2012年11月29日(木)18時半、大阪市東淀川区のクレオ大阪北において、「民主主義にヒーローは必要か?」と題するシンポジウムが開かれた。
(IWJテキストスタッフ・久保元)
2012年11月29日(木)18時半、大阪市東淀川区のクレオ大阪北において、「民主主義にヒーローは必要か?」と題するシンポジウムが開かれた。
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シンポジウムは、政治学者で東京大学教授の宇野重規氏による進行で行われた。宇野氏は、「大正デモクラシーは、たった15年で終わった。日本が同じ道をたどらなければいいと思う」と述べたほか、3年半にわたる民主党政権の数々の失政に対し、国民が非常に厳しい視線を注いでいることについて、「全否定の悪循環を断たなければならない」と述べた。
映画作家の想田和弘氏は、自身が原発問題や、橋下徹大阪市長に反対する立場などを、ツイッターで盛んに意見表明していることについて、「吠えている」と表現した。これについて、「映画制作という点では、マイナスイメージにみられる。しかし、危機感があった」と述べ、原発事故で「日本が終了する」と思ったことや、橋下市長による職員への思想調査にショックを受けたことを語った。また、反体制映画を撮った映画監督が投獄された事例のあるイランを引き合いに出し、「民主主義の世の中でないと映画ができない。ツイッターで吠えても投獄されないのは、貴重な状態。これを維持しなければならない」と述べた。
社会学者で一橋大学准教授の森千香子氏は、自身が取り組んでいる、ヨーロッパにおける郊外団地の研究について、高度成長期に団地が発展し、グローバル化の中で移民の増加や排除の問題が起きていることなどを語った。その上で、「民主主義には決定に関わるプロセスから排除されている人がいることが問題」と述べたほか、「民主主義における議論では、『どういう問いを立てるのか』が公正に論じられているかが大事。なぜならば、問いによって結果が変わるから」と解説した。
社会活動家の湯浅誠氏は、「強いリーダーシップや、反対意見を蹴散らして物事を進める人を求める風潮がある。白紙委任を求める人もいる」と述べ、憂慮の念を示した。また、その背景として「何をやっても無理。誰かがやってくれるだろう」という、社会における無力感の蔓延を挙げ、「ボールを投げても受け止めてもらえないという、社会に対する不信感がもたらしたものだ」と分析した。
哲学者で高崎経済大学准教授の國分功一郎氏は、我が国においても市民による主義主張の機運が高まっていることについて、「フランス人は主義主張をしっかりする。しかし、デモではゴミを撒き散らかす」と述べた。一方、首相官邸前で毎週金曜日に行われているデモについては、「時間をきっちりやり、暴力も振るわない、ゴミも出さない。素晴らしい」と語り、「老人(古くからの活動家)は怒るが、参加のハードルは下がっている」と評価した。また、「人間はものを考えない方向に行っている」と危機感を示し、「考えるときは自分自身が侵害されたとき。民主主義がなかったら、やりたいこともできない。ものを考えざるを得ないときに、守ってくれるのが民主主義だ」と述べ、市民の力で民主主義社会を守り抜く大切さを訴えた。