「私は八王子の地方選挙には何度も応援にやって来ましたけれども、こんななに賑やかで、こんなに華やかな応援の中でやる選挙は初めてです!」
2016年1月17日、任期満了に伴う八王子市の市長選挙が告示された。2期目を目指す現職で自民・公明党などが推薦する石森孝志(たかゆき)氏(58歳)と、元法政大学教授で共産、社民、八王子・生活者ネットワークなどの支援を受ける新人・五十嵐仁氏(64歳)の一騎打ちとなった。
▲街宣車の上から五十嵐仁候補への支持を訴えた応援演説会
同日10時に南大沢の駅前で第一声を上げた五十嵐候補。その後、13時から八王子北口東急スクエア前で応援演説会を開催した。
弁士には、日本共産党の小池晃参議院議員、民主党の有田芳生参議院議員、社民党副党首の福島みずほ参議院議員、維新の党の初鹿明博衆議院議員、元日弁連会長の宇都宮健児氏、慶応義塾大学名誉教授である小林節氏などが駆けつけた。五十嵐候補への支持に加え、今回の市長選挙は国政にも大きな影響を与える重要な選挙であると訴えた。
応援演説会には、主催者発表で千人の聴衆が集まった。小池議員は、街頭を埋め尽くした聴衆の熱気を前にして、驚きを示した。
他方、石森氏は9時45分八王子北口で出陣式を行い、八王子が地元選挙区である自民党の萩生田光一内閣副官房長官、丸川珠代環境相、片山さつき議員らが駆けつけた。15時には、多摩ニュータウンの商業施設が広がる南大沢駅前で街頭演説を行った。
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- タイトル 八王子市長選 五十嵐仁候補、石森孝志候補 街頭演説
- 日時 2016年1月17日(日)10:00~五十嵐仁候補(南大沢駅前)/12:00頃〜五十嵐仁候補(八王子駅北口)/15:00〜石森孝志候補
- 場所 南大沢駅前/八王子駅北口 東急スクエア前(東京都八王子市)
「日本の民主主義、立憲主義の危機」「もはや書斎にこもっている時ではない」「『書を捨てて町にいでよ』という天の声に従った」――五十嵐仁候補
▲選挙演説をする五十嵐仁候補
法政大学大原社会問題研究所で現代政治、社会問題、労働問題の研究をしてきたという五十嵐氏は、八王子市長に立候補した動機を語った。
「平和が危うくなってきている。戦争に巻き込まれるのではないか。そのような日本の民主主義、立憲主義の危機に際して、もはや書斎にこもっている時ではないと考えた。『書を捨てて町にいでよ』という天の声に従った」
現職の市長で対立候補でもある石森氏の市政との違いについて、五十嵐氏は次のように訴えた。
「安倍さんや萩生田さんのお仲間にはできないようなことをいたします。安保関連法の廃止を要求し、戦争ではなく平和を、市民の平和、安全、安心を守る市政を実現してまいります」
その上で五十嵐氏は、八王子の「戦争」の歴史を振り返る。
「この八王子には八王子空襲という悲しい歴史が残っております。1945年8月2日0時48分、米軍機が来襲し大きな爆撃が行われ、町は灰燼に帰してしまいました。445人の方が亡くなり2千人以上が負傷、被災、戦災を受けた家屋は1万4千世帯、7万人の人が焼け出されたと記録されております。このような、悲惨な歴史を繰り返してはなりません。
平和な社会の中で安心して生活できる、そのような市民生活を保障することこそ、市長としての第一の責務であると、私はそう思います」
「緑の山を切り崩して、赤字の山を築くような、愚かな市政を転換し、そのお金を人の命や暮らし、営業が守られる方向に使っていきたい」
▲五十嵐候補の応援演説会には主催者発表で千人が集まった
五十嵐氏はさらに、石森候補が推し進めようとしている大型開発行政を中止し、その予算を福祉や教育に振り向けると訴えた。
「せっかくここまで残ってきた緑、自然、環境を切り崩して、そして北西部に大型物流拠点、トラックターミナルを作る計画が進んできている。しかし、あの緑豊かな天合峰を切り崩していいのでしょうか。
もはや右肩上がりではない経済、財政、産業の状況の下で、物流拠点を作ってもどれだけの会社が進出してくるのか。借金が積み重なるばかりです。緑の山を切り崩して、赤字の山を築くような、愚かな市政を転換し、そのお金を本当に人の命や暮らし、営業が守られる方向に使ってまいりたい」
