【特別寄稿】マスコミが決して報じない「リニア」建設着工の裏側!「住民が理解したかどうかは事業者が判断する」!「東京ドーム50杯分」の残土処分地も未定!樫田秀樹氏寄稿(前編) 2017.2.2

記事公開日:2017.2.2取材地: テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(ジャーナリスト・樫田秀樹)

 名古屋や岐阜、長野など、各地で安全祈願・起工式が開かれ、いよいよ本格工事入りが大々的に報じられたJR東海のリニア中央新幹線計画。

 しかし、リニア建設に伴うトンネル工事から排出される残土は「東京ドーム50杯分」とも言われ、いまだにその処分地も決まっていない。「着工開始」といっても、そのほとんどは資材の調達や測量にとどまっているのが現状で、マスコミが報道する内容と現実のリニア工事の実態には大きな落差があるといえる。

 大手メディアは、JR東海という巨大スポンサーの機嫌を損ねないよう、決してこの問題を正面から論じようとしない。リニアは、間違いなく数々あるマスコミ界のタブーのうちのひとつである。

 今、建設着工の現場の最前線はどうなっているのか。

 『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』で第58回日本ジャーナリスト会議賞を受賞したジャーナリストの樫田秀樹氏が、リニア中央新幹線の最新事情を前後編にわたってレポートする。今回は、前編である。

(IWJ 編集部)

記事目次

「住民が理解したかどうかは事業者が判断する」〜起工式から排除された村民たち

 2016年11月1日、南アルプスの西端に位置する長野県大鹿村で、ついに南アルプスにトンネルを掘るための起工式が執り行われた。

 決して住民に歓迎された式典とは言えなかった。

 前日まで、いや当日の朝になっても、その場所がどこなのかすら、役場幹部などを除き、村民には伝えられなかった。村の有志が目星をつけていた数カ所を回り、会場になるであろう白い巨大テントを見つけたことから、会場を特定できたのだ。つまり、村民が起工式に招かれることはなかったのである。

 起工式に至る経緯は、あまりにも性急だった。

▲2016年11月1日。長野県大鹿村での起工式会場。住民にはその会場がどこかも伝えられていなかった。

▲2016年11月1日。長野県大鹿村での起工式会場。住民にはその会場がどこかも伝えられていなかった。

 2013年10月、JR東海が主催した住民説明会で、JR東海は大鹿村民に「地元の理解がなければ着工しない」と約束した。ところが昨年4月、住民は驚く。リニア工事で発生する建設残土を運ぶための道路改良等に関する住民説明会で、突如、「住民が理解したかどうかは事業者が判断する」と言葉を変えたのだ。

 村では、トンネル工事から排出される膨大な建設残土を運ぶダンプなどが一日最大1350台から1736台、狭い道を10年間にもわたって走り回ることになるため、粉塵、騒音、振動、排気ガス、交通事故や観光への影響に不安を抱く住民は多く、幾度もの住民説明会では納得できないという声が上がっていた。

 そして昨年10月14日、JR東海は、全村説明会で、やはり住民から疑問や懸念の声が挙がったのに、閉会後、記者団に「住民理解は得られた」と発言した。

 三日後の17日には、JR東海が、工事開始後の取り決めを明記した確認書を村に提示。主に、工事用車両の通行に関することで14条の項目が記載されている。驚くことに、「大気質」「騒音」「振動」の測定は一年にたった2回しか行わないという。

 そして、その確認書を住民が読む暇もない翌18日、村は確認書への修正案を返し、翌19日には、JR東海と確認書を締結してしまった。

 さらに二日後の21日、最後の手続きといえる村議会で着工認可の賛否が問われたが、4対3の僅差でリニア着工が可決された。

 ここで不可思議だったのは、この決議が行われる日の朝、信濃毎日新聞の朝刊に「11月1日が起工式」との日程が掲載されていたことだ。決議前になぜそんなスケジュールが報道されたのか。

リニアの本格着工はまだまだ先!トンネル工事から排出される「東京ドーム50杯分」の残土処分地も未定!

 その疑問はさておき、11月1日は、誰が呼びかけたわけでもないのに、村の内外から50人以上の市民が自主的に集まり、JR東海社員たちを載せた乗用車やバスに向かって「リニア反対」の横断幕を掲げた。起工式の会場近くにも住民は赴いたが、警備を務めるJR東海の若い社員たちに阻まれ、会場入りはできなかった。住民は不満の声を爆発させた。

▲起工式の会場入りをJR東海職員(青いジャケット)たちに阻まれても抗議を続ける住民。

▲起工式の会場入りをJR東海職員(青いジャケット)たちに阻まれても抗議を続ける住民。

 「おかしいではないですか! 住民の理解や合意がなければ着工しないと約束していたのに。私はまだ理解も合意もしていません」

 「話くらいしてくれたっていいじゃないですか。責任者、そこにいるんでしょ。出てきて私たちと話し合ってください!」

 だが、誰も出てこない。広報担当の社員は無言のまま事の成り行きを見つめているだけ。JR東海の大鹿村工事事務所の責任者は遠くから双眼鏡でこちらを見ている。

▲2016年11月1日、大鹿村での起工式に反対するために集まった住民たち。

▲2016年11月1日、大鹿村での起工式に反対するために集まった住民たち。

▲大鹿村でプラカードを持って抗議する住民たち

▲大鹿村でプラカードを持って抗議する住民たち

 一人の住民も会場に入れられることなく、起工式は終了した。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページより御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録

関連記事

「【特別寄稿】マスコミが決して報じない「リニア」建設着工の裏側!「住民が理解したかどうかは事業者が判断する」!「東京ドーム50杯分」の残土処分地も未定!樫田秀樹氏寄稿(前編)」への2件のフィードバック

  1. 青谷仲英 より:

    リニア新幹線いつできるかわからないドイツはやめた

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    大手メディアは、JR東海という巨大スポンサーの機嫌を損ねないよう、決してこの問題を正面から論じようとしない。リニアは、間違いなく数々あるマスコミ界のタブーのうちのひとつである。今、建設着工の現場の最前線はどうなっているのか。
    https://iwj.co.jp/wj/open/archives/360946 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1045809767787024386

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です