「実効支配の強化は懸念材料にしかならない」~石山永一郎氏講演「尖閣問題はオスプレイ配備の理由にならない ~領土問題の存在を認め、ASEANに学べ~」 2012.10.4

記事公開日:2012.10.4取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

 2012年10月4日(木)16時30分、東京都千代田区の衆議院第二議員会館において、「尖閣問題はオスプレイ配備の理由にならない ~領土問題の存在を認め、ASEANに学べ~」と題する講演会が行われた。講師は共同通信社編集委員の石山永一郎氏で、万国津梁(しんりょう)ネットワークが主催した。

■ハイライト

  • 講演 石山永一郎氏(共同通信編集委員)
  • 主催 万国津梁ネットワーク

オスプレイ配備への沖縄県民の反発について

 石山氏は、講演の冒頭、中国に対する沖縄県民の感情について言及し、「尖閣をめぐる日中の対立に関して、少なくとも沖縄本島の人からは、中国を脅威と捉える意見はほとんど聞かれない」と述べた。その理由として、「中国や東南アジアとの交易で生きてきた琉球王朝の時代からの沖縄の人々の皮膚感覚なのかもしれない」と分析した。

 その一方で、「むしろ、今の局面は、日中対立よりも『琉米対立』、すなわち沖縄対アメリカであるという印象を受ける」との所感を述べた。その要因として、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに対する沖縄県民の反感について言及し、「これまでの沖縄駐留米軍に関する抗議は、日本政府に向けられる性質のものだったが、今回のオスプレイ配備への抗議では普天間飛行場の3つのゲートを市民らが封鎖するという『平和的実力行使』に打って出た」とし、「これまで行われた抗議行動とは明らかに様相が異なる」と続けた。

 また、「沖縄県民は、駐留米軍問題を抱えつつも、アメリカ兵に対しては親切に対応してきた。しかし今回の普天間では『ヤンキー・ゴー・ホーム!』と叫ぶ人々もいた」と振り返った。

 沖縄県民がオスプレイ配備に猛反発する理由として、石山氏は、事故発生率の高さや騒音の大きさを挙げた。また、かつて沖縄で訓練を行った垂直離着陸機ハリアー攻撃機の墜落事故の事例も紹介し、問題が山積している中での配備強行が、沖縄県民の怒りを買っている要因であると分析した。

 

尖閣問題とオスプレイ配備との関連性について

 尖閣問題とオスプレイ配備との関連性についても言及した。この中で石山氏は、「尖閣への中国の抑止とオスプレイは結びつかない」と述べた。その理由として、「オスプレイのような輸送機が、尖閣諸島のような極小の島での戦術に適さない」とした。

 さらに日米安保にも言及し、「いわゆる『原子力村』に対して、『日米安保村』という言葉もあるが、日米安保村は『アメリカが基地の交渉を希望しているのだから、日本はそれを承認するのが日米の利益と信頼につながる』という『対米従属』の姿勢だ」と指摘した上で、「今、外交では猛々(たけだけ)しい議論が幅を利かせている。尖閣をめぐる一連の摩擦は『外交無罪』(外交のためには何をしても許される)という誤った考えがもたらしたものだ」と批判した。

 

尖閣問題の解決策について

 尖閣問題の解決策として、石山氏は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の事例を紹介した。南シナ海においては、南沙諸島の領有権をめぐって、中国・フィリピン・ベトナム・台湾など6カ国1地域が領有権を主張し、実際に武力衝突も起きているが、その問題を解決するため、ASEANと中国が「南シナ海行動宣言」に合意したことを説明した。

 その合意内容として、「平和的に解決する」「各国はこれ以上の実効支配の拡大を自粛する」という2点を挙げた上で、「日本政府は中国との間に領土問題が存在することを認めるべきだ。日本政府の今の対応は、日本が、ロシアから北方領土問題をめぐって、『両国に領土問題は存在しない』と言われているのと同じことではないか」と述べた。

 その上で、「日本が尖閣に構造物を作るなどの実効支配の強化は、懸念材料にしかならない。まずは首脳同士が話し合うべきだ」と持論を述べた。

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