【岩上安身のツイ録】リオ・オリンピック、男子柔道観戦記~還暦まであと3年、「柔道へのムズムズした感情」が湧き上がる! 2016.8.12

記事公開日:2016.8.12 テキスト
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※8月12日付けのツイートを並べて掲載しています。

 五輪の競技を見ているうちに、身体がムズムズしてきてついつい真似をしたくなるものとならないものとある。体操などは、子供の頃からずーーっと「スゲーッ」と思うだけで、鉄棒や吊り輪や跳馬やあん馬や床運動の真似をしようという気にならない。絶対的な観客。やろうと思ってもほんの真似事も不可能。

 陸上や水泳は、走ったり、泳いだりなので、真似だけなら可能ではあるのだけど、やはりムズムズまではしてこない。だいたいが陸上選手や水泳選手の体格の凄さ、幼少期から成長期にかけてすごく走ったり泳いだりしてあんな凄い体格になったのだろうなぁ、と大いなる彼我の差を感じておしまい。

 それなのに、なぜだか柔道はムズムズしてくる。いや、もちろん彼我の差は天と地どころではない差があるのだが、それでもムズムズしてくるのだ。やれるわけないのに、見ているとやれそうな気がしてくるのだ。困ったものだ。

 軽量級の高藤選手、海老沼選手の2人は完敗を喫しているので、気持ちを切り替えて銅メダルを取れただけでもう拍手喝采を送ろう。だが、永瀬選手と羽賀選手は、違うだろ、銅じゃないだろ、と今でもくすぶり続けている。この2人の実力はこんなもんじゃない。力の出し惜しみがあまりに惜しい。

 男子柔道は明日の100キロ超級を残すのみとなったが、永瀬、羽賀は本当に悔やまれる。大野選手とベイカー選手の金があるじゃないか、前回のロンドン五輪は金ゼロ。今大会はもう2個。凄いではないか、健闘した選手を讃えようよ、という声もあると思うが(自分の中にもある)、でも惜しい。

 永瀬、羽賀とも、十分に組みさえすれば、必ず大技で相手を投げられる力を持つ。特に羽賀選手の左組手からの内股は絶品。吉田秀彦、井上康生の再来か、とも思われた。何しろ高校時代、団体戦を争う金鷲旗大会で前人未到の20人抜きを達成した実力。ほとんと内股で一本勝ち。

 内村航平選手にどれほど感動しても、あんな風に鉄棒で大車輪して勢いつけて、くるくる回って着地をピタッと決めたいな、オレも!とは1ミリも思わないのだが(落ちて首の骨を折ったらどうする)、吉田や井上の内股、古賀の一本背負いを見たら、オレも投げたいと思うではないか。

 永瀬、羽賀両選手には、そんな風にシロウトに勘違いさせるようなダイナミックな技で、ブンブンと投げて一本取って、金を取ってもらいたかった。それが可能な逸材である。だからこそ、悔しい。柔道をしようとして、させてもらえなかったが、それ以前に彼らは勝負をしようとしていない。

 羽賀選手の出た100キロ級と同日に試合が行われた女子78キロ級。原稿書きとアイロンの合間にチラ見したが、決勝ですでにポイントリードして優勢勝ちは確定している状態から一本を取りに行ったケイラ・ハリソン選手の勝負根性。これは本当に凄い、本物の勝負師だと目が釘付けになった。

 これでハリソン選手は、ロンドン五輪に次いで2大会連続の金メダル。並の選手ではない。それだけではない。彼女は、過去に性的虐待とも戦い、乗り越えてきた。http://m.huffpost.com/jp/entry/1132852
全然、知らなかったが、凄みが違う。日本柔道、見習うべきはこの闘志、闘魂。

 話がずれたが、そういうわけで、柔道は見ていると、できもしないのにムズムズしてくる競技なのである。それだけ、感情移入しやすいというべきなのか。それは、自分だけのことなのか。

 打撃格闘技とか武道は経験があるのだが、組み技系格闘技とか武道の本格的な経験がない。大道塾の茶帯だったので、組み技経験がないというのはちょっと違うのかもしれないが、本格的にはない。そこがムズムズの原因かもしれない。ちょっとだけかすっている、という点。

 柔道をやってみたいなぁ、とどこかでずーっと思っていたのかもしれない。やりたいことを全部やるなんて、人生でできるわけがないので、大概のことは後まわしになり、そのまま棚上げになる。もしかしたら、その1つが柔道だったかも、とか気づき始める。

 きっかけは内田樹さんと鈴木邦男さん。このお二人が対談しているのを雑誌で見たのだが、対談の中身より、写真に目がいってしまった。道着に着替えて、邦男さんが内田樹さんに小手返しか何か、合気道の技をかけられているのだ。その姿がなんだかとても嬉しそうで、とても羨ましくなった。

 その後、インタビューで内田樹さんの道場兼書斎の凱風館を訪れて、その素晴らしさにさらに羨ましくなってしまった。ここで邦男さんは投げられたのかぁ、いいなぁ、と思いつつ、邦男さん、合気道をやっていたのに、かなりの年齢になってから柔道をやりだしたのはなぜかと気になり始めた。

 そこで鈴木邦男さんに電話してみると留守電。入れ違いに留守電。なかなかタイミングが合わなくて話せず、仕方ないから留守電に質問を入れたら、留守電に答えが返ってきた。50代初めに、やはり組み技格闘技といえば柔道だろうと講道館へ入門し、一から学び直して、70代の今、三段。

 それを聞いて、またまたいいなぁと思っていたところ、IWJキックボクシング部へ出稽古にくる早稲田の後輩で大道塾の後輩でもある野口正太郎君が、40代から講道館に入門して黒帯まで取ったと聞いて、またまたいいなぁと。自分で会社を立ち上げた起業家であり、社長でもある彼が、講道館へ稽古に行くと、小学生に混じって乱取りをして、小学生に投げられるのだそうだ。

 そこまで聞くと、心底、羨ましくなった。会社も作り、家庭ももち、子供もいて、いい歳のオヤジになってから、柔道を白帯で始めて小学生に投げられてしまう。素敵な話だなぁと。

 今月57歳になる。あと3年で還暦である。還暦過ぎてから何か新しいことを始めるのはできない、という気がする。いや、人によっては、できなくはないだろうが、僕の中には、ちょっと無理だろと、そんな思い込みが根強くあるのだ。だから、何か新しいことをするなら、この3年以内、と。

 とりあえず今日は、アイロンがけを学んだ。スタッフにやり方を教えてもらった。新しいことを学ぶのは楽しい。柔道へのムズムズした感情移入は、今日の夜の柔道最重量級を見終わるとしゅるしゅるとしぼむかもしれない。そこはわからない。誕生日まであと6日。それまでちと考えよう。

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