そして、原発を動かすのは人間である。人間は、時に誤りを犯す。当たり前のことである。だから、原発でも、小さな事故から大きな事故までさまざまな事故が起きる。これに対して、原発を推進してきた人たちは、大きな事故、破局的な事故は『想定不適当』だとして、無視してきたのである」。

 「どういうことかというと、『5重の壁で厳重に放射性物質を閉じ込めるので、放射能は絶対に外に漏れない。だから、放射能が外に出る事故は、考えること自体が不適当だ』ということである。特に、原子炉格納容器は絶対に壊れない、ということにしてしまった。だから、国は原発立地において、『原子炉格納容器だけは、いついかなる時も壊れない』という仮定のもとに安全審査をやってきた。絶対に壊れないから、放射能も出ないので被害はない。そういう主張で今日までやってきた。しかし、福島第一原発では原子炉格納容器が壊れて、大量の放射性物質が吹き出した」と、小出氏は安全神話の破綻を指摘した。

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浴びていい放射線の量などない。どんなに微量でも被曝は危険

 放射能の被害に関して小出氏は、「放射能で汚染された地域の人々は、捨てられてしまっている。日本の政府、電力会社は、あたかも低い被曝であれば『安全、安心、何の被害も出ない』と言わんばかりの宣伝を流してきた。今でも、そうであるかのように宣伝をする人たちがいる。しかし、残念ながらそんなことはない。放射能は必ず危険」と述べ、BEIR-Ⅶ報告を紹介した。

 これは、米国の科学アカデミー内の生物が放射線被曝した時の影響を調べる専門委員会が、2005年に出した報告である。「『利用できる生物学的、生物物理学的なデータを総合的に検討した結果、委員会は以下の結論に達した。被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない』と報告された。被曝に関する限り、浴びていいという量は存在しない。どんなに微量の被曝でも危険はある。これが現在の学問の到達点である」。

 合わせて、ICRPの2007年の勧告にも触れ、「『約100ミリシーベルト以下の線量においては不確実性が伴うものの、がんの場合、疫学研究および実験的研究が放射線リスクの証拠を提供している。約100ミリシーベルトを下回る低線量域でのがん、または遺伝的影響の発生率は、関係する臓器および組織の被曝量に比例して増加すると仮定するのが科学的に妥当である』」と紹介した。これらの報告をもとに小出氏は、「日本では100ミリシーベルト以下の被曝であれば『安全、安心、無害だ』という学者すらいる。こんなことを言う学者は、刑務所に入れなければいけない」と断じた。

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福島原発事故で子どもに責任はない。子どもだけは守らなくては

 住民の帰還について、小出氏は「日本政府は、1年間に20ミリシーベルトという被曝をする地域にまで『帰れ』と言っている。20ミリシーベルトは、私のような放射能を使って働いて給料をもらう、ごく特殊な大人に対して適用した基準。それを『赤ん坊に対しても許す』と日本政府は言い出した。今回の事故には責任のない子どもたちに、そんな危険を負わせるなど、私は我慢がならない。国のやり方に抵抗しようと思ってきたし、これからもそうしたい」と表明した。

 子どもを守るためには、「一番いいのは避難。放射能と戦っても勝てないので、まずは逃げる。でも、国が人々を捨ててしまった以上、避難できる人は大変少ない。今現在も汚染地帯で、多くの人は苦悩しながら生活している」と話す小出氏は、次のような対策を示した。

 「避難できなければどうするか。サマーキャンプなどで疎開してみる。夏休みの1週間でもいい、とにかく汚染地帯から子どもを引き離す。そして、校庭や園庭の地面の剥ぎ取り。子どもたちが集中的に暮らす場所である学校の校庭や幼稚園の庭は、必ず土を剥ぎ取らなければならない。もうひとつは、給食の材料を厳選することである」。

 今の被災者への対応に関して、「福島のことを忘れさせようとしている。これまで日本では、58基の原子力発電所が認可されてきた。その原子力発電所すべてを認可したのは、自由民主党。安全性を確認した、と言っている。そして、福島事故が起きた後も、安全性を確認して再稼働させると言っている。伊方原発もそうである。新たに原子力発電所も作る。そして、金儲けのためには原発の輸出もする。彼らにとっては、自分たちの責任をまず逃れて、さらに原発を推進するためには、福島の事故を忘れさせることが必要なのだ」と批判した。

 最後に小出氏は、「とにかく、子どもを守らなければいけない。守りたいと話してきた。こんな事故を引き起こしてしまった大人として、今、子どもたちを守らないのであれば、私は私自身が許せない。だから、やりたいと思っている。一人ひとりが、何をやることが自分の責任なのかを考えてほしい」と訴えた。【IWJテキストスタッフ・花山/奥松】

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