事実に基づく正しい歴史認識を
2月17日(日)、新大久保で「韓国を竹島から叩きだせin新大久保」と題したデモが行われました。22日(木)の「竹島の日」を前に、竹島が日本固有の領土であることを主張する目的で行われたこのデモを、IWJの原佑介記者と佐々木隼也記者が密着取材。
(岩上安身 拝)
2月17日(日)、新大久保で「韓国を竹島から叩きだせin新大久保」と題したデモが行われました。22日(木)の「竹島の日」を前に、竹島が日本固有の領土であることを主張する目的で行われたこのデモを、IWJの原佑介記者と佐々木隼也記者が密着取材。
デモの参加者約100人は、多くの在日韓国人・朝鮮人が暮らす新大久保で、「竹島に居座る不逞韓国人たちを、全員叩きつぶせ! 射殺しろ!」「韓国が竹島から出て行かないならば、ソウルの町を焼き討ちにしろ!」といった過激なヘイトスピーチを繰り返しました。
他方、この日は、日本語と韓国語の両方で「仲良くしようぜ」「ヘイトスピーチをやめよう」などと書かれたプラカードを掲げる人々も登場。約50人が新大久保のメイン通りに並び、デモ隊に対して抗議の意を表しました。参加者の一人は、IWJの取材に対し「親族に在日の人がいることもあり、彼らの差別発言には耐えられない。Twitterで呼びかけを見て参加した」と語りました。
領土問題は、日韓双方に主張があり、日本人として「竹島は日本の領土だ」と主張するのは当然のことだとしても、「射殺せよ」などと往来で徒党を組んで叫ぶのは、「上品」だとはとても言えません。
北方領土問題を抱えるロシアに対して、同様のことが起きていないのをみると、理由のひとつとして、日本人の一部に韓国・朝鮮人に対する根深い侮蔑的感情があるのではないかと思われてならず、非常に憂慮します。
そのような歪んだ差別観念が、今もなおはびこり続けているのはなぜか。いびつで公正さを欠いた歴史観に根ざしたものだからだと言わざるをえません。それはまた、これまで日本人が、歴史の事実を正確に知らされてこなかったからではないかと思われます。
前回も触れましたが、日本人の間には満州事変から太平洋戦争の敗北に至る「昭和」を間違いだったと認めつつ、それに対比するように、日清・日露戦争で勝利した「明治」を「栄光の時代」として讃える通俗的な歴史観が広く流通しています。
いわゆる「司馬史観」(作家の司馬遼太郎氏が『坂の上の雲』などで提示した歴史観)がその代表格でしょう。
現実には、日清戦争も、日露戦争も、朝鮮半島を戦場とした戦争でした。軍靴に踏み荒された当の朝鮮人としては、大変な迷惑だったに違いありませんが、「明治栄光論」に立つ通俗史観では、その点はスルーされてしまい、日清戦争は「朝鮮を清国から独立させるための戦争」だったと称しています。しかし、これは史実にもとづかない「俗説」と言わざるをえません。
先週のIWJ通信でもお伝えしたように、2月16日(土)にインタビューした奈良女子大学名誉教授の中塚昭氏は、1994年に福島県立図書館で発見された『日清戦史第二冊決定草案』という一次史料の検証により、日清戦争が日本軍による朝鮮半島への領土的野心を秘めた軍事行動である事実を明らかにしました。
たとえば、1894年に起きた東学党の乱(甲午農民戦争)と呼ばれる朝鮮人農民の一揆では、日本軍が武力鎮圧に乗り出しました。
この際、外国人(主として半島北方のロシア)の目に触れないように、農民の勢力が北東に広がるのを防ぐため、西南の、最終的には珍道(天童よしみの珍道物語で知られる)に追いつめて、約3万人も農民を殺害した事実など、ほとんど知られていません。
陸軍参謀本部の川上操六参謀次長が「向後悉ク殺戮スベシ(これからは皆殺しにせよ)」という電報を打っていたという事実も、今日では明らかにされています。
新大久保の反韓デモと歴史認識の問題については、私がレギュラー出演している文化放送「夕やけ寺ちゃん活動中」とMXテレビ「ニッポンダンディ」の中で解説しました。特に「ニッポンダンディ」では、反韓デモのヘイトスピーチの模様とそれに抵抗する人々の映像を生放送で流すという、テレビとしては非常にチャレンジングな試みをしました。
2月18日(月)文化放送「夕やけ寺ちゃん活動中」アーカイブはこちら
島根県が条例で定めた「竹島の日」の22日、松江市で、竹島が日本固有の領土であることを訴える式典が開かれました。政府関係者として初めて島尻安伊子内閣府政務官が出席したこの式典を、関西の中継市民の方のご協力を得て、IWJは現地から生中継しました。
式典には、自民党の小泉進次郎議員の他、民主党の松原仁議員、日本維新の会の西村眞悟議員、みどりの風の亀井亜紀子議員など、過去最多となる19人の国会議員が参加しました。
