<★お知らせ★>ハリウッド俳優、ジョージ・クルーニー氏が暴く南スーダン権力者の腐敗――動画『戦争で儲けさせてはならない!』にIWJが日本語字幕を挿入! 2016.10.1

記事公開日:2016.10.1 テキスト
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(青木浩文)

※本稿はIWJ会員に無料で発行している「日刊IWJガイド」2016.10.1日号から転載し、編集・加筆したものです。
※10月5日(火)、テキストを加筆しました!

 IWJで中継やテキスト関係のお手伝いをしながら報道現場の勉強をしています青木浩文です。

 「(今現在、生きている中で)最もセクシーな男」(Sexiest Man Alive)

 アメリカの娯楽雑誌『ピープル』が年に一度実施しているこの賞を、1997年と2006年に獲得。30代、40代と、人生で2度も(女性?)人気の頂点を享受した俳優とは?

 最近では、ネスプレッソのテレビCMで、「ホワット・エルス?」(What else?)という決め台詞で、再びファンを魅了しているジョージ・クルーニー氏です。

▲ジョージ・クルーニー氏(セントリー提供)

▲ジョージ・クルーニー氏(セントリー提供)

「俳優以外にやってみたい仕事は?」「ジャーナリスト!」

 彼は30代でテレビドラマ『ER緊急救命室』の医師役で知名度を上げ、その後、主役を演じた映画『オーシャンズ11』(2001年公開)は、全世界で興行収入4億5000万ドルを記録する大ヒットとなりました。

 そんな「超イケメン」かつ「ビッグ・スター」のクルーニー氏ですが、2012年に放送されたインタビュー番組『インサイド・アクターズ・スタジオ』にテレビ出演した際には、その華々しいキャリアからはちょっと想像しにくい、意外なコメントを残していました。

 「俳優以外にやってみたい仕事は?」と、番組のホストであるジェームズ・リプトン氏が質問を投げかけると、彼は迷わず「ジャーナリスト」と答えたのです。

 卒業はしていませんが、1979 年から1981年まで彼が通った北ケンタッキー大学での専攻は、「ジャーナリズム」だったそうです。このインタビューの中では、彼が「ジャーナリズム」を学んできたことをうかがわせる、こんな発言もありました。

アメリカの中東石油ビジネス政策の闇を描いた映画『シリアナ』――『国賊』(traitor) と呼ばれたクルーニー氏

 2005年に公開された映画『シリアナ』で、彼はアカデミー助演男優賞を受賞します。この映画は、CIA工作官であったロバート・ベアの告発本『CIAは何をしていた?』(See No Evil)を元に制作され、中東におけるアメリカの石油ビジネス政策の闇を描いていました。クルーニーは、CIA工作官を演じました。

 この映画が公開された当時のアメリカは、イラクへ軍事介入してから2年が経とうとしていた頃でした。映画は観客に、約15万人の兵士をイラク戦争に派遣しているアメリカ政府の政策に対して、疑念を抱かせる視点をもたらしました。

 他方、クルーニー氏は、『国家に対する裏切り者(A traitor to my country)』と批判されるようにもなりました。クルーニー氏は当時をふり返り、次のように訴えました。

 「あの映画は、もともと“政治的”ではありませんでした。しかし、あの時代が、映画を“政治的”にしてしまったのです。『国賊』(traitor)と題した表紙に、私の顔写真を使用した雑誌もありました。私は怒り狂いました。『政府の政策に対して疑問の念を持ち続けることは、市民の義務だ』というのが、私がアメリカで受けた教育です」

『異議は、愛国心のもっとも崇高な表現である』 米独立宣言起草者・トーマス・ジェファーソン――政府に異議申し立てをすると、すぐに貼られる『反日』のレッテル「冗談ではない! ネトウヨ君などよりも私の方がはるかに『愛国者』だ」岩上安身

 クルーニー氏が「アメリカで受けた教育」とはどのようなものなのでしょうか? その詳細を知る由はありませんが、米国の大学でジャーナリズムを専攻した彼が、米国の独立宣言起草者のトーマス・ジェファーソンについて学んだであろうことは、想像に難くありません。 
 
▲米国の独立宣言起草者・トーマス=ジェファーソン(ウィキメディア・コモンズより)

▲米国の独立宣言起草者・トーマス・ジェファーソン(ウィキメディア・コモンズより)

 
 IWJ代表の岩上安身は、2015年9月6日、早稲田大学で行われた、「早稲田大学から止める!戦争法案 安保関連法案に反対する 早稲田大学全学集会」でスピーチを行い、トーマス・ジェファーソンの言葉を紹介しながら、次のように説明しています。
 
 「トーマス・ジェファーソンという人が特別好きなわけではないんですけれども、民主主義の草稿、日本にも大きく影響を与えたものでもありますから、ちょっと調べてみたら良いこと言っているんですね。『人民の安全が守られるのは、「知識」がある場合だけである。報道の自由があり、誰もが読んで知ることができる場合にのみ、みなの安全が守られる』。これ、すごく重要なことを言っているんじゃないかなと」
 
 岩上さんはさらに続けて、「それからもう一つ、『言論の自由がある。われわれが有する他の自由を守るのである。異議は、愛国心のもっとも崇高な表現である』と。『愛国心』という言葉にちょっと抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんけれども、今、政府に対して異議申し立てをすると、『反日』というレッテルをすぐ貼られるわけです」と語っています。
 
