阪田雅裕・元内閣法制局長官、安倍政権が前のめりに進める集団的自衛権行使容認を批判 ――公開討論会「〈解釈の見直し〉による 集団的自衛権の行使容認問題を考える」 2013.10.5

記事公開日:2013.10.5取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 安倍政権が目指す憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認の是非をめぐる討論会が開かれ、阪田雅裕・元内閣法制局長官、慶應義塾大学の小林節教授の他、国会議員から自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行と民主党の枝野幸男憲法総合調査会長が参加した。主催したのは、ジャーナリストの今井一氏が事務局長を務める「国民投票/住民投票」情報室。

現在の9条解釈「簡潔明瞭で常識的」

 平和主義を規定した憲法9条と自衛隊のかね合いについて、歴代の日本政府は「自衛隊は合憲だが海外での武力行使はできない」という解釈を示してきた。この点について阪田氏は「簡潔明瞭で常識的。法論理の基盤がしっかりしている」と語り、憲法の解釈を変えるためには「現行の解釈が論理的に間違っていると国民に示さなければならない」と説明した。

 これに対して船田氏は「最近の緊迫した世界情勢に照らせば、個別自衛権だけで日本を守れるのかという心配がある。集団的自衛権に踏み込まざるを得ないのではないか」と述べ、政府・自民党が進める集団的自衛権の行使容認に理解を求めた。

民主党・枝野氏「立憲主義が確保されないなら亡命」

 この日の討論会では、「立憲主義」の理解を巡り、自民党の船田氏と民主党の枝野氏の間で激しい論戦が展開する一幕があった。船田氏が「立憲主義でガチガチに憲法に縛りをかけて、日本が滅んでしまってはもとも子もない」と、政府の判断による解釈改憲の必要性に言及すると、枝野氏は「この日本という国家で立憲主義が確保されないなら亡命する」と応戦。小林氏も「国民が国の主であることをやめて自民党という世襲貴族集団に国を委ねてしまうなら、日本人をやめます」と枝野氏に同調した。

■ハイライト

  • 日時 2013年10月5日(土)
  • 場所 全国町村会館(東京都千代田区)

 「政府が集団的自衛権の行使を、ちゃんとした手続きを踏んで行う分には異論はない」──。冒頭、主催者を代表して、今井氏がこう発言。「だが、憲法解釈でそれ行うのは、立憲主義に反するのではないか」との問題提起を行った。また、今井氏は「全国紙の世論調査では、日本人男性の半分が『解釈による集団的自衛権の行使を容認する』と回答している」とも指摘。その理由については、「国民の多くが『立憲主義』を知らないことに根ざしていると思う。この間、いくつものテレビ番組が集団的自衛権の問題を取り上げているが、概して立憲主義には触れていない」と懸念を語った。

自民党は「立憲主義」をどう見ている?

 枝野氏は、9条の改憲私案を『文藝春秋』(2013年10月号)に寄稿済み。「あの論文は『憲法が良い方向に改正されるのであれば良し』とする、私の考えがベース」と説明した上で、集団的自衛権の行使容認に向け、自民党の動きがエスカレートしていくのを「自衛権の明文化」で防ぐ狙いもあった、と明かした。「立憲主義に基づく憲法は、権力を縛る道具であるはずなのに、縛られる側(安倍内閣)が恣意的に過去の憲法解釈を変えてしまえば(=憲法解釈だけで実質的な9条改憲を行ってしまえば)、憲法が憲法ではなくなる」。

 船田氏は「最近の緊迫した世界情勢に照らせば、個別自衛権だけで日本を守れるのかという心配がある。つまり、一部で集団的自衛権に踏み込まざるを得ないのではないか」と主張し、「立憲主義」について自身の考えを表明した。「憲法は権力を縛るものだが、憲法は日本の根幹を守るものでもあると思う。よって(立憲主義に関する)柔軟な見方があっていい。ただ、地球の裏側まで範囲を広げて米軍を助けるような、フルサイズの集団的自衛権の行使にまで踏み込むのなら、憲法改正の手続きを踏まねばなるまい」。

 船田氏の発言を、真っ向から否定したのは小林氏。「いったん集団的自衛権を認めれば、世界の常識からして、行使の範囲を限定するようなことは認められないだろう。米国側は、日本が世界中を転戦する国になることをイメージしている」。小林氏は法律学者の立場から「安倍政権がやろうとしていることは違憲」と断じ、「内閣が、戦後ずっと後ろ盾にしてきた自衛隊の存在だけは何とか合憲とし、『ただし海外では使えない』という、内閣法制局の秀才たちが苦心の末に作り上げた理屈を、今になってかなぐり捨てるのは無理な話」と喝破した。

日本国憲法から特色が失せる

(…会員ページにつづく)

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