ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の全面勝利をめざす支援の集い 2013.6.1

記事公開日:2013.6.1取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月1日(土)14時より、大阪市北区の大阪グリーン会館で「ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の全面勝利をめざす支援の集い」が行われた。現在、近畿で原爆症認定申請却下の取り消しを求め、32人の原告が提訴中だ。8月2日に大阪地裁で、そのうち9名に対して判決が下される。ノーベル平和賞受賞団体でもある核戦争防止国際医師会議ノルウェー会議の報告や、原爆症認定にかかる認定基準の変遷と問題、活動の経緯などを、訴訟弁護団の弁護士が報告した。

■全編動画
・1/2(1時間2分)

・2/2(1時間25分)

  • 開会あいさつ 平信行氏(京都「被爆2世・3世の会」)
  • 講演 眞鍋穰氏(核戦争防止国際医師会議 [IPPNW] 会員、阪南医療生協診療所長)「核兵器の非人道性に関するオスロ会議(3月)に参加して」(仮題)
  • ピアノ演奏 三浦直樹氏(弁護士)
  • 講演 田中煕巳(たなか・てるみ)氏(日本被団協事務局長)「原爆症認定制度見直し検討会の現状と課題」
  • 近畿弁護団より報告「裁判闘争の現局面について」
  • 日時 2013年6月1日(土)14:00〜
  • 場所 大阪グリーン会館(大阪府大阪市)
  • 主催 ノーモア・ヒバクシャ訴訟近畿弁護団/ノーモア・ヒバクシャ訴訟支援近畿連絡会
  • 告知 大阪原水協サイトPDF

 冒頭、京都「被爆2世・3世の会」の平信行氏が、「民主党政権から自民党に変わって、安倍政権下でのさまざまな右翼的発言と行動、橋下市長の慰安婦発言など、由々しき事態が進行している。現在、9人の原告が結審し、8月2日に大阪地裁で判決が出される。また第2次の訴訟団も控えている」と挨拶をした。

 眞鍋穰氏(核戦争防止国際医師会議会員、阪南医療生協診療所長)が「核兵器の非人道性に関するオスロ会議(3月)に参加して」と題した講演を行った。「今回のオスロ会議が開催された背景には、NPT再検討会議の行き詰まりの打破、地雷やクラスター爆弾禁止条約の先例づくり、国際赤十字社の決議などがある。すでにNATO参加国は、核の傘の下にあるので、禁止条例とは強調せず、人道的に核兵器は違法であることを啓蒙する趣旨での世界大会だった」と、会議の概略と現地での活動を説明した。

 続けて、眞鍋氏は、原爆医療訴訟医師団意見書のポイントを紹介した。「当初、アメリカと放射線影響研究所は、直接被爆のみを考慮した。残留放射線、放射線降下物などを無視していた。しかし、のちにネバダ州の原爆実験所の風下で、多くのがん患者が現れた。それで、住んでいた期間とがんの種類だけの条件で、認定するようになった。しかし、広島や長崎原爆医療訴訟では、残留放射線などを認めず、紙の上の計算データで是非を決めた。また、同じがんであるに関わらず、認定されたり、されなかったりした」。

 さらに、残留放射能のわかりやすい例として、「三好高等女学校の生徒が、原爆投下2週間後に被爆地へ救援活動に入り、2次被曝して原爆症になった。それで政府に被爆者申請をしたが、残留放射線はないとの理由で却下された。そのため、訴訟を起こして原爆症認定を獲得したこともある」と述べて、ノルウェー会議でアピールした内容と、会場の様子も紹介した。最後に真鍋氏は「日本政府が初めて発言した歴史的な会議にもかかわらず、日本のマスコミは、ほんの少し広島で報道した以外は、一切取り上げない。日本にいると、世界はまったく核兵器廃絶に動いていないと思うが、世界では日々、廃絶のために運動している。日本政府も、核への認識を変えた姿勢を世界へ見せて、活動を共にすれば、核兵器廃絶は必ず実現できる」とアピールして、講演を締めくくった。

 次にノーモア・ヒバクシャ訴訟近畿弁護団の豊島達哉弁護士から、原告32名のうち、出席者8名を紹介をした。また、これから提訴する被災者の方々、ノーモア・ヒバクシャの会結成前の原爆被爆者訴訟の原告団も紹介した。

 休憩後、三浦直樹弁護士が、3曲ほどピアノ演奏を披露した。その後、真鍋氏と共にノルウェー会議にも参加した、日本被団協事務局長の田中煕巳氏の「原爆症認定制度見直し検討会の現状と課題」と題した講演に移った。田中氏は「当初、ノルウェー会議でのスピーチが許可されず、日本政府に掛け合った。そうしたら、持ち分の2分間だけ話すことができた」とノルウェー会議でのエピソードを披露し、本題に入った。「厚労省の『原爆症認定制度のあり方に関する検討委員会』に、被団協代表2名が入り、2010年12月9日から検討会が始まった。2013年6月11日には21回目を数える。しかし、厚労省や委員への不信から、余計な抵抗をしたため、かえって長引かせてしまったことを反省している。ただ、政府は抜本的な改善をする意志はない。委員でも、認定制度などを本当に理解できる人は3名しかいない」。

 「我々の提言がまったく反映されていないことを訴えると、ある委員は、現在の認定制度を変える必要はない、改善すればいい、と答える。最初は、当時、一人ひとりが、どれくらいの放射線を浴びたのかが問われ、判断基準とされた。この方法が裁判で否定され、3.5キロ以内での被爆、100時間以内に入市した人など、新しい審査基準に変わった経緯がある。被爆量を問わないとしたことは、活動の成果であった。しかし、専門家の検討委員には、よく思われていない。もしかすると、後戻りしてしまう危険もある」。

 田中氏は続けて、「現在、被爆者へ対して残留放射線の検討をしているが、測ることはできない。その被爆線量を盾に、認定を避けようとしているのだ。そこで、われわれの提言は、『もう被爆線量の基準を撤回、被爆手帖があれば被爆したことにする』というもの。しかし、認定規定の10、11条がなくなることになるため、医療特別手当などがなくなってしまう。それを避けるため、『制度全体を見直そう』という提案にした」と話した。さらに、「提案の目的は、被爆線量を基準に認定することを、なくすこと。そして、次の8月2日の判決は勝つ、と信じているが、新基準でも、あいまいな認定部分が残っているので、油断はできない。今後も、みんなで運動し、訴えて改善していく必要がある」と話し、認定基準検討委員会や訴訟団の目的などを説明し、講演を終えた。

 最後に、近畿弁護団の愛須勝也弁護士が「裁判闘争の現局面について」の報告をした。「最初に断っておくと(2003年から全国17地裁に)306名で起こした原爆症認定集団訴訟と、ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟は、別の運動だ。86合意締結だけでは欠陥だ、と言い続け、近畿弁護団では、義務づけ訴訟を起こし、追加訴訟を続けた。『厚労省は近畿訴訟団が目障りで仕方ない』と、今でも言われている。この訴訟運動がなかったら、厚労省の思うまま、認定を却下し続けたことだろう。また、裁判を続けていくことで、世界へ核の恐ろしさを発信することにもなる」と話し、集団訴訟の概略とノーモア・ヒバクシャ訴訟との関連や活動状況を語った。そして、弁護団の西晃弁護士の閉会の挨拶で、集会の幕を閉じた。

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