2013年4月28日(日)13時30分から、大阪市北区の毎日インテシオで、3月11日と12日にアメリカで行われた、ヘレン・カルディコット財団主催の国際シンポジウム「福島原発事故の医学的・生態学的影響」の報告会が開かれた。
このシンポジウムに出席した橋本百合香氏と川井和子氏が、原発事故から2年が経過した日本の状況が、世界の研究者から注目されていることなどを報告した。
(IWJテキストスタッフ・荒瀬/奥松)
2013年4月28日(日)13時30分から、大阪市北区の毎日インテシオで、3月11日と12日にアメリカで行われた、ヘレン・カルディコット財団主催の国際シンポジウム「福島原発事故の医学的・生態学的影響」の報告会が開かれた。
このシンポジウムに出席した橋本百合香氏と川井和子氏が、原発事故から2年が経過した日本の状況が、世界の研究者から注目されていることなどを報告した。
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ヘレン・カルディコット財団のカルディコット氏は「社会的責任を果たす医師団」の創立者で、福島第一原発事故による日本での健康被害を懸念し、2012年には来日講演会を行なっている。3月のシンポジウムには、世界各国から、原子力工学、放射線障害の研究者たち20名ほどが集まり、橋本氏と川井氏、竹野内氏の3人は、シンポジウム2日目に、日本の現状を報告するランチタイム報告会を行なった。川井氏は「私たちの報告会は急遽実現したものだが、多くの研究者から反響があった」と述べた。
東京の開業医であった橋本氏は、3.11の原発事故を機に関西に移住。2011年は、被災地の健康相談会の医師として、多くの子どもたちを診察している。子どもたちの健康被害について、橋本氏は「2011年6月から、福島と東日本の子どもたち500人以上を診察してきた。これらの子どもたちは、緊急避難の必要性がある。自分が診た3人の女の子と5人の男の子は、甲状腺が大きく腫れていたが、検査も治療もまったく受けていなかった。日本では、こういう症例がたくさんある」と語った。シンポジウムでは、子どもたちの甲状腺などの写真を示して現状を報告したというが、「海外では、日本で健康被害が出始めていることが、あまり知られていない。アメリカ人も、アメリカ在住の日本人も、本当のことを知りたがっていた」と述べた。
続いて、沖縄在住の竹野内氏からの感想と報告内容を、川井氏が代読した。「シンポジウムに出席し、福島の原発事故後に健康被害が生じていることが、反原発の活動をしている各国の人々にも知られていないと感じた。また、米軍のトモダチ作戦で被曝し、東電に補償を求めている兵士2名の報告が印象深かった。原発事故が起きていたと知ったのは任務の数週間後で、ヨウ素剤の配布は上官だけ、さまざまな症状が出て退職したことなどを聞き、改めて反原発運動の主体は被曝者であるべきだ思った」という感想と、シンポジウム当日の報告内容が読み上げられた。
川井氏は、自身が印象に残った報告例として、「チェルノブイリ事故の際、ポーランドではヨウ素剤を配布したため、甲状腺異常が出なかったと言われてきたが、実際には症例がある、と報告した人がいた。液体のヨウ素剤をこぼしたり、服用のタイミングを逃したり、さまざまな原因があるようだ。このようなヒューマンエラーが、症例にどう関わってくるのかを知りたい」と述べた。また、「チェルノブイリと日本のツバメの生態を研究している、サウスカロライナ大学のティモシー・ムソー教授の調査報告が興味深く、今年7月に日本での講演会を依頼した。日本とチェルノブイリを単純に比較はできないが、ツバメの生態異常がチェルノブイリより日本の方が早く出ているという研究結果もあり、比較しながら学ぶことがあるだろう」と語った。
雑誌『ママレボ』は、原発事故のあと、子どもたちを守るために立ち上がった全国各地の母親たちの活動を伝えている。和田氏は『ママレボ』創刊の経緯を説明し、「インターネットをしていない人にも情報共有ができるように冊子にした。放射能の話題はデリケートなので、伝え方に悩むときに使ってほしい」と話した。続けて、「原発事故子ども・被災者支援法は、チェルノブイリ法を参考に、被災者の声を反映させた理念法だが、まだ具体的な支援には結びついていない」と述べ、政府が新しく作った福島支援パッケージ(復興庁が2013年3月に発表した「原子力災害による被災者支援施策パッケージ~子どもをはじめとする自主避難者等の支援の拡充に向けて~」)については、「理想とはほど遠い。被災者の実態や意見が反映されておらず、むしろ、避難の権利を阻害するような、逆行するものになっている」と懸念を示した。
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