DVD「ドキュメント築地市場移転」 サポート会員限定 DVD全編公開! 2012.12.11

記事公開日:2012.12.11取材地: テキスト動画独自
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特集 築地市場移転問題
※現在、DVDは売り切れのため販売しておりません。申し訳ございません。
※緊急、公共性に鑑み、ただいま全編特別公開中です。

 ジャーナリスト岩上安身が、マスメディアが絶対伝えない築地市場移転問題の真相を鋭く暴きだす! 豊洲に市場を移転すると何が起こるのか?

 なぜ都は反対の声にも関わらず移転を強行しようとするのか? 移転の背景に隠された意図とは?

 など、さまざまな疑問や問題を、関係者のインタビューから明らかにしています。

<会員向け動画 特別公開中>

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ドキュメント 築地市場移転
~ 震災で液状化し深刻な土壌汚染にまみれた豊洲へ移転!?本気(マジ)で? ~

岩上安身の直撃インタビュー!《CONTENTS & PROFILE》

Ⅰ.石原慎太郎 東京都知事・・・東京都知事選挙直前 記者会見(自由報道協会 主催)
Ⅱ.水谷和子 氏・・・一級建築士/築地市場移転問題裁判の原告メンバー
Ⅲ.小坂和輝 氏・・・医学博士/医療法人 小坂こども元気クリニック運営
Ⅳ.坂巻幸雄 氏・・・日本環境学会土壌汚染問題WG長/日本科学者会議災害問題研究委員会委員
Ⅴ.三國英實 氏・・・広島大学 名誉教授(農業経済学)/農業・農協問題研究所 理事長
Ⅵ.畑明郎 氏・・・日本環境学会 前会長/元大阪市立大学大学院教授
Ⅶ.中澤誠 氏・・・築地市場 仲卸/全労連 全国一般東京地方本部 東京中央市場労働組合 書記長
Ⅷ.野末誠 氏・・・築地市場 仲卸/NPO法人 市場を考える会 理事 /築地市場移転問題裁判の原告メンバー

※以下、敬称略

岩上 : 2011年3月11日の『東日本大震災』の復興はまだまだ遠く、主たる被災地である東北・北関東はもとより、東京でもその爪痕は深く深く刻まれております。ここは築地市場移転予定地・豊洲です。この広大な東京ガス跡地の至る所で、液状化が起こり、地中深くから水や砂が噴き上げられました。「豊洲は極めて軟弱な地盤で、地震が起きたら液状化を起こす」という多くの学者の警告は現実のものとなりました。「ヒ素やベンゼンなど、様々な汚染物質が地中深く染み込んでいるこのような場所に、都民の台所を預かる食料基地を移転させて良いものかどうか?」また、「移転の背後には、どのような事情が隠されているのか?」そうした問題を多角的に検証してみたいと思います。

Ⅰ.石原慎太郎 東京都知事・・・東京都知事選挙直前 記者会見
岩上 : 今回の震災において、築地市場移転予定地の豊洲が液状化を起こした・・・
石原 : それは当然でしょう。埋立地というのは、上物が建ってない限り、ある震度の地震が来たら液状化は必ず起こりますよ。今、豊洲は更地同然でガラ空きですから、液状化が起こったからといって移転先としてふさわしくないということは絶対にありません。
岩上 : この液状化の現象についての調査を、徹底したオープンな形で行うご用意は無いのか?また、非常に地盤が硬い築地での現在地再整備が妥当であるという声が高まっておりますが、耳を傾けるおつもりは無いのか?
石原 : 今の築地は、古過ぎるし、狭過ぎるし、危険だし、汚い!しかも、アスベストが沢山使われてましてね、震災が来て崩れたら偉いことになる。それから、豊洲にある汚染物質は完全に除去出来ますから、科学的に。それが済んだ後でキチッとした基礎を造ったら、液状化は起こりません。それだけは自信が有ります。
岩上 : あの、調査はされ・・・
石原 : 勿論、発信します。これだけの現象が起こったら、当然しないわけにいかない。
岩上 : オープンな形で・・・
石原 : 勿論、隠したってしょうがない。ちゃんと公開制でやりますから。

