県民に対する「土人」「シナ人」発言で、指導責任を沖縄になすりつける警察庁や大阪府警!?~20代の機動隊員2人は、沖縄に対する多重差別構造を可視化したにすぎない 2016.10.21

記事公開日:2016.10.21 テキスト動画
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(取材・文・ぎぎまき、記事構成・岩上安身)

特集 高江ヘリパッド

 ヘリパット建設工事に抗議する市民に対し、大阪府警察から派遣された20代の機動隊員2人が、「土人」「シナ人」と差別的暴言を吐いた問題は、沖縄県警や大阪府警だけにとどまらず、大阪府、警察庁、法務省などの責任が問われる問題に発展している。

 2016年10月18日午前9時47分頃、沖縄県東村高江地区にある、北部訓練場のヘリパッド建設現場の国道70号線近くで、工事への反対の声を上げ続けている、沖縄生まれ育ちの生っ粋のウチナンチューであり、芥川賞作家の目取真俊氏がフェンスに手をかけていたところ、フェンス越しにいた機動隊員と口論になった。

 その機動隊員は大阪府警から派遣された20代の若者で、目取真氏に対し「触るなくそ。どこつかんどるんじゃ、ボケ。この土人が!」と暴言を吐き捨てた。その様子は、目取真氏が撮影した動画がインターネット上に掲載されたことから、広く周知されることとなった。

(撮影者、目取真氏より掲載の許可を得ています)

 同じ日、大阪府警の別の機動隊員も、現場にいた市民に対し「黙れ、このシナ人!」とヘイト発言を吐いている。本来、国民の安全を守るべき警察官から、なぜ、このような侮蔑発言がとっさに出てくるのか、首を傾げざるを得ない。高江が「無法地帯化」していると警鐘を鳴らし続けている、沖縄在住の小口幸人弁護士は、機動隊員による侮辱表現は警察法2条2項の「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則」に反する違法な発言と指摘している。

 現場に配属されている機動隊員らの指導は一体、どうなっているのか。IWJは10月19日大阪府警に取材し、一連の問題についての見解を尋ねた。

  • タイトル 県民に対する「土人」「シナ人」発言で、指導責任を沖縄になすりつける警察庁や大阪府警!?~20代の機動隊員2人は、沖縄に対する多重差別構造を可視化したにすぎない

大阪府警の警備部調査官、「20代の若者は『土人』という意味を知らないと思う」と言い訳!?

▲7月22日、抵抗する男性を数人がかりで無理やり押さえつける機動隊員ら

▲7月22日、抵抗する男性を数人がかりで無理やり押さえつける機動隊員ら

 取材に応じたのは大阪府警・警備部の調査官。調査官は「平素から、公正、中立かつ、丁寧な対応を心掛けるように指導教養を行ってきたところですが、今回の発言は不適正な内容であった」と述べ、今後、指導の徹底を行っていくと述べた。しかし、調査官のこの説明は、内容をほとんど伴わない「ゼロ回答」に近いと言っていい。

 「公正、中立、かつ丁寧な対応」とは具体的に何なのか。今後、徹底していく指導には、「差別」に関する新たな教養項目が盛り込まれるのか。指導の具体的な中身が明らかにならない限り、大阪府警がこの問題をどれだけ深刻に受け止めているのかが全く見えてこない。具体的な指導について明らかにするよう、IWJは続けて大阪府警に問い合わせ中だ。

 大阪府警の調査官は次のように続けた。

 「『土人』は一般的に野蛮人という意味なんでしょうけど、風体を見て『土人』のようだから『土人』と言ったのか、差別用語的に言ったのか、調査中で詳細が入ってきてない。20代の若者は『土人』という意味を知らないと思うんですよ。言い訳になるかもしれないが」

 いや、言い訳にもならない。

 風体が「野蛮人」に見えるからと、相手を「土人」と呼ぶことは、間違いなく人を侮蔑する暴言であり、公務を執行中の警察官が市民に対して口にすることが許されるものではない。本人に差別意図があったかどうかは、調査したら真相が分かるというものではない。聴取を受けているというこの20代の機動隊員は、「差別意識はなかった」と答えるに決まっている。それで問題は解決するのか?もちろん、全く、何も解決しない。

 そもそも、差別の意図があったかどうか、問題にする方がおかしい。差別の行為はすでに厳然と明らかになっている。IWJ代表の岩上安身は、潜在的な差別意識の有無を問答すること自体の愚かしさについて、2016年10月20日の3時に、こうツイートしている。

 「潜在的な差別意識ではなく、顕在化している、目の前にある差別。何をこのとぼけた問答」(菅官房長官が潜在的な差別の意識はまったくなかったと報道陣の質問に答えたことを受けて)

 国民の安全を守るべき立場の警察官が、沖縄の一般市民を敵視し、見下し、差別的な姿勢で臨む態度が日常化しているからこそ、「土人」「シナ人」という、およそ一般人の日常では使われる言葉ではない暴言がとっさに口をついて出てくるのではないか。そうした差別暴言を日頃から許容する土壌が警察内部で培われていること自体が問題であり、「不適切な発言があった」という釈明や、中身の見えない「徹底した指導」はその場しのぎの弁明にしかならない。しかも、大阪府警はIWJの取材に対し、機動隊員の指揮監督の責任を沖縄県警になすりつけるようなコメントをしている。

沖縄県警に責任をなすりつけ!? 大阪府警・調査官担当者「部隊は大阪だが指揮下は沖縄県警です」

 「大阪府警は今回の件で、謝罪しないのか」

 調査官はIWJの問いに対し、「(他県からの派遣は)沖縄県の公安委員会の要請に基づいて決定します。(大阪府警の)部隊は大阪だが、沖縄の指揮下部隊です」と述べ、謝罪を避けた上、沖縄県警に責任転嫁した。

 10月6日、社民党の参議院議員・福島みずほ事務所に対し、警察庁も次のようなコメントを寄せているという。

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