「東京都知事選挙、舛添要一さんの当選が確実になりました」――。
2月9日、都知事選の投票が締め切られると同時に、NHKは舛添要一候補当確の速報を出した。
固唾を呑んでテレビを見守っていた宇都宮選対スタッフらは、驚嘆の声を上げた。悔し涙を流すスタッフもいた。宇都宮健児候補は組んだ腕を崩さず、舛添インタビューを流すテレビをじっと見つめ続けた。
テレビの電源を切り、静まり返った宇都宮事務所では、大勢の報道カメラのフラッシュ音だけが響いた。
(IWJ・原佑介)
特集 2014東京都知事選
「東京都知事選挙、舛添要一さんの当選が確実になりました」――。
2月9日、都知事選の投票が締め切られると同時に、NHKは舛添要一候補当確の速報を出した。
固唾を呑んでテレビを見守っていた宇都宮選対スタッフらは、驚嘆の声を上げた。悔し涙を流すスタッフもいた。宇都宮健児候補は組んだ腕を崩さず、舛添インタビューを流すテレビをじっと見つめ続けた。
テレビの電源を切り、静まり返った宇都宮事務所では、大勢の報道カメラのフラッシュ音だけが響いた。
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結果を受けた宇都宮氏は、メディア向けの記者会見に先立ち、支援者らに挨拶した。「今の結果の通り。残念だが勝利できなかった」と、静かに語り始めた。
「投票率が低かったことが、不利に働いた可能性もある。ただ、一回目とは手応えが違った。運動の広がりは、街宣や練り歩きでも感じることができた。それがどうなったか、得票率の結果はまだ出ていない。それ次第で、我々の運動が、どれだけ前進しているかがわかるのではないかと思う」
また、舛添氏が当選後のテレビインタビューで「政策が伝わった」とコメントしたことに触れ、「政策討論があまり行われていなかったのは残念だった。16回ほど公開討論会の機会があったのに。本来、選挙戦は、政策を掲げて都民に訴えることが中心だと思う。多くの人に伝えるためには、テレビなどのメディアを通した政策討論会が、もっともっと必要だったのではないかと感じている」とした。
その後、設けられたNHKの単独インタビューに対し、宇都宮氏は、政策討論会を主催してこなかったNHKの報道姿勢を真正面から批判。1080万人の都民に政策を伝えるためには、街頭やネットだけでは限界があるとし、「公開討論会はNHKでもやるべきだった」と批判。「これについてどう考えているのか、こちらが質問したい」と質し、選対スタッフや支援者からは拍手と歓声が上がった。
その後、記者会見が行われた。今回は、前回の都知事選と違い、ネット選挙が解禁された。ネット選挙の手応えについて宇都宮氏は、「極めて重要な武器になったと感じた。前回は1割の都民にしか届かなかった。8割、9割の人にどう届けるかが課題で、選挙戦略の一環として重要だった。これからも重要な資材になるんじゃないかと思う」と回答した。
脱原発候補一本化については、「何度も話はあった。脱原発以外にも、高齢者福祉の問題、待機児童、都営住宅、雇用問題も切実。そういうことを抜きに、一本化はどだい無理だった」と一蹴。
さらに、「我々は公開討論に応じると門戸を開けていたが、その機会はなかった。また、都知事選は知名度の高い人の後出しジャンケンが有利と言われていたが、私は邪道だと思う。都民の皆さんに政策を訴えて支持を得るのが選挙。だから私は真っ先に立候補し、すべての公開討論会の依頼に出席通知を出した」と話した。
また、新都知事に選ばれた舛添氏について、「国家戦略特区を受入れていいのかどうか、国はやろうとしているが、都知事としては都民の命と暮らしを守らなければいけない。この辺りをしっかり考えていただきたい」と言及。