<ここから特別公開中>

Ⅱ.水谷和子 氏
岩上 : 「そもそも、液状化とは何ぞや?」というお話をしていただきたい。「砂や水が何で噴き上がっちゃうんだろ?」と、分からない人も結構いると思うんです。
水谷 : そうですね。砂があって水があって、それに力が加わると、砂が液体のように動き出す現象なんですよ。
岩上 : 豊洲の地盤というのは、実は地下水に浸されていて、意外にユルユルと・・・
水谷 : ユルユルというか、お汁粉みたいな。実際に市場移転予定地の見学会があって、ボーリングのサンプルを・・・これがその泥です。で、これは、創業時、昭和43年当時の東京ガス(市場移転予定地)の写真です。根元の方は元々砂浜で、先端に向かって海の方が沈んでいて埋立てた部分が深いんです。ここに砂の層がず~っと連続しているので、今回の地震のように揺すれば噴き上がってきます。地下水の水位はこの辺ですから。この不透水層がもう既に穴だらけということですね。
岩上 : 汚染物質が下から噴き上がるということは、この地層間に通路が沢山あると?
水谷 : そうそう、下の汚染が上に行き、上の汚染が下に行き・・・。なので、ここまで全部、汚染調査のやり直しをしないと全体の汚染は把握できない。同時に、都が目指す汚染除去工事も出来ない。つまり、都知事選挙直前 記者会見での岩上さんの質問によって、都知事は事業全体を見直さなければならないような約束とその責任を負ってしまった。
岩上 : 素晴らしい!是非、都知事、会見で仰った公約を実現していただきたい(笑)。それから、都知事は、「上物が建ってなければ液状化は起こる」と。上物建てたら液状化って起こらないんですか?
水谷 : いえいえ(笑)、逆に建物が浮き上がる。よくマンホールがボンと浮き上がってたりしますよね?
岩上 : はいはい、今回も起こってますよね。
水谷 : 要するに、「都の液状化対策がどれほど不確かなものか?」と。たとえば、「埋土の深い所は『砂杭工法』で砂で固めて・・・」と言うんですが、地下水位が低ければそれも良いんです。しかし、地下水は常にこの高い位置までありますから、固めてもいずれ緩んでくる。また、「阪神淡路大震災で実績のある新工法『格子状固化工法』(穴を掘って、そこの土と固化材を混ぜ柱状の物を造って格子状に埋め並べていく)で、土を動かないように出来る」と言うので、この技術を開発した所の担当者に直接聞いたら、「それ意味ないです。マス目の中から液状化します」と。こうした全てに関しては液状化する以前の話で、もう液状化したんだから、「都が示してきた事業計画は一から見直さないと、売買は成立しないんじゃないですか?」と。実は去年もう既に、都に対して、『(1,260億円の)予算の執行差し止め訴訟』を提訴しました。あとどの位膨らむかも、よく分からない予算ですから。

Ⅲ.小坂和輝 氏
小坂 : 以前は日本橋の魚河岸にあったんですが、関東大震災後、昭和10年に築地に移ってきてから今まで75年間、(築地市場は)都民の皆様の食卓を守ってきたわけです。
岩上 : 土壌汚染が問題視され始めたのは、いつ頃からですか?
小坂 : 石原都知事あたりから。「土壌汚染の疑いもあるけれども移転を・・・」という流れが生まれ、公約で「土壌を調べよう」となったので、『土壌汚染専門家会議』が作られた。最初は、「僅かな調査でことを済ませよう」と。そうしたら予想を上回るベンゼンの汚染が見つかった。
岩上 : ベンゼンとはどんな危険性があるのか?環境基準値をどのくらい上回ったのか?
小坂 : 43,000倍という高濃度。発癌性物質で特に血液系の癌を起こす。妊娠されていた場合、胎児が奇形を起こす危険性も。
岩上 : ベンゼン以外の化学物質も出てきたとか?
小坂 : シアンです。簡単に言うと、青酸カリ、青酸ガスの別名。
岩上 : 代表的な毒薬ですよね?「青酸カリ飲んで自殺する」なんてよく言いますけど。 小坂 : あまりにも危険過ぎて、微量でも検出されたら駄目なんです。それが、検出できる限界値の930倍。
岩上 : 検出されてはいけない物が、検出限界値の930倍?!つまり、人が死ぬ可能性があるくらい危険ということ?
小坂 : そうですね。パネルで見ますと・・・、市場移転予定地40ヘクタール全体の3分の1程度は汚染されているであろうということが、この調査だけでも見えてきます。
岩上 : (地層の中の調査について)たとえば独自で調べたことはあるんですか?
小坂 : それは夢のまた夢。都が採ってきた資料を「我々にも分析させてください」というレベルさえやらせてくれない。それを、「我々に土壌を掘って調査させてください」って言ったって・・・
岩上 : 許可が下りないんですね?都が行った分析結果を発表してるだけ?客観性があるかどうかさえ疑わしいわけですね。もう一つ隠された問題点を教えていただきたい。
小坂 : はい、流通ですね。仲卸潰し。仲卸さんのやられていることは、商品の価値をきちんと見抜く『目利き』という技術。安全性を確保した美味しい物を適正な価格で消費者に渡す機能を保ってくださっているんです。そのプロセスを壊してしまうようなこと。岩上 : 外資がこの民営化に入り込んで一儲け企んでるという話も?
小坂 : そうですね。「卸の株式をどれだけ外資が買っているか?」というところを見ていかなきゃいけない。このままでは、外資にとって都合の良い市場の整備が進むと・・・。

