参議院選挙が中盤を迎えた2016年7月1日、日本外国特派員協会で民進党・岡田克也代表の記者会見が行われた。
同特派員協会では参議院選挙に合わせ、政党要件を満たす全ての党代表に招待状を送り会見を呼びかけているといい、今回、岡田代表がこれに応じた。
(城石裕幸)
※7月2日テキストを追加しました!
参議院選挙が中盤を迎えた2016年7月1日、日本外国特派員協会で民進党・岡田克也代表の記者会見が行われた。
同特派員協会では参議院選挙に合わせ、政党要件を満たす全ての党代表に招待状を送り会見を呼びかけているといい、今回、岡田代表がこれに応じた。
記事目次
■ハイライト
選挙の際にはテレビ各局で各党の党首討論が企画される。通常ならば、投票日一週間前くらいまで、有権者が投票の判断の参考にするために、こうした討論番組が放映されるものである。しかし、今回はすでに終わってしまっていて、選挙期間中の最後の2週間、テレビでもネットでも党首討論は行われる予定がない。岡田克也・民進党代表は、その点をまずついた。
「自民党から『最後の2週間はやらないように』との要請があったと言われている。それをテレビ局が受け入れたのかどうかはわからないが、結果としては、受け入れた形になっている」
岡田代表はそう明かした。この状況を、「『有権者に対する説明』という意味で異常なことだ」と痛烈に批判。「選挙戦が終盤になり、論点が煮詰まってきた段階での党首討論というものを、有権者は求めている」と訴えた。
さらに、岡田氏自らも安倍総理へ党首討論を申し入れたが、それも拒否されたため、それに代わるものとして「安倍総理への公開質問」を出したという。しかし、「これに対しても、答えは返ってこない」と岡田代表は憤る。
この日、その要旨が記者に配られた。
「選挙後に予定されている経済対策の規模・内容・財源が明らかにならないまま選挙が行われているのは、問題だ」と話す岡田代表は、「おそらく、投票日の直前に、何兆円という景気対策が突然打ち出されるのではないか。野党がそれに異論を述べる機会がないまま、投票日を迎えることになるのではないか」と、予想を語った。
続けて岡田代表は、「そもそも消費税増税延期を安倍総理が決定したのは6月1日、国会終了直後だった。本来なら国会開会中に決断し、従来の方針で述べてきた言葉との齟齬の説明を、国会で行うべきだったのではないか。こういった手法がまかり通っている」と述べ、「国民に対してきちんと説明しない政治」を強く非難した。
そして岡田代表は、今回の選挙の大きな争点として2つのことをあげた。
「一つ目は憲法の問題だ。安倍総理は1月、年頭の記者会見で、『参議院選挙で憲法の問題を議論したい』と発言している。また、別の場では、『改憲勢力で(憲法改正のできる)3分の2を目指す』とも主張している。総理が参議院選挙で3分の2の議席を得て、憲法改正をしたいという強い気持ちがあることは、疑いのないことだ」
そう断じた代表は、「だが、この選挙期間中、憲法改正の話を総理は語っていない。争点を隠して静かに参議院選挙を終えたいのだろう」と、ここでも与党側の姑息な戦い方を非難した。
「もう一つは経済・生活の問題だ。安倍総理は、『アベノミクスは成功している。さらにギアをアップしてアクセルを踏み込む』と言っている。確かに雇用の中身はともかく、働く人の数は増えた。それは円安株高で輸出関連企業の利益が大きく増えたためだ。しかし今年になって円高に向かい、株も乱高下している」そう話す岡田代表は、「政府は、円安だった時代に本来なすべきことをなさなかった。それは、生産性を高めるための構造改革であり、財政の健全化であり、社会保障制度の改革だ。こういった問題がほとんど先送りされたまま、この3年半を過ごしてしまった」と、政府の無策を批判し、「これは日本の将来にとって悔いを残すことになるだろう」と断言した。
その上で自党の政策を、「私たち(民進党)が主張しているのは、経済成長はもちろんだが、それと同時に一人ひとりが安心できる社会をどうやって作っていくか、ということだ。それを忘れてはならない」と主張した。
「20年前、2割だった非正規の働き方が今、4割を超えた。この中には30代・40代になっても給料が上がらないことがわかっているので、結婚を諦めている若者たちがたくさんいる。母子家庭・父子家庭などのひとり親家庭の二世帯に一世帯が貧困、子どもの6人に一人が貧困という、異常な事態にある」と訴えた岡田代表は、「人への投資、格差の是正、所得の再配分、そういった政策が成長戦略と対になって初めて、持続的な成長が可能になる」と、民進党が民主党時代から訴えている「人への投資」の重要性を改めて訴えた。
続く質疑応答では、シンガポールビジネスタイムス記者からGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金の株式市場での運用について、質問が出た。
「(安倍政権による運用比率の見直しで)株式の運用割合が倍になった。我々は『リスクの高い株式での運用割合を倍にすることは問題である』と、指摘し続けてきた。そして我々が心配した通りの状況に、今なりつつある。これは将来の年金の減額につながりかねない、深刻な問題だ」
続けて岡田代表は、「もう一つ問題なのが、株式市場におけるGPIFの存在の大きさだ。国家が株式市場に影響を及ぼしうる、という状況は自由な市場経済という観点からも望ましくない」と、批判した。
フランスのテレビ関係者からの「民進党の安全保障政策が自民党のものより安全であるというのはどのような根拠か」との質問には、「我々の基本的な考え方は、近くは現実的に、遠くは抑制的にというものだ。我が国の安全性に関わることは現実的に対応しなければならない。しかし、我が国の安全に関わらないような遠く離れた地域で行われた武力紛争に他国の軍と一緒に自衛隊が武力行使する、というようなことは控える、という考え方だ」と答えた。
そして「私が外務大臣だった時のことを考えると、日本に対する各国の敬意・尊敬というのは、日本という国が戦後70年、海外で武力行使してこなかったことに大きく起因している。この基本的な考え方は変えてはならない」と強く訴えた。
また、ロイター記者による「共産党との連携について、与党から危険でありモットーにかけるという批判されているが」という質問には、「かつて、自衛隊を認めていなかった社会党と連立を組んで、村山党首を首相に担いだ自民党には言われたくない」と、一蹴した上で、「共産党は議会の中で議席を得て活動している政党。非合法政党ではない。今までも議会の中で協力を積み重ねてきた。その上で今回、安倍政治の暴走を止めるために協力している」と、与党による批判が不当であることを示した。
その後、岡田代表は、「この選挙の期間、常に政府ナンバーワンである総理とナンバーツーである官房長官が官邸を空けている。今までの政権ではありえないことだ。
今回の英国のEU離脱も国民投票の日程は以前から決まっていた。また、最近では中国が日本の領海に情報船を入れてきたり、中国空軍と航空自衛隊の間に緊迫した事態があったという情報もある。北朝鮮のミサイルや、何か重要なことが起きた時、きちんと政治主導で問題に対応できるのか。非常に疑問だ」と、強い懸念を示した。