舛添氏の「政党助成金流用問題」、選挙期間中に3000円相当のバッジを有権者に配布したとされる「公選法違反疑惑」について、「舛添氏の2億5千万の政党助成金問題は、法に触れる可能性がある。知事になった場合は、前任者(猪瀬直樹氏)がお金も問題で辞職になっているのだから、バッジの問題含め、自らのお金の問題については会見して、説明してほしい」と述べた。
記者会見を終えた宇都宮氏は、選対スタッフに拍手と楽器演奏で迎えられた。落選直後でありながら、まるで当選したかのような活気にあふれた宇都宮選対スタッフらは報告会を行い、17日間の選挙戦を振り返った。
「宇都宮さんはタフ。無茶な日程も、文句ひとつ言わずに対応してくれた。愚痴も一切言わずに、いつも笑顔で、街宣が終わって帰ってきてからも『皆さんお疲れ様』と声をかける。こんな良い候補者はいないわ、と思っていた」
「当選のお祝いをする気満々で来たが、今日は記念すべき東京デモクラシーの始まりの一日だ」
「全然負けた気がしない、次は勝てる」
女優の木内みどり氏も駆け付けた。日頃から脱原発を訴えてきた木内氏は、今回の「一本化問題」で、仲間たちの間で板挟みにあい、苦しんだという。涙を流し、スピーチした。
「本当に宇都宮さんでよかった。この事務所開きをして、私も勝手なことを言った。いろいろ不満もあった。『最新式の戦車』と『幼稚園の三輪車』の戦いだと思った。私は、『お前が余計なことするからだ』、『引っ込んでろ』となじられた。だから、宇都宮さんの横で手を降ることも、スピーチすることもできなかった。辛かった。
自分にできることは、ちょっとだけどやってきた。たぶん、舛添さんが勝つんだろうな、と思っていた。でも、宇都宮さんが二位だと聞いて、『そうだろう!!』って思った。次は組織票を蹴散らそう。私は宇都宮さんに力をもらった。宇都宮さんは強い。例えここに誰もいなくても、同じことをする強さがある。私は宇都宮さんについていく」
一本化問題について、宇都宮氏は、「選挙で別れたが、終われば運動はノーサイド。選挙期間のことは水に流して、運動のことは一緒にやっていくことが重要。そういったメッセージを発信することで、そういった環境づくりは私も頑張りたい」と訴えた。
宇都宮選対の一員で、弁護士仲間でもある海渡雄一氏も、「せっかくなので」と一本化問題に言及。「僕も『お前が降りれば一本化するんだ』と言われて、相当苦しんだけど、宇都宮さんについて最後までやってきてよかった。細川さんに勝てたということは、やはり一本化の議論が根本的に間違ってたんじゃないかと思う」と話した。
政策を出し合い、支援者を交えた討論を抜きにして、一方的に「降りろ」と迫ってきた鎌田慧氏らを指し、「親友だが、そのことは反省してもらわなければいけない。その反省の上に立って『ノーサイド』にすべきだ」と主張。
「ことは民主主義に関わる。細川さんを支持したことには文句がない。しかし、『あなたたちは出る資格がない』と言った。そんなことを言う自由が誰にあるのか。民主主義の基本として、やってはいけないことをやった」と述べ、「その反発が我々を盛り上がらせた」と笑いを誘った。
選対事務所は夜11時を過ぎても人で賑わい、活気に包まれたまま、17日間の選挙戦を終えた。
山本太郎さん・三宅洋平さんの参議院選に続いて、新しい市民選挙の形が示されたように思います。宇都宮さんのような優しい候補が市民の側にいることに救われる思いでしたし、またどれだけタフなのか、驚きました。
応援には梅津和時さんも参加し、別の動画で見たところでは、この何日か後にはソウルフラワーユニオンのライブの舞台に宇都宮さんが登って踊ってましたね。音楽家にとって表現の自由は死活問題ですから、音楽業界にも宇都宮さん指示がますます広がってほしいところです。
市民運動(というと、今の新しい流れを的確には表現できていないかもしれませんが)のシンボルとして、宇都宮さんの活動に益々期待が大きくなりました。