2011年4月4日深夜、東京電力本店内会見室にて行われた会見の模様。この日東電は、廃棄物処理施設地下などに溜まっている汚染水1万トンを海洋に放出すると突然発表、同日夜から放出を始めた。周辺の漁業関係者、自治体、また海洋でつながった近隣諸国への十分な通達・説明はなされておらず、会見ではフリーの記者を中心に疑問の声があがった。その後グリーンピースの調査により周辺で採取した魚から高濃度の放射性物質が検出。2012年3月現在も汚染水の放出は続いているとみられ注)国内の水産業、国民の健康に与える影響は予想できない。
(注:東電による「意図的な放出」は、2011年4月10日までに終了したものの、配管の劣化や地下のコンクリート損傷部分などからの「漏出」は2012年3月現在も続いている)
- 東電会見 4月4日 深夜25時(4月5日未明) 会見要旨
この日、東電は「5.6号機のタービン建屋内の水位が上がり、ディーゼルエンジンの水没を防ぐため」、または「より高濃度の汚染水が溢れて漏出してしまうのを防ぐため」との理由から、比較的低濃度とされる地下の汚染水1万トン以上の海洋への放水を決定。夕方より実施した。
なぜ今日なのか、という質問に明確な答えのないまま、回答は22時の会見へ持ち越された。しかし、そこでの東電側の説明から、建屋内に染み出している汚染水で確認出来たのは1箇所のみ(2ℓ/分弱)と判明。他にも数ヶ所から漏れており徐々に水位が上がる恐れがあったため、と付け加えたものの、どれほど建屋内に漏れ、どれほど水位が上がっているか、など具体的な情報が曖昧なまま、汚染水1万トン以上を海に垂れ流すという、前代未聞の措置を取ったことが露呈した。
これに対しフリーの日隅記者、木野記者が、本当に放水が必要だったのか、を激しく追及。さらに日隅記者、木野記者にフリーの上杉隆氏も加わり、放水を判断した責任者の名前、この会見時2階の本部にいる(この会見において責任者の名前を出さないという判断を下した)責任者の名前の開示を、これも再三に渡って求めるものの、最後まで責任者の名前を明かすことはなかった。
会見後のぶら下がりでも、中途半端な会見になった事へのお詫びを述べるばかりで、具体的な情報を出すことはなかった。(音声のみ)
<解説>
3月の原発事故発災直後から4月の半ばまで、東京電力による会見は、ほとんど本店1階の狭い会議室で行われていた。連日、新聞・テレビ等マスコミ各社、海外メディアの記者がすし詰め状態で24時間待機し、いつ始まるかわからない会見に臨んでいた。
この当時、東電の責任を追及していたのは、大手マスコミの一握りの記者とフリーランスの記者のみであった。2011年4月4日のこの会見においても、汚染水の意図的な海洋放出の責任は誰か、本当に放出は必要なのか、と厳しく追及していたのはフリーランス記者の日隅一雄、木野龍逸、上杉隆のみで、その他の記者は無言で顔をうつむき、厳しい追及をすることはなかった
※その後、フリーの木野記者に会見のまとめ解説をして頂きました。
【以下、会見全文文字おこし】
東電会見記者会見 4月4日深夜25時(4月5日未明)【00:57:04】
★東電・栗田=広報課長
★東電・小林/黒田=原子力設備管理課長
東電・栗田「よろしいですか。先ほどはすいませんでした。ちょっと私どもの不備がございまして、申し訳ありませんでした。5・6号機のですね、状況につきましてお話させていただきたいと思います」
東電・黒田「すみませんでした。少し整理ができましたので、わかっている限りで、ご報告させていただきます。