【IWJブログ】TPP交渉、日本の『聖域』は守られない!米通商代表部声明により判明? 2013.3.15

記事公開日:2013.3.15 テキスト
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特集 TPP問題

 シンガポールで行われていたTPP第16回交渉会合が13日に終了した。この内幕を独自取材により明らかにした内田聖子氏(PARC事務局長)に14日、岩上安身がインタビューした。この交渉会合の閉幕に際し、アメリカ通商代表部(USTR)は声明を発表。その声明には、関税を含むいくつかの交渉グループは、最終段階の会合まで集まる予定はない、という驚きの内容が含まれていることが明らかとなった。

 USTRによる声明には以下のようにある。

<関税(customs)、通信(telecommunications)、規制の統一(regulatory coherence)、開発(development)を含むいくつかの交渉グループは、今後の会合で法的文書に関して再度集まっての議論は行われず、これらの分野において残った課題は、合意がファイナルとなる最終ステージの会合で取り上げられる予定である。このことにより、TPP参加国は、知的財産権、(公的機関の)競争、環境といった、残った最も難しい問題の解決に努力を集中させることができる>

 つまり、今から日本がTPP交渉に参加しても、関税に関する議論には参加することが出来ない、ということだ。「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」という自民党の公約は、TPP交渉において実現されないということが明らかになったと言えよう。

(※更新3/20)IWJの独自翻訳について、「customs」は「関税」ではなく「税関」を意味するのではないか、というご指摘をいただきました。我々は米国政府への直接取材をふまえ、現時点で「customs」は「関税」と訳するのが妥当であり、「誤訳ではない」という見解に立っています。その根拠を、「【IWJブログ】続報!米国政府へ直接取材:「TPPで関税(customs)等は今後議論されない」という米通商代表部の声明翻訳を、米国政府への直接取材で確認 2013.3.20」に掲載しました。ぜひご覧ください。

(※更新4月23日)追記:政府の公式見解では「関税」ではなく「税関」とのことが、3月29日日の予算委員会の答弁で示された。このブログで示した「関税の可能性がある」という見解は、あくまでブログを発表した3月15日及び、続報を出した3月20日時点でのIWJの見解である。

 以下、USTRによる声明文の翻訳を一挙掲載する。(翻訳はIWJが独自に作成)

(声明全文邦訳)
アメリカ通商代表部(USTR)による声明発表

2013年3月13日

TPP交渉は第16回の会合で順調に進展

 シンガポール — TPP交渉の第16回会合が本日終了したことを受けて、交渉責任者たちは本会合で設定していた目標を達成したと報告した。すなわち、オバマ大統領と他10か国の首脳が想定する、2013年という時間枠で次世代の包括的な合意の締結に向けて加速することへの交渉がまとまった。

 TPPを通じて、アメリカは貿易や投資の枠組みを設立し、21世紀のアメリカの利害関係者が直面する問題に対処し、アメリカの競争力を高め、ダイナミックなアジア太平洋地域におけるアメリカの貿易を拡張することにより、アメリカの雇用創設を後押しすることを目指している。アメリカはまた、透明性や労働権、環境保護など、核となるアメリカの価値観について合意を進めることも目指している。

 アメリカの主席交渉官でUSTR代表補のバーバラ・ワイゼルは、TPP参加国がこれまで達成した非常に多くの交渉問題に関する意見の一致に基づき、本会合において11か国の代表は、残存する問題について相互受け入れ可能な道筋を見つけ、合意の法文化を進める動きを進展させた。活発な会期間の折衝や、会合における全参加国が見せた実用主義や柔軟性の結果、関税、通信、投資、サービス、貿易における技術的障害、衛生や植物検疫の手法、知的財産、規制の統一、開発やその他の問題など、多岐に渡る領域において、多くの問題に対する解決を見出すことに成功した。

 この進展をもって、関税(customs)(※)、通信(telecommunications)、規制の統一(regulatory coherence)、開発(development)を含むいくつかの交渉グループは、今後の会合で法的文書に関して再度集まっての議論は行われず、これらの分野において残った課題は、合意がファイナルとなる最終ステージの会合で取り上げられる予定である。このことにより、TPP参加国は、知的財産権、(公的機関の)競争、環境といった、残った最も難しい問題の解決に努力を集中させることができる。

(※)「関税」という解釈は、あくまで(3月15日及び3月20日時点での)IWJとしての見解であり、「税関」という解釈の可能性を否定するものではない。

 11か国はまた、本会合において、商品やサービス、投資、政府調達のための市場アクセスを提供する包括提案を継続して進めることにおいても進捗を見せた。産業製品、農業、繊維製品の関税一括法案に加え、原産地規則、そしていかにアメリカや他のTPP参加国の企業にとって有益となるための地域的なサプライチェーンの発展を最大限促すかということについて、生産的な意見交換が行われた。また、交渉担当者は、サービス、投資、政府調達の市場を開くための各国の提案を議論した。11か国は前回の会合から進展した市場アクセスに基づいて、会期間のさらなる課題についても合意に至り、各国首脳が目指す高いレベルの志にふさわしい結果に向けての動きを続けた。

 3月6日、TPP交渉は一時中断し、交渉官たちはTPP参加国から300以上のステークホルダー(利害関係者)が参加するイベントに出席し、議論を交わした。ステークホルダーからのリクエストに応じ、シンガポール政府は交渉官と直接議論できるような場と、60のステークホルダーがあらゆる問題についてプレゼンテーションを行う場を用意した。その日はまた、ワイゼルや各国の交渉責任者はステークホルダーに交渉の概要を説明し、TPP会談の内容や進捗状況についての質疑を行った。

 4月半ばに、インドネシアのスラバヤで行われるAPEC貿易担当大臣会合の合間に、TPP担当大臣の会合が行われ、これまでの進捗状況の議論や交渉官に対するガイダンスの提示が行われる予定である。交渉が最終段階をむかえていることから、残るセンシティブな問題に対処すべく、各国政府高官同士によってさらなる積極的な議論が行われることとなろう。

 TPP交渉の第17回会合は5月15~24日、ペルーのリマで開催される。

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