Ⅳ.坂巻幸雄 氏
坂巻 : 今、我々の家庭にきてるガスは、インドネシアなどで採って液体にしタンカーで運んできた天然ガスなんです。ですから、温度をかけ蒸発させ集めればいいだけで非常に簡単な工程。しかし、昭和30年から40年代ぐらいまでは、(豊洲の東京ガス工場も)石炭を蒸し焼きにしてガスを作ってたんです。その過程でいろんな副産物が出てくる。一番有名なのは真っ黒いコールタール。それに混じって、ベンゼン、シアン、ヒ素、鉛、六価クロム、いわば、ガス工場は有害物質の汚染のデパート。問題は、濃度としては非常に薄い微量の汚染物質が繰り返し長い期間かけて身体の中に取り込まれていく時に、どういうネガティブな影響が起こるか?ということ。私たち環境学会では、「こと食品や飲料水などに絡むような物については、確実に安全だという保障がない限り極力遠ざけなきゃいけない」という『予防原則』に則って環境問題を考える立場。それに対して、都の推進側の方々は、「危険が証明されてない物について、やかましく言う必要はない」「世の中に危険がゼロということは有り得ない」「皆さんは利益を受ける引き換えに、そういうリスクは許してるんだ」と。だから、「豊洲に市場を移転した後、たとえ汚染物質が多少残っていたにしろ、リスクが証明されてない以上、受け入れても大丈夫…然るべきではないか」「それが社会的な経済性に合うんだ」と言われるわけです。
岩上 : 一旦、豊洲で市場が始まると、常に汚染された魚を食べることになってしまって、リスク回避のしようがないですよね。
坂巻 : そうなんですね、豊洲に市場が移ってしまったら、好むと好まざるに拘らず、「壮大な『生体実験』が始まるんだ」と。
岩上 : こわいなぁ。ちょっと、これ何かの中間報告ですけれども、ここバーッと黒墨になってる。これ一体、何なんですか?
坂巻 : 都が委嘱してる『技術会議』が出した豊洲の汚染除去方法についての中間報告なんです。「これを飲んだら痩せますよ」という薬だって、使用前と使用後のスタイル写真ぐらい出すと。これは、使用後のスタイル写真はあるが、使用前のスタイル写真がない。beforeは全部、墨塗りになったわけです。じゃあ「効果分かんないじゃないか!」と。
岩上 : 『Nature』で、都の姿勢が、世界の笑い者になってるわけですね?
坂巻 : そういうことですね。日本のマスコミにも記者会見で公表したんですけど、どこも問題にしなかった。それから、土壌汚染と何の関係もない、ご専門がロボット工学の原島さんという方が、この『技術会議』の座長に就任されてから、首都大学東京の学長に抜擢されたんです。・・・まぁ私は、この問題に関する限り、「絶対的な安全はある」と思ってるんですよ。豊洲を下手にいじくるんじゃなくて、「豊洲に行かなきゃ良い」んです。今の築地で再開発すれば、それが絶対的な安全。技術的に一番簡単に出来る選択肢。

