宗教法人「幸福の科学」が、今月にも大学設置を再度申請する方針であることが報じられている。
- 萩生田文科相の後押しで「幸福の科学大学」ついに開学か(2019年10月5日、日刊ゲンダイ)
2014年10月、学校法人幸福の科学学園を設置者として申請された「幸福の科学大学」は、文部科学省より開設「不可」との判定を受けている。入学定員は260名、「人間幸福学部」「経営成功学部」「未来産業学部」の3学部からなり、千葉県長生郡長生村での設置が計画されていた。
- 幸福の科学大学を「不可」とする理由(2014年10月29日、文部科学省ホームページ PDF)
開設「不可」とした理由について文部科学省は、同大学の教育課程で履修する必修科目の「創立者の精神を学ぶ I」などや、「自由科目」として設定された「幸福の科学実践教学」などについて触れている。
文部科学省は、「これらの科目と創立者である大川隆法氏の著作が深く関連している」が、「これらの著作物では、大川隆法氏の基本的な思想を証明するためにいわゆる『霊言(霊言葉)』を科学的根拠として取り扱う旨の記述がなされている」と指摘。
その上で、「上記の『霊言(霊言葉)』については、科学的根拠を持って一般化・普遍化されているとはいえず、学問の要件を満たしているとは認められない」などとして、開設不可の理由を説明している。妥当な判断である。
この開設不可の判定に対して、幸福の科学は同年11月、当時の下村博文(はくぶん)文部科学大臣に対し「弁明請求書」を提出した。その文書の中で、「平成26年3月の申請前から、約2年にわたり続いていた事務相談において、教団の宗教行為である『霊言』が理由で大学ができない、というような話は、一度も出たことがない」などと、反発する姿勢をあらわにした。
注目すべきなのは、この「弁明請求書」の中に、先月9月に文部科学大臣に就任した自民党・衆議院議員の萩生田光一氏の名前が幾度も登場する点だ。萩生田議員が当時、「幸福の科学大学」開設のために仲介役として奔走していたとされる具体的な記述が複数個所にわたってされているのである。
「さらに、6月10日の面談において、今泉前室長は、自由民主党総裁特別補佐である萩生田光一衆議院議員の仲介による調整によって、『幸福の科学大学』の学長候補者を九鬼副理事長から別の人物に替えて、九鬼副理事長は『総長』として置くこととすれば、細かい問題はあっても工夫によって大学設置認可が可能であるとの趣旨の発言をしていた」(「弁明請求書」より)
前段の「弁明請求書」の記述が正しければ、同大学の開設をめぐって、萩生田議員が仲介・調整を行っていたことが、文部科学省の今泉柔剛大学設置室長(当時)の口から、幸福の科学側に説明されていたことになる。
萩生田議員による「仲介による調整」の具体的な内容は、次に続く「弁明請求書」の文章の中に記されている。
「それと同様の発言として、5月27日に行った大学関係者と萩生田議員との話し合いの中でも、『(学長を変えるというのは)九鬼さんの人格を否定しているわけでなく、正直言って、今後しばらく我慢したほうが得なんじゃないかと。これはもう、役所がそういうアドバイスしたってことになると大変なんだけど、今までの例を見ても、やっぱりそこは経験のある、正直言うと名前だけ借りてスタートして、それで一年間のうちに、九鬼さんが副学長とか、そういう経験を積んで、その間に一つ論文でも出しておけば、2年目からは堂々と学長やれるから、そこではもう、介入できないから。』と、萩生田議員からも学長を変えれば開設できるという旨のアドバイスがあった」(「弁明請求書」より)
つまり、九鬼一(くきはじめ)氏(幸福の科学学園副理事長/大学設置構想担当)の学長就任に難色を示す文科省との間で仲介に動いていた萩生田議員が、幸福の科学側の関係者と「話し合い」、「ひとまず開校時は別の人間を学長にしておき、1年後に九鬼氏と交代すればよい」とアドバイスをしていたというのである。
そして、幸福の科学側はその萩生田氏のアドバイス通りに、学長候補者を変更したと「弁明請求書」には記されている。
「そして、これを受けて小代哲也大学設置室長補佐に、具体的な書面作成方式につき詳細に相談をした上で、当学園は、萩生田議員と今泉前室長のアドバイスに則り、本来であれば九鬼学長で申請継続したかったにも関わらず、学長候補者をやむを得ず変更した」(「弁明請求書」より)。
注視すべきことは、この弁明請求書は「幸福の科学」のウェブサイトに掲載されていたが、9月に萩生田議員が文部科学大臣に就任すると、なぜか萩生田議員の名前が含まれた記述も含めて、前回の申請に関する文書が全て消されてしまったことである。
新たに大学設置の認可責任者となった萩生田文部科学大臣への「幸福の科学」側からの配慮なのか、それとも文部科学省から削除の要請があったのか、などと様々な詮索をされても致し方ない状況ではないだろうか。
他方、「幸福の科学」のウェブサイトから削除された弁明請求だが、インターネット上のアーカイブで今でも閲覧できるとして、SNS上で拡散されている。
- 幸福の科学2世信者の会 ツイート(9月30日)
【削除された幸福の科学利権】
文科大臣の萩生田光一のカルト利権
幸福の科学大学(HSU)の口利きをしていた事を教団が暴露していたが削除された
来年の再申請に向けて都合の悪い情報を消していっている
こんなカルト大学が認可されたり日本は終わり
皆さんに拡散してほしいです
http://web.archive.org/web/20190626090010/http://university.happy-science.jp/files/2014/11/x2sol2iw.pdf
萩生田議員は、安倍首相の「腹心の友」である加計孝太郎氏が理事長をつとめる学校法人・加計学園の獣医学部新設をめぐり、大きな役割を果たしてきたとされる人物である。文科省の内部文書でも、萩生田氏が文科省に対し「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」などと「総理案件」であることを伝えていたされている。
他方、文科大臣就任会見で記者からあらためて、この内部文章のことを問われると、「私の名前を使って省内の調整を図った人たちがいたのだろう、と当時の(文科)副大臣たちから報告を受けた」などと答えている。
IWJはこの大臣会見と、この発言を受けて開催された野党合同ヒアリングを取材・中継している。こちらも合わせてご視聴いただきたい。
幸福の科学の大学設置認可をめぐり、萩生田文科相がどのような動きをするのか、今後も引き続き注視が必要である。