▲早稲田大学でスピーチするIWJ代表・岩上安身(2015年9月6日)

▲早稲田大学でスピーチするIWJ代表・岩上安身(2015年9月6日)

 
 イラク派兵を行う米国政府に疑問を呈し、そのことによって『国家に対する裏切り者』と批判されたクルーニー氏の姿が、まさにここにも重なってゆきます。彼の顔写真を使い『国賊』と題した雑誌の表紙などは、「レッテル貼り」そのものと言えるでしょう。
 
 他方、不正なレッテル貼りをされた岩上さんは、それをどのように跳ね返してきたのでしょう。ジャーナリストの岩上安身が堅守する信念に基づく次の発言で、早稲田大学の講演会場は割れんばかりの笑いと喝采に包まれます。
 
 「私のツイッターのタイムラインは毎日、炎上しております(会場笑い)。一日に300から400のネトウヨが、毎日来るんです。それをお迎えしては、ブロックし、ときには諭し、ということを繰り返しているんです。そういう(反日という)簡単なレッテル貼りをされるんですけれども、冗談ではない。ネトウヨ君などよりも私の方がはるかに『愛国者』だ、と思っております(会場拍手)」
  そして、クルーニー氏も同様に、「国の政策に疑問を呈することは、国民の義務である」という彼の信念も、堅く揺らぐことはありませんでした。

クルーニー氏設立の調査団体「セントリー(The Sentry)」――南スーダンの大統領と副大統領らの不正な資金運用を告発

 ジョージ・クルーニー氏という人物をよりよく理解するためには、「世界で最もセクシーな男」というやや軟派なイメージに、「骨太のジャーナリスト志望」という軸を新たに加えることが必要なのかもしれません。

 そんな彼が「セントリー(The Sentry)」という調査団体を設立して、南スーダンの内紛について調査を実施しました。そして、2016年9月13日にワシントンD.C.にて記者会見を開き、交戦を続ける同国の大統領と副大統領らの不正な資金運用について告発したのです。

▲セントリー記者会見の模様(セントリー提供)

▲セントリー記者会見の模様(セントリー提供)

任務拡大された自衛隊が派遣される南スーダン情勢―報道しない日本のマスメディア、海外のニュースには「英語の壁」―「知らないまま」放置できない

 南スーダンと言えば、安倍政権が自衛隊の任務を拡大し、自衛隊による「駆けつけ警護」を行うべく、派遣の準備をしている国です。

 他方、日本で暮らす人々の多くは、南スーダンでの紛争がどのようなものであるのかは、残念ながら知らないままではないでしょうか。日本のマスメディアによる報道が圧倒的に不足していることに加え、海外メディアが報じるニュースにはどうしても「英語」と言う壁があることが理由のひとつだと言えるでしょう。しかしながら、自衛隊が派遣されようとしている今、「知らないまま」放置しておくことはできなくなってきました。

ジョージ・クルーニー本人がナレーション、動画『戦争で儲けさせてはならない』をIWJが日本語字幕入りで紹介したい!――プリーズ・ゴー・アヘッド!

 「セントリー」がその調査概要を4分ほどにまとめた動画『戦争で儲けさせてはならない』(原題:War Crimes Shouldn’t Pay)。ナレーションはもちろんジョージ・クルーニー。IWJは、「セントリー」に直接コンタクトし、この動画に日本語字幕を挿入する許可を得ました。

 IWJは、クルーニー氏の「セントリー」に関する記者会見後、コンタクトを開始。会見の中で使用されていた動画『戦争で儲けさせてはならない』を、日本で暮らす人々に、英語の壁を感じずに視聴して欲しい、つまり動画に日本語字幕を挿入したいとの思いから、9月25日(日)に「セントリー」の広報(在ワシントンDC)にメールでコンタクト。字幕挿入の許可を求めると、日曜日にも関わらず、先方からすぐに回答が到着しました。

“Yes, please go ahead.” (はい、ぜひどうぞ)

動画『戦争で儲けさせてはならない』(原題:War Crimes Shouldn’t Pay)より(セントリ提供)

▲動画『戦争で儲けさせてはならない』(War Crimes Shouldn’t Pay)より(セントリー提供)

閲覧注意『戦争で儲けさせてはならない』南スーダンの実情をジョージ・クルーニーのナレーション、そしてIWJ作成の日本語字幕で

 遠い、遠い、南スーダンで起こっていることが、やがて私たちにも関係の深い出来事になる可能性もあります。そんな国の実情を、ジョージ・クルーニーが解説しています。ぜひ一度ご覧いただき、南スーダンのことを知るきっかけとしていただければ幸いです。動画は下記のページでご覧いただけます。

 ところで、「セントリー」には、映画『ホテル・ルワンダ』で主役を演じた、俳優のドン・チードル氏も参画しています。チードル氏は、「私たちの目の黒いうちは(Not on Our Watch)」という非政府人道支援団体の創設者でもあります。

 非武装中立をうたっていたPKOの姿を、大きく変えるきっかけとなったルワンダ紛争(1990年~1993年)については、次の機会に!

▲映画『ホテル・ルワンダ』で主役を演じた、俳優のドン・チードル氏もセントリーに参画

▲映画『ホテル・ルワンダ』で主役を演じた、俳優のドン・チードル氏もセントリーに参画

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