「今度の選挙は、独裁政治に対して市民が起こす革命」「西の宜野湾で勝利し、岩国で勝利し、そして、八王子で勝利し、安倍政権を打倒しようではありませんか!」――日本共産党・小池晃参議院議員
▲日本共産党副委員長である小池晃参議院議員
「安倍首相という人は憲法よりも自分の方が偉いと思っている」――。
共産党・小池議員は、八王子市長選について、「今度の選挙は、まさにこういう独裁政治に対して市民が起こす革命です。市民の力で政治を変える選挙じゃないでしょうか」と呼びかけた。
さらに、「特に八王子は、安倍首相の側近中の側近が国会議員やっているんですね。萩生田という人ですよ。そして、今の市長さんはその子分みたいな人だっていうじゃないですか。八王子で勝利することの意味は極めて大きいんです」とアピールした。
この日、米軍基地を抱える沖縄県宜野湾市、山口県岩国市でもそれぞれ市長選の告示日をむかえた。小池氏は、「宜野湾で勝利し、岩国で勝利し、そして、八王子で勝利し、安倍政権を打倒しようではありませんか」と聴衆に訴えた。
「八王子市長選、宜野湾市長選、岩国市長選、これは今年ある重要な政治決戦、参議院選挙の前哨戦」「八王子の皆さんに明日の日本がかかっている」――元日弁連会長・宇都宮健児氏
▲元日弁連会長の宇都宮健児氏
「『八王子市長選に出馬するのは、自分は天命だと感じた』。こう言える人はそうありません」――。
続いてマイクを握った宇都宮氏は、五十嵐氏の立候補を歓迎し、「法政大学の教授、政治学をやってこられた。ハーバード大学のライシャワー日本研究所の客員研究員をやられてきた。まさに政治のスペシャリスト。こういう人こそ八王子市長に打ってつけの人ではありませんか」と呼びかけた。
さらに、夏の参議院で与党を過半数割れに追い込み、安保法制廃止の展望を作り出す。これが大きな課題であるという宇都宮氏は、「そのためにも、八王子市長選、宜野湾市長選、岩国市長選で平和を守る、憲法を守る、そういう市長が誕生することが重要。八王子の皆さんに明日の日本がかかっているのです。そういう戦いなんです」と訴えた。
「安倍暴政にストップをかけるために、ショックを与えなければいけない」「宜野湾と八王子でショックを与えて、参議院選の野党共闘に持ち込む」――小林節氏
▲慶応義塾大学名誉教授である小林節氏
小林氏は、2012年に行われた前回の八王子市長選挙の投票率が34.95%という低さだったことに触れ、「自民党と公明党というのは組織政党ですから、どんな時も必ず投票する。そうすると3割のうちの16%の人がこの市を牛耳ってしまった。棄権した皆さん本当に情けない」と、投票に行かない八王子市の有権者を厳しく断じた。
その上で、「安倍暴政にストップをかけるために、宜野湾と八王子でショックを与えて、参議院選の野党共闘に持ち込むと。これが一番いいことだと思う」と市長選への投票を呼びかけた。
「友人として、専門家として責任を持って申し上げますけれど、天下一品の候補者です。誠に失礼な言い方をすると、市長なんかにしておくにはもったいないほどの方です。贅沢にお使いください」と話を結び、五十嵐候補に太鼓判を押した。
「今年は、日本が民主国家であり続けるか、それとも独裁政治にとって変わられるか、その重要な年になる」――維新の党・初鹿明博衆議院議員
維新の党の初鹿明博衆議院議員も、五十嵐候補の支持を訴えた。
「今の政治にノーを突き付ける、今年最初の選挙がこの八王子の市長選挙じゃないですか」
八王子選挙区選出の国会議員は自民党の萩生田光一内閣副官房長官、安倍首相の側近と言われている。「安倍首相の側近のお膝元」の選挙区で勝つことは、安倍政権にノーを突き付けることにつながると訴えた。
「まさに今年は、この日本という国が、民主国家であり続けるか、それとも独裁政治にとって変わられるか、その重要な年になる」
「間違っても、今の共産党が応援するそんな方に渡すわけには行かない」「市長の大きな役目がこのニュータウンの再生の仕事」――石森候補選対本部長・萩生田富司八王子市議会議員
石森候補が南大沢駅前で15時から行った街宣では、選対本部長である萩生田富司八王子市議会議員が司会を勤めた。
