2013年3月13日(水)16時30分から、東京都文京区の東京大学東洋文化研究所で、「安冨歩×平智之 対談」が行なわれた。同研究所教授の安冨歩氏と前衆議院議員の平智之氏が、現代経済学の多岐にわたるテーマについて話し合った。安冨氏は「経済の根本は、関所で通行料を徴収するシステム。国家とは最大の関所である。そこにさまざまな資本主義が相互依存している」と述べた。
(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)
2013年3月13日(水)16時30分から、東京都文京区の東京大学東洋文化研究所で、「安冨歩×平智之 対談」が行なわれた。同研究所教授の安冨歩氏と前衆議院議員の平智之氏が、現代経済学の多岐にわたるテーマについて話し合った。安冨氏は「経済の根本は、関所で通行料を徴収するシステム。国家とは最大の関所である。そこにさまざまな資本主義が相互依存している」と述べた。
■全編動画
平氏は「働くことが苦しいと思う人が、非常に増えていることが気になる。一方で、国の政策により、金融財政計画全体でマクロ的に元気になっていく感じがしているが、これは財務省と霞が関の中の話。一般の国民には未来に向かう夢がない。両者が完全に切離れていることは大変重大な問題で、これらが繋がらないことについて、経済学の立場からどう考えるか」と切り出した。
安冨氏は「それは、経済の考え方の胆である。経済学では、楽しい労働と苦しい労働を区別しない。楽しい消費、楽しくない消費という概念もない。効用という概念はあるが、これは不足を満たす考え方である。楽しいか、楽しくないかという部分は問われない。そこが経済学の最大の問題である」と述べた上で、「楽しいとは幸福につながることで、悲しい・辛いは幸福につながらない。そこをはっきりさせない限り、まともな経済の議論はできない」と語った。
平氏は「経済学は、精緻にし過ぎた結果、もはや経済学になり得なくなった。日本の政治や官僚の仕組みも精緻化しすぎている。もっと脇を甘くして、いろんなところを放ったらかしたほうがいい。その方が価値がもっと活き活きと出てくるのでは」と投げかけた。これに対して、安冨氏は「これは、経済学の考えるべきテーマだと思う。私の考えは、価値とは何かを問わず、価値を破壊するものを問うことである。なぜかというと、価値論は、その価値と価格が相同だ、という思い込みがあるからだ。実際には、たとえば愛情のように、どんなに価値があるものでも、価格がつかないものはたくさんある。価値と価格が相同していると考えるのは幻想で、それ自体が価値を破壊する行為である。価格とは、人々が納得するところで決まるものである。だから、考えるべきことは、価格ベースで動く物事が、最終的に人々の間で価値を生み出しているか、ということ。これは一人ひとりが感じるしかない」と話した。
安冨氏は、関所という考え方について、「これは経済の根本の利益論。利益創出のイメージは、通行料である。人が集まる場所を作ったら、場所代が取れる。現代では、コミュニケーションの結節点を作って、そこを占拠する方法で利益を出している」と説明した。そして、「国家というのは最大の関所である。そこに、金融資本主義、産業資本主義、商業資本主義、マスコミなどのコミュニケーション資本主義、メディア資本主義が相互依存して、最終的には国家資本主義によりかかっている」と述べた。これを受けて、平氏は「1年間の社会保障給付が100兆円を超えている。この100兆円のお金も巨大な関所システムでできていて、政治家は100兆円必要かどうかの議論を真面目にしていない。福田元総理の時に、年金100年安心プランを作ったが3年で破綻した。大丈夫と言いつつ、検証のないままに、関所システムをごまかしながら続けているのが、年金であり、医療であり、原発である。もしかしたら、教育もそうかもしれない」と語った。
さらに、安冨氏は「関所が関所であることに安住すると、絶対的に腐敗する。大きな問題は、関所にいる人々も不幸になることである。関所に入ると、関所を守ることが仕事になる。通行人からピンハネするだけの仕事は、楽しくもなんともないが、巨大な関所ほど巨大なピンハネばかりやって、それがピンハネでないかのように見せかけることに、膨大なエネルギーを消耗するから不幸になる。自分たちを幸福にするためにも、関所にいる人々は、関所の排除を全力でやらないといけない」と述べた。
その上で、関所解体のための手法の1つとして、「関所セクターに200万人いるとすると、そのうち100万人は天下り役人である。この人たちは貯金も年金もあるから首にしていい。残り100万人は、事業団を作って全員引き受けて、数年のうちに再就職させる。これだけで日本が再生する。大企業といっても社員は2〜3万人程度。銀行を解体しても10万人くらいだから、すべてをそのままの給料で抱えて、銀行を潰したら、信用金庫が活性化する。こういうことが必要だ」と述べた。
禁原発の平智之氏が、東大話法・魂の脱植民地化の安富歩氏に、「働くことが非常に苦しい、労働に苦痛を伴うという人が非常に増えている」と投げかけることから始まる、思考の飛翔空間。
立場主義、関所システム、1000に3つ、伝統文化、芸術、芸術は聴いたりみたりするものではなく自分でするもの、セーフティネット、逃げ場のある社会……出てくる話のすべてを理解できるのかというと、残念ながら私の場合は到底ムリ。。
それでも、「面白い」のです。わくわくするし、ぞくぞくする。
なんというか、個人的には、意味がわからずとも”スピードラーニング”的に聞き流し、何度も聴いているうちにいくつもことばがひっかかったり、意味が見えたり、理解の深まる対談なのではと思ったりもしています。(”スピードラーニング”やったことないですけど…w)
ここで描かれる社会が”机上の空論”や研究室の中のお話ではなく、体温を持った生身のものとして、本当になっていけば、なんていいのだろうと思う。
そのためにできることは無数にあるし、アプローチの仕方も人の数以上ある。
見ているものは、同じ。
片や原発推進、TPPへの参加、経済最優先、改憲……八方ふさがりのような世界があり、片や逃げ場もあれば芸術を謳歌し、それぞれが共存する世界がある。
どちらに住むかは、自分次第のような気がしてくる。
第2弾が、心より、待たれます。
コイケタ七味さんに全く同感です。この対談シリーズは昨日(1/9)も配信されましたが、だんだん進化していますね。昨日のモノなんか安冨先生の歌手デビュー!びっくりでした。勿論平さんとの対談も、ケンタロウさんを加えてのお話に変化。何が起こるか分かりません。今後に期待です。安冨先生の授業の方は一昨日で終わりかも。これも内容が濃くて、頭の悪い私には消化不良。ゲストの医師・小石川真実氏の生き様のすごさに頭がくらくらしました。今度は何をしでかすか目が離せません。
もう、5、6回拝聴しました。
とても、気持ちのいい話し合いです。
私は、基本的に子供を保育園に預けて自営業の夫をアシストしているのですが、自分で絵を描いて販売もしています。残念ながらそんなに忙しくはないです。でも、お二方の話を伺って、忙しくはない私だからできること、やるべきこと、が少し見えました。若い頃は大きな企業にいて少しバブルも味わっています。でも、昨年くらいからの日本の動きの異常さに気づいて、悶々とする毎日です。まずは友人にこの動画を勧めることからでもいい、何かできることをやって行こうと思います。お二人の今後の活動も楽しみにしています。