Ⅴ.三國英實 氏
三國 : 築地市場移転問題は、「豊洲に(国が主張してる『道州制』の拠点となる)新しい方針の卸売市場を造る」ということ。全国に7つ8つ拠点型の大規模中央卸売市場を整備して、その他は、地方卸売市場に転換、或いは民営化するとうのが、国の方針なんです。
岩上 : 政府方針として、流通の仕組みを大きく変えていこうとしてるわけですね。どうしようとしてるのか、教えていただけますか?
三國 : 『卸売市場法』の非常に大事な原則『差別的取扱禁止条項』というのがあるんです。どんな出荷者でも平等に扱うってこと。荷受会社は「これを売りたい」と頼まれたら「嫌だ」と言えない。『受託拒否の禁止』ってことです。売る場合も、誰にでも平等に売らなきゃいけない。
岩上 : 市場に入ってくる段階と、市場から出ていく段階と、の両方で差別をしない。
三國 : その原則が、委託集荷『競り』で活かされてきたんです。それが、「必ずしも、『競り』でなくても良い」と、1999年の法改正で変わり・・・大手量販店が進出してきてから、「朝10時の開店に間に合わない」と、夜中でも買えるような『先取』とか『予約相対』とか、そういう制度が入れられたんです。
岩上 : 「市場というのは、単なる物を取り引きする場所ではないのか?」と思ってる人も多いと思うんですが?
三國 : 要するに、量販店って、規格の揃った物を大量に欲しいわけですよ。たとえば、小振りの魚などはなかなか値が付かないとか、そういうことになる。
岩上 : 市場システムが壊されてしまう可能性がある。結果として、誰が不利益を被るんでしょうか?或いは逆に誰が利益を得るんですか?
三國 : 全国チェーンを展開している大手の外食産業やスーパーは、非常に扱いやすい市場になる。大手チェーンための集配センターみたいになっていく。規制緩和、構造改革で、国内産業が空洞化して、「一部の企業だけがグローバリゼーションの中で生き伸びていく構図になっちゃうんじゃないか?」と。そういう中に、『道州制』もあるし、『道州制』の拠点としての卸売市場整備があるんじゃないか?と見てるんです。やはり、民主主義的なルール、卸売市場の基本原則『差別的取扱禁止条項』っていうものがありますから、絶対にきちっと守るべきものは守らせなきゃならないと・・・
岩上 : 大資本に寡占支配される『差別的取扱』が行われる可能性があると?
三國 : そうそう。どこか1カ所に機能を全部集中してしまうんじゃなく、「産直とか、直売市とか・・・、いろんな多元的な流通システムの中で、卸売市場は卸売市場としての重要な機能を果たす」という位置づけで、「それぞれの卸売市場が、様々に置かれた条件、状況を活かして、個性的に発展していくということが重要じゃないか?」と思うんです。

Ⅵ.畑明郎 氏
畑 : 築地は、「地を築く」という意味で埋立地。しかし、江戸時代の埋立地は、山の土など良い土を入れてますから地盤がしっかりしている。最近の埋立地は殆ど、浚渫の泥など非常に悪い土を入れてます。戦後、豊洲の埋立が出来て東京ガスが工場を造った。これが特に汚染源となったコークス炉。たぶん、日本最大規模の汚染プロジェクトですね。
岩上 : 元の土地の持ち主が原状回復の責任を負う瑕疵担保責任。これを、都は買う際に免責したという契約になっているわけですね?
畑 : そうです。まだ杭が18,000本入ってる。全部抜かなきゃいけない。
岩上 : そのコストを全部、都民が負わなきゃいけない。税金ですよね。酷い話ですね。
畑 : それと、都が自分たちに都合の良い学者だけ集めまして・・・その『専門家会議』が提案した対策は、地下水を1.8mに押さえるためにポンプで汲み上げると。ただ、土の含まれた水分というのはパイプが詰まって簡単に抜けない。だから、側溝の斜面から水が常時湧き出て、その水をタンクに貯めて海に排出してる。非常にアルカリ性が高い、pH11ある。『排水基準違反』ですよ。触るとヌルヌルとして皮膚がむけるんです。
岩上 : 行政が堂々と違法行為やられたら、かないませんね。
畑 : よくあること(笑)。で、ここからは、OAP(大阪アメニティーパーク)再開発の例が参考になる。造幣局のコインの材料を作ってた精錬所の跡地。杭がバァ―ッと入って、4~50㎝のコンクリート遮水壁も入ってるんです。これだけやっても、地下に汚染が残ってますから、結果的に地下水は半永久的にきれいにならない。数十年経った・・・
岩上 : ず~っと汲み上げ続け…。でも、やっぱり再汚染されてしまう。
畑 : そうそう。地下駐車場の壁のコンクリートに地下水がにじみ出てくる。その中にヒ素と鉛が一緒に入ってます。乾くと壁に粉塵がつく、ヒ素入りの…
岩上 : ええっ?!・・・8,000平米ですよね。で、豊洲は…40ヘクタールくらい?
畑 : 40ヘクタール、この50倍。土壌汚染対策費用が2千数百億かかりますね。『ブラウンフィールド』、使い途のない塩漬け土地・・・。アメリカの場合、ナイアガラの近所の運河で、ラブという人が、滝の高低差あるから水力発電所造ろうと水路を掘った。ところが、その後その事業がうまくいかなくなり水路だけが残った。で、ある企業が水路に産廃した。いろんな有害物質が入ってたんです。その上を市が買い取って、学校や住宅造ってた。するとガスが出て、運動場で子供が倒れたり、流産とか病気も増えた。それを『ラブカナル事件』と言うんですけど。結局、全部移住させたんですよ。土地の汚染が浄化されずに、そのまま放置される場合が結構あってね。それが、『ブラウンフィールド』。
岩上 : 土壌対策の費用が用地費の25%を超えるようであれば、それはもう幾ら何でも使い途がないということで塩漬けに?都の計画では豊洲の用地買収費用よりも遥かに高くなる。

