「党首公選が実現したとして、私が立候補し、志位さんに勝てるか?『勝つ・勝たない』よりも、党首公選をすることで党員の中で活発に議論を起こすことが一番大事!!」~2.27 日本外国特派員協会主催 松竹伸幸氏(元日本共産党員)記者会見 2023.2.27

記事公開日:2023.3.6取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2023年2月27日、午後3時より、東京都千代田区の日本外国特派員協会にて、元日本共産党員の松竹伸幸氏の記者会見が行われた。

 松竹氏は、会見冒頭、約20分にわたり英語でスピーチを行った。

松竹氏「ご存じのように、私は、日本共産党に党首選挙の実施を求め、実現した際は立候補することを表明した本(※)を刊行したことをきっかけに、共産党から除名されることになりました。現在、復党することをめざし、来年の1月に開かれる党大会での再審査を求める準備をしています」

 続けて、松竹氏は、党首選挙の実施を求める理由として、「私自身は、この日本で自民党政治への対抗軸をつくるためには、日本共産党の役割が不可欠だと考えています。そのためには共産党の自己改革が必要であり、党首公選の実施はそのための大事な手段になると思っています」との考えを示した。

 また、「この日本共産党が現在、大きな岐路に立っています。『政治路線』、『組織路線』の両方においてです。私が立候補したのは、この二つの点で自己改革ができれば、共産党が日本の政治を変えるための中心的な役割を果たすことができると思うからです」と述べ、政治と組織、両路線の問題点・課題について、具体的な説明を行なった。

松竹氏「共産党の大会決議は、軍事力のない社会に至る道筋を三つの段階にわけており(※)、『第一段階』では日米安保も自衛隊も存在していることが前提とされています。しかし、この段階でどんな政策をとるかは、綱領も大会決議も明らかにしていません。(中略)

※日本共産党の軍事力のない社会に至る道筋の三つの段階とは次の通りである。

 「第一段階は、日米安保条約廃棄前の段階である。ここでは、戦争法の発動や海外派兵の拡大など、九条のこれ以上の蹂躙を許さないことが、熱い焦点である。また世界でも軍縮の流れが当たり前になっている時代に、軍拡に終止符をうって軍縮に転じることも急務となっている。

 第二段階は、日米安保条約が廃棄され、日本が日米軍事同盟からぬけだした段階である。安保廃棄についての国民的合意が達成されることと、自衛隊解消の国民的合意とはおのずから別個の問題であり、自衛隊解消の国民的合意の成熟は、民主的政権のもとでの国民の体験をつうじて、形成されていくというのが、わが党の展望である。この段階では、自衛隊の民主的改革――米軍との従属的な関係の解消、公務員としての政治的中立性の徹底、大幅 軍縮などが課題になる。

 第三段階は、国民の合意で、憲法九条の完全実施――自衛隊解消にとりくむ段階である。独立・中立の日本は、非同盟・中立の流れに参加し、世界やアジアの国々と、対等・平等・互恵の友好関係をきずき(ママ)、日本の中立の地位の国際的な保障の確立に努力する。また憲法の平和原則にたった道理ある平和外交で、世界とアジアに貢献する。この努力ともあいまって、アジアの平和的安定の情勢が成熟すること、それを背景にして憲法九条の完全実施についての国民的合意が成熟することを見定めながら、自衛隊解消にむかっての本格的な措置にとりくむ」

参照:
憲法9条・自衛隊問題 憲法を生かした民主日本の建設を 日本共産党第22回大会決議より抜粋(2000年11月24日)

 私と志位氏の違いは、おそらく一つしかありません。一方の志位氏は、第一段階において侵略されたら日米安保も自衛隊も使うと明言しているが、共産党の基本政策はこの段階でも安保廃棄と自衛隊解消だとしています。

 他方の私は、そういう立場では国民に説明がつかないので、安保も自衛隊も使うというなら、それにふさわしい政策を確立すべきだと考えている。それが『核抑止抜きの専守防衛」なのです。私は、共産党を混乱からすくい上げようとしただけなのです」

