【特別寄稿】市民が直接提案して、みんなが投票で決める! イタリア2018年総選挙で世界初の「ダイレクトデモクラシー担当大臣」を生んだ五つ星運動に密着取材!(佐々木重人) 2018.6.21

記事公開日:2018.6.21 テキスト
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(取材・文:佐々木重人)

 イタリアのセルジオ・マッタレッラ大統領は2018年5月31日、フィレンツェ大学教授で法学者のジュゼッペ・コンテ氏を首相に指名した。6月5日には上院で、6日には下院でコンテ内閣の信任投票がおこなわれ、賛成多数で可決、「五つ星運動」と「同盟」の2党による連立政権が正式に発足することとなった。

▲ジュゼッペ・コンテ首相(ウィキペディアより)

 2018年3月におこなわれた総選挙で、上下両院で第一党となった五つ星運動は、イタリアのコメディアンであるベッペ・グリッロ氏と、企業家で政治運動家のジャンロベルト・カザレッジョ氏が、2009年に開始した市民運動である。党名の「五つ星」は、「持続可能性のある発展・水資源の重視・持続可能性のある交通システム・環境重視主義・インターネット社会」を意味し、この「五つ星」を社会が守り抜くべき概念として重んじている。

 欧米でも日本でも、五つ星運動を「ポピュリズム(大衆迎合主義)政党」と伝える報道が目立つ。

 しかし、五つ星運動は、国家レベルの法律を国民発議と国民投票で決める「ダイレクトデモクラシー(直接民主主義)」のイタリアへの導入を目指し、インターネットやSNSを活用しつつ、市民同士の直接の交流も通じて、草の根の運動として支持を広げていった。そんな五つ星運動を安易にポピュリズム政党と断じるのは早計だろう。

 コンテ新内閣には、世界初となる「ダイレクトデモクラシー担当大臣」が設けられ、五つ星運動を牽引してきたリカルド・フラカーロ下院議員がダイレクトデモクラシー担当大臣に就任した。

 フラカーロ議員は2017年11月に来日し、五つ星運動が目指すダイレクトデモクラシーの意味を語り、重要性を訴えた。その際、フラカーロ議員の来日講演などをコーディネートしたのが佐々木重人氏だ。

▲佐々木重人氏(IWJ撮影)

 その佐々木氏からIWJに寄稿いただいた。五つ星運動の担い手であるフラカーロ議員と親交がある佐々木氏は、ダイレクトデモクラシーを推進する人々のネットワーキングにも取り組んでいる。そんな佐々木氏による寄稿からは、大手メディアの報道とはまったく異なった五つ星運動の姿が浮かび上がると同時に、日本でもダイレクトデモクラシーについて、真剣な議論が必要なことが伝わる。ぜひ、以下の寄稿をご覧いただきたい。

 また、IWJ代表の岩上安身は、2017年11月22日に佐々木氏に、同年11月28日には五つ星運動所属のリカルド・フラカーロ氏にインタビューをおこなっている。ぜひ、記事とあわせてアーカイブのインタビューもご覧いただきたい。またIWJの独自インタビューについてはサポート会員登録をしていただければすべてご覧いただくことが可能である。また会員以外の方でも単品で購入が可能である。

記事目次

日本にもダイレクトデモクラシーを! 「グローバル・フォーラム・オン・モダン・ダイレクト・デモクラシー」に日本人が初めて参加!

 2018年6月、イタリアで世界初のダイレクトデモラクシー担当大臣になったリカルド・フラカーロ議員のプレゼンテーションを初めて聴いたのは、2016年秋にスペインのサンセバスティアンで開催された「グローバル・フォーラム・オン・モダン・ダイレクト・デモクラシー」だった。そこでは、ダイレクトデモクラシー(直接民主制)の導入を目指して活動する様々な人たちが世界中から集まってディスカッションをする。

▲グローバル・フォーラム会場となるローマ市庁舎(セナトリオ宮)(佐々木重人氏撮影)

 その前年、私はスイスのバーゼルにベーシックインカム・イニシアチブのエノ・シュミット氏を初めて訪ねて、話をうかがった。そこで市民が発議して国民投票をおこなうシステムを詳しく聴いて、スイスのダイレクトデモクラシーが実際にどのようなものであるのかを知って衝撃を受けた。

 知識として、スイスには直接民主制があって、頻繁に国民投票がおこなわれていることくらいは知っていても、それによって「国民主権」という言葉が決してお題目ではなく、実質的に機能していて、一般の人々がはっきりと主権者という意識をもって社会の最終的な意志決定を担っていることを知った。

 人口およそ800万人のスイスでは、有権者が10万人の署名を集めれば、人権に抵触すること以外のあらゆることに関して、法的拘束力のある国民投票がおこなわれる。政府は投票の結果に従う義務があるし、それによって憲法も頻繁に改定される。スイスの人たちにとって憲法とは、社会の変化を先取りしながら変え続けるライブ・ドキュメントなのである。

 シュミット氏と会って、私はベーシックインカムだけではなく、ダイレクトデモクラシーをまず日本に紹介、導入しなければいけないのだと理解した。そこで教えてもらったのがドイツのケルンにオフィスがあるNPO、デモクラシー・インターナショナルだった。そこを訪問して、彼らが事務局を務めるグローバル・フォーラムを知り、開催が間近に迫っていたのでとんぼ返りでヨーロッパに戻って、最初の日本人としてそのフォーラムに参加した。

「ポピュリズム政党」という報道とはまったく異なる五つ星運動の姿! フラカーロ議員の来日が実現!

 さて、イタリアの五つ星運動がメディアに乗るときは決まってポピュリズム(大衆迎合主義)政党と書かれる。

 それを始めたのはイタリアのコメディアン。そう聴くだけで、多くの人々は軽薄なイメージをもつだろう。あるいは現状に不満な人たちのエネルギーが充満した扇動的で危ない政党であるとか。

(…会員ページにつづく)

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