萩生田氏は、自民党、公明党、連合東京、市民・民主クラブ等など関係議員の推薦を得たことに感謝の意を示した。
その上で、石森市政によって「中核市」(※)という東京都では初めてのワンランク上の街づくりの礎を作ったことアピールした。また、「この中核市政の移行は、国会、都議会、市議会の理解の下に進めることができた」として、石森候補の国、都、そして市議会との繋がりを強調した。
(※)中核市とは
日本の大都市制度には、「政令指定都市」「中核市」「特例市」の区別があり、中核市は1996年(平成8年)から施行された。いずれも都市の規模に応じて、市に都道府県の事務権限の一部を移譲する制度であり、中核市には政令指定都市に準じた事務の範囲が移譲されている。
中核市制度が創設された当時、全国には約3千200の市町村が存在し、既に制度化されていた政令指定都市を除けば、人口千人にも満たない村から、八王子市のように50万人を超える規模の市まで、ほとんど同じ事務権限が認められていた。
しかし、市町村の規模に応じて、地域において果たすべき役割や抱える課題も異なるため、行政規模・能力が比較的大きな都市については、事務権限を強化し、住民の身近で行政を行うことができるようにして、規模・能力に見合った役割を果たしてもらうべきだとの考えにより、中核市制度が創設された。
八王子市は平成27年4月1日に中核市に指定、平成28年1月時点で、全国で45市が指定されているが、東京都では八王子市のみである。
(参考:wikipedia、八王子市ホームページ)
さらに、多摩ニュータウンが再生の時期に入ったとして、「国政の場では萩生田(光一)代議士ががんばっております。それと呼応して、首長としての、市長の大きな役目がやはりこのニュータウンの再生の仕事があります」「間違っても、今の共産党が応援するそんな方に渡すわけには行かない」と訴え、大型開発行政の中止を訴える五十嵐候補を厳しく批判した。
公明党の村松徹・八王子市議会議員は、「対抗馬の今回擁立された共産党さんなんかが中心になって立てられている方は、国政における政局の論争を市の中に持ち込んできて、そのために立候補したというような主張を強くしている」と、不快感を示した。
「『原発反対』とか『安保法制反対』だとか言っているだけの、6万5千人くらい、八王子には“あんぽんたん”が住んでいるんですよ」
自民党の近藤充・東京都議会議員は、「八王子の有権者数45万6千人。投票率が30%だとした時に、13万6千500人。それを真っ2つに割った時には、7万票を取って勝つか、6万5千票で負けるか、という選挙」と具体的な数字を示して説明した上で、危機感を持って票集めに専念するよう支援者に強く訴えかけた。
「向こう側の陣営は『原発反対』とか『安保法制反対』だとか言っているだけの、6万5千人くらい、八王子には“あんぽんたん”が住んでいるんですよ」
近藤議員は、原発反対派、安保法制反対派の有権者を『あんぽんたん』呼ばわりに、自分が推薦する石森候補が万が一敗れるようなことがあれば「街づくりは、完全にストップする」と脅しめいた言葉まで口にした。
さらに、「イトーヨーカドーの西側の東京都の都有地の有効利用」を進めるべく、石森市長、萩生田市議会議員、萩生田衆議院議員、そして、近藤都議会議員が考えていることにも触れ、支援者の関心を惹きつけた上で、「でも、向こうの連中が来たら、とんでもないことになります」と強調した。
「このニュータウンの再生」は「八王子一市が考えるのではない」、八王子市長選では「三多摩のリーダーを選ばなくてはならない」――萩生田光一内閣副官房長官
石森候補は、各地が直面する人口減少社会について触れた上で、八王子の様々な資源を磨き高めることで、市外移り住んでもらえるとして、開発市政の大切さを訴えた。
「(八王子の)広大な面積の中には、多くの都有地、国有地が残されております。これをいかに活用していくかによって、将来の八王子は大きく変わっていく。道路整備は他の自治体と比べても、かなり進捗しております」
▲応援演説をする自民党の萩生田光一内閣副官房長官と石森孝志候補
萩生田(光一)議員は、街宣の最後にマイクを握り、さらなる石森氏への支援を訴えた。