イタリアのセルジオ・マッタレッラ大統領は2018年5月31日、フィレンツェ大学教授で法学者のジュゼッペ・コンテ氏を首相に指名した。6月5日には上院で、6日には下院でコンテ内閣の信任投票がおこなわれ、賛成多数で可決、「五つ星運動」と「同盟」の2党による連立政権が正式に発足することとなった。
- イタリア、新内閣発足へ コンテ氏がポピュリスト連立政権首相に(BBC、2018年6月1日)
2018年3月におこなわれた総選挙で、上下両院で第一党となった五つ星運動は、イタリアのコメディアンであるベッペ・グリッロ氏と、企業家で政治運動家のジャンロベルト・カザレッジョ氏が、2009年に開始した市民運動である。党名の「五つ星」は、「持続可能性のある発展・水資源の重視・持続可能性のある交通システム・環境重視主義・インターネット社会」を意味し、この「五つ星」を社会が守り抜くべき概念として重んじている。
欧米でも日本でも、五つ星運動を「ポピュリズム(大衆迎合主義)政党」と伝える報道が目立つ。
しかし、五つ星運動は、国家レベルの法律を国民発議と国民投票で決める「ダイレクトデモクラシー(直接民主主義)」のイタリアへの導入を目指し、インターネットやSNSを活用しつつ、市民同士の直接の交流も通じて、草の根の運動として支持を広げていった。そんな五つ星運動を安易にポピュリズム政党と断じるのは早計だろう。
コンテ新内閣には、世界初となる「ダイレクトデモクラシー担当大臣」が設けられ、五つ星運動を牽引してきたリカルド・フラカーロ下院議員がダイレクトデモクラシー担当大臣に就任した。
フラカーロ議員は2017年11月に来日し、五つ星運動が目指すダイレクトデモクラシーの意味を語り、重要性を訴えた。その際、フラカーロ議員の来日講演などをコーディネートしたのが佐々木重人氏だ。
その佐々木氏からIWJに寄稿いただいた。五つ星運動の担い手であるフラカーロ議員と親交がある佐々木氏は、ダイレクトデモクラシーを推進する人々のネットワーキングにも取り組んでいる。そんな佐々木氏による寄稿からは、大手メディアの報道とはまったく異なった五つ星運動の姿が浮かび上がると同時に、日本でもダイレクトデモクラシーについて、真剣な議論が必要なことが伝わる。ぜひ、以下の寄稿をご覧いただきたい。
また、IWJ代表の岩上安身は、2017年11月22日に佐々木氏に、同年11月28日には五つ星運動所属のリカルド・フラカーロ氏にインタビューをおこなっている。ぜひ、記事とあわせてアーカイブのインタビューもご覧いただきたい。またIWJの独自インタビューについてはサポート会員登録をしていただければすべてご覧いただくことが可能である。また会員以外の方でも単品で購入が可能である。