 松竹氏は、続いて『組織路線』における問題点を説明した。

松竹氏「共産党がもっと国民に近い存在になろうとすると、組織のあり方は抜本的に見直す必要があります。外国メディアの方が共産党の支部(職場や地域ごとに存在している)を訪ねてみれば、共産党員は個性も自由もある存在だとわかるはずです。

 私が所属していた支部でも、選挙に負けたあとの会議などでは、『志位さんは長すぎる』『もう辞任したらどうだ』などの話が活発に交わされます。外交や防衛、経済、社会保障政策をめぐっても、綱領の枠内ではあっても、党員ごとにいろいろな異論が存在しています。(中略)

 ところが、内部の問題を外に持ち出さないという規約(※)があるため、国民からは共産党の多様性が見えてきません。共産党は異論を許さない政党、一枚岩の政党だとみなされており、国民から遠い存在になってしまっています。党首公選は、政策の違いを堂々と国民の前で争うものですから、その現状を克服することになります」

※内部の問題を外に持ち出さないという規約:
第2章(党員) 第五条(党員の権利と義務)(八)党の内部問題は、党内で解決する。
日本共産党規約(日本共産党、2000年11月24日改定)

 松竹氏のスピーチの後、各社記者との質疑応答が日本語で行われた。質疑応答では、この日の司会を務めた神保哲夫氏から以下のような質問があった。

神保氏「現在、党員資格の回復を求めていらっしゃるということで、来年の1月に、それが党大会で取り上げられるということなのですが、他の党員の方々がですね、松竹さんを支持するとお思いでしょうか?

 また、中央委員会はそれに対して、そういう声をちゃんと聞いてくれて、党員資格を回復する除名決定を撤回するという決定をする可能性はどれくらいあるのでしょうか? また、もしも、公選制の党首選挙が行われる場合、松竹さんが立候補されて、そして、党首に選ばれる可能性はどれくらいあるとお考えでしょうか?」

 松竹氏は、次のように答えた。

 「何と言っても、27万人の党員がおりまして、私は直接に自分の支部に所属している党員以外とこういうことを語り合うことが許されていないものですから、わからないことは多いです。

 けれども、少なくともSNSなどでの共産党員、あるいは地方議員を名乗る方の投稿を見れば、もちろん、私を批判する投稿もたくさんありますけども、同時に、私に理解を示してくれる投稿もそれなりにある。(中略)

 私を批判する声が、それなりに存在することは確かですけれども、同時に、それ以上に、今回、除名に踏み切った共産党にとって、こうやって本を出して、党に改革を求めたというだけで、除名されるような事件というのは、ここ何十年間なかったことなので、本当にこんなやり方でいいのか、というふうに思っている人のほうが、たくさんいるとは思います。(中略)

 党首公選が実現したとして、私が立候補して、志位さんに勝てるか、という話ですけれども、私は『勝つ・勝たない』ということよりも、党の安全保障政策のあり方みたいなものを、党首公選をすることを通じて、党員の中で、活発に議論を起こすことが一番大事なことだと考えていて…。

 私と志位さんって、そういう点で言うと、さきほど述べたように、そんなに大きな違いはないんですね。自衛隊とか日米安保はずっと否定してきた立場だけれども、しかし、野党共闘の中で、そこに修正を加えざるを得なくなった。

 その志位さんの苦渋というか、難しさを私も感じていて、そこに行こうとしている。でも、共産党員の多数は、日米安保も即時廃止で、自衛隊なんて絶対認められない人が多数で、だから、おそらく、そういう人たちの中から立候補者が出れば、そういう人が圧勝してしまうかもしれない。

 でも、政党として、それでいいのか、ということを、党首公選を実施することを通じて、議論をして、共産党員がそこから政党の党員としての自分の考え方を鍛え、発展させていくということを期待して、立候補を表明しているということです」

 記者会見の詳細についてはぜひ全編動画をご視聴ください。

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