Ⅶ.中澤誠 氏
中澤 : 「これは生まれて初めて経験する震度5だなぁ」と思ったのに、事務所の本1冊落ちなかったのには驚いた。やっぱり地盤が良いんでしょうね。あまりにも豊洲の液状化が酷くて築地が大丈夫なもんで、都職員が一生懸命、市場内のヒビ割れを探し回ってた。ただ現実は全然ビクともしてない。だから再整備するにしても、「壊すの、ちょっと勿体無くなったなあ」と。私は現在地再整備になると思ってますけど。で、一般の人は実感として、「市場が何であるのか?」分からないと思うんです。はっきり言って、産地と商店街を守るためにあるんですよ。産地と商店街が良ければ築地も良い商売出来るということ。産地と商店街が悪い時は築地も落ち込むと。その両方をバランス取って守る役目が、築地に限らず中央卸売市場の役目だと思うんです。築地では7社ある卸が全国から荷を引いてくる。で、『競り』人が立って売る。で、買う側が、私なんかが働いてる仲卸。売る側も買う側も、手前らの利益しか考えてないんですよ。ところが、卸は『競り』人が高く値をつけてくれれば荷物も集まるし収益上がるわけで、何とか高く売ろうとする。で、仲卸は何とかして安く買うことが自分たちの利益になるわけです。卸は卸同士、仲卸は仲卸同士、お互いしのぎを削った競争をやる。それによって、知らず知らずに卸は産地の手取りを保証し、仲卸は消費者を守ってる。今、『競り』は全取引量の15%から20%の間ぐらいなんです。で、『相対』取引っていうのは、『競り』人を捕まえて「オイ、これ一山だから何ぼにせぇ」という買い方。これですと、沢山買う方が圧倒的有利になる。当然、小さな魚屋さんは不利。潰れてますよね。でも、沢山魚獲れて、「何とか大量に捌いてもらおう」って時に、量販に優れてるのはこれはこれで大事な制度なんで、どっちが正しいと一概に言えないんだけど、そのバランスが規制緩和によって崩れてしまった。商店街見ますと、大手チェーンで儲けが出ても地元に落ちないわけじゃないですか?それが本社に集まって、場合によっては株主配当されて何%かは海外へ渡る。これでは地域の経済は疲弊するばかり。石原知事とか猪瀬副知事が、「築地は施設が古いから売れなくなってんだ」とか言ってますけど、それは全然間違いです。商店街が悪くて、産地が悪くて、築地だけが良かったら、その方がおかしいですよ。で、市場外流通が非常に増えてると・・・産直が増えてるような錯覚を起こしますけど、実は輸入品なんです。農水省の資料を見てもらえば分かるんですけど、市場通らない輸入品が増えてるという話で。豊洲新市場の図面も、大きなスペースがその荷捌き場ということで、仲卸通らないで大手チェーンがそれを持っていくというシステムを考えてる。これが、本当に国民のためになるんだったら良いんですよ。でもね、商店街悪くなって、産地メチャメチャになって、これじゃ、「魚獲ったってやってらんないよ」「農作物作ってもやってらんないよ」と・・・
岩上 : 国内生産力を下げさせられ、外国の食料品を買わされて、それを大規模に流通させていくシステムを自前で用意させられている。こういう構図ですね。