会場内の式典が粛々と進行する一方、会場外では混乱もありました。
会場周辺では、朝から日本の右翼団体が多くの街宣車を走らせ、大音量の拡声器で「韓国人を排除せよ!」といったスピーチを行なっていました。警備にあたる警官も多数出動し、あたりは物々しい雰囲気に包まれていました。
式典が始まる直前、韓国の市民団体が式典の開催に抗議する横断幕と韓国国旗を掲げました。IWJの原佑介記者が、この団体のメンバーである韓国人男性に密着。
この男性は、記者として式典会場に入ることを要望。会場内で「討論会申入書」と記された書類を配布しようとしたところ、県職員に無理やり制止され、会場外へと連れだされてしまいます。
原記者は、韓国人男性からこの「討論会申入書」を入手。そこには、過去二度の申し入れが聞き入れられなかったことへの抗議と、平和的解決のための対話の場を持つべき、との趣旨の内容が記されていました。
この韓国人男性は、会場外でIWJを含む多くのメディアに囲まれ、韓国語でアピールしました。IWJは、この一部始終を生中継。また、スタッフによる、韓国語の翻訳作業も進めています。会員の方限定に、この時の模様をIWJブログとして公開しています。また、竹島での取材の全貌は、メルマガでも詳しくお伝えしますので、「岩上安身のIWJ特報!」へのご登録をお願いいたします。
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日本時間23日未明、安倍総理とオバマ大統領による日米首脳会談が行われました。安倍総理は会談後の記者会見で、TPP=環太平洋経済連携協定について「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないとの認識に立った」と表明しました。
ところが、首脳会談後に発表された共同声明には「全ての物品が交渉の対象とされる」との記載がありました。これは、記者会談での総理の言葉といちじるしく矛盾をきたしています。
安倍首相は、帰国後、与党である自民党と公明党からの一任を受けたうえで、TPP交渉参加に向け、「早い段階で決断したい」と述べましたが、言葉の上でのごまかしを重ねて米国の言いなりになっただけとの批判は免れません。
もちろんTPPは、関税だけの問題ではありません。アメリカの民間企業が日本国政府に訴訟を起こすことを可能にするISD条項や、国民皆保険制度の廃止といった公的医療保険制度の縮小、非関税障壁の撤廃など、国のかたちそのものを変えてしまう非常に危険な内容を含んでいます。
危険なのは「ISD条項」だけではありません。
21日にインタビューした立教大学の郭洋春教授は、TPPの先行モデルだと言われる米韓FTAをかつての日本のような武力を伴わない、条約と法律による「植民地政策」であると表現しました。
郭教授によれば、米韓FTAには、条約に違反していなくても韓国政府から賠償金をせしめることのできる「NVC条項」もありますし、経済上の治外法権ともいうべき「サービス非設立権」もあります。
それだけではありません。
外資から税を取ることを不可能にする「間接接収による損害賠償」や、「待遇の最小基準」により、最終的には外国資本が、韓国の土地を手に入れることができるようになる、というのです。
2月22日 立教大学郭洋春教授インタビューは
【IWJブログ】「TPPは現代の植民地政策」 米韓FTAの惨状からTPPを考える ~郭洋春氏(立教大学経済学部教授)緊急インタビュー 2013.2.21
安倍首相はこのまま、果たしてTPP交渉参加の正式表明へと突き進むのでしょうか。
TPPの問題を改めて考えるためにも、今後、IWJがこれまで取材してきたアーカイブ動画から選りすぐったラインナップを、お届けする予定です。
2月23日(土)には、ニコニコ「岩上安身のIWJチャンネル」と「孫崎享チャンネル」で、「ブロマガ開設記念」と銘打ち、孫崎享さんとコラボレーション対談を行いました。
この日行われた「日米首脳会談」に対する感想を述べるところから始まり、TPP交渉参加問題、植民地政策としての米韓FTA、尖閣諸島をめぐる日中間の領有権争い、日清・日露戦争、さらには神功皇后の三韓征伐まで、話題は非常に多岐にわたりました。
ここ数週間にわたって私が取材し続けてきたこと、文化放送「夕やけ寺ちゃん活動中」やMXテレビ「ニッポンダンディ」で解説してきたことを、2時間にぎゅっと凝縮してお話しました。
IWJ入門、孫崎享入門として、最適な内容となったのではないかと思います。
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