Ⅷ.野末誠 氏
野末 : 液状化91箇所。このような大きな災害があった場合、都は、「皆さん、どうぞ移転予定地内へ入って見てください」というのが本来然るべき在り方。それがですね、閉め切っちゃって不法侵入とか・・・ね、とんでもないですよ。「目に見えない有害化学物質があると知りながら、そこで商売が出来るのか?」。きれいにするとかしないとか以前の問題で、こういう所に市場を置くこと自体、もう初っ端から間違ってますよ。たとえば、東京直下でなくても近隣で大地震があった場合、橋が落っこちたら、お客さんの逃げ場がありませんよ。生鮮食料品はどこへ行くんですか?それから、僕もイタリアに5年いたんですが、イタリア人でもフランス人でも、魚は生じゃ絶対に食べないです。それが、「築地から来る物は安全で安心だ。魚も生で食べて良いんだ」という一つの・・・
岩上 : ブランドになってるわけですね?信頼の・・・
野末 : そう、これが文化なんです。「寿司文化は築地が生んだ」と言っても過言ではないと思います。この築地という文化を、何でこんな危険な場所に?非常にマイナスですよ。
岩上 : 都側が示してきた土壌改良の技術は、表土をある程度取り除いて入れ替えると?
野末 : それも机上論。そんな簡単なもんじゃない。地盤面から2mって、40ヘクタール分で、80万トンあるんですよ。10トン車のダンプを1mmも離さず並べて、ここから新大阪の先まであるんですよ。で、有害物質ですから、それをきれいにするのは、どこで?その費用は?それから、入ってくる土も・・・
岩上 : 仮に、そこまで出来たとしましょう。だけど、下からこんな風に噴き上げてきてしまっては、全部再汚染され元の木阿弥。取り替えた意味が全くない。
野末 : 全くない。で、我々の生産者(三陸沿岸の漁業従事者)も、全部駄目になっちゃった。漁業者との繋がりを一番早く考えなくちゃいけない。586億という莫大な金額で土壌の有害物質を調べるんだったら、半分は三陸沿岸の漁業従事者へ援助して、船も作ってもらう、また漁に出てもらう。で、あとの半分は、この築地の5年、10年間のスパンで良いから補修をしながら使っていく。向こうは家も無いんです。貴重な都民の血税活かすなら、それが一番良いんじゃないかと?でも、都は、ハッキリ言って、「たかが魚屋じゃねーか」と舐めてかかってるんじゃないですか?
岩上 : 誤魔化しが効くと?
野末 : ええ。しかし、僕らが行動を起こして、築地市場移転反対運動4年間やらなかったら、もう今頃、豊洲に市場出来てましたよ。「どうするんですか?東京都民」。・・・最終的に学者さんの話では、「豊洲は永遠に管理する」と。管理するってことは、永遠に毒が残ってる、「豊洲は管理するような場所だ」と・・・
岩上 : あのチェルノブイリの爆心地のようなもので凄く危険で、ずっとそこが「危険ですよ」と言われ続ける所。そこで食の営みをするって、おかしいじゃありませんかね。

岩上 : 築地市場が、如何に長い歴史や伝統に支えられ、日本の食文化になくてはならない存在であるか、その重要性がよく分かったような気がします。市場移転が実現してしまうと、もしかしたら我々は多くの大切なものを失うことになるのかも知れません。石原さんは、都知事選4選目出馬直前の記者会見で私の質問に答え、「豊洲液状化の問題に関しては全部オープンフェアに調査を行う」と明言され約束されました。仰った通りに予断を持たない再調査を行ってもらいたい。この築地市場移転問題をはじめ、最近、マスメディアが取り上げない重大な社会問題や政治行政の問題は沢山あります。これからも、私たちは、あくまで行政権力やスポンサーなどの不当圧力に屈しない、市民に根ざし市民に支えられる独立した草の根メディアとして、そうした問題に光を当て続けていきたいと思います。皆さん、宜しくお願い致します。

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