「早く自宅に戻れるように」――鬼怒川の堤防決壊から3ヶ月、被災者は常総市内のホテル・旅館で年越し――2月の作付けに向け「田畑クリープロジェクト」にボランティアの参加呼びかけ 2015.12.13

記事公開日:2016.3.2取材地: テキスト動画
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(IWJ・青木浩文)

※3月2日テキストを追加しました!

 「早く片付けてやりゃあいいのによ。そしたら気持ちの整理もつくもんさ。いろんな事情があるみたいだけど… これじゃ持ち主が目にするたんびに、思い出しちまう」――

 犬の散歩でよくこの場所に来ていたという地元の男性が、ひとりごとのようにこう語っていた。

▲9月10日、鬼怒川の決壊により流され大きく傾き、3ヶ月たった後もそのままの状態の家屋

 2015年9月9日から10日にかけて、台風18号の湿った空気が流れ込んだ影響で、栃木県と茨城県の県西地域などで記録的な大雨となり、10日には常総市三坂町の鬼怒川の堤防が決壊して、大規模な浸水被害に見舞われた。この災害により常総市では2名が死亡。住宅被害は、全壊が51件、大規模半壊が1452件、半壊3,520件、床上浸水100件、そして床下浸水が2,996件となった。(12月10日付、茨城県ホームページより)

 水害から3ヶ月あまりが経った12月13日、IWJ記者は「田畑クリーンクリーンプロジェクト」を中継取材のために常総市を訪れた。大きく傾いた住宅や、1階部分は水流で破壊され2階部分だけになってしまった家屋が、いたるところにそのままの状態で置かれていた。

記事目次

■ハイライト

  • タイトル 常総市 田畑クリーンサポーターズによるクリーンプロジェクト
  • 日時 2015年12月13日(日)8:30〜15:30
  • 場所 三坂町内(茨城県常総市)
  • 告知 常総市 田畑クリーンサポーターズ (Facebook)

1階部分が使えない住居が約5000戸――生活再建と住宅のリフォームが最大の課題

 高杉徹・常総市市長は、IWJのインタビューに答えて、同市が現在直面する課題について次のように語った。

 「避難所で生活している方が82名います(12月13日時点)。11月30日をもって、体育館や公民館などの第一避難所は閉鎖をして、今その方たちが、常総市内のホテルとか旅館で、第二避難所として個別にケアしています。でも、これも3ヶ月で終わりです。ですから早く自宅に戻れるように、住宅のリフォームなどが、これから順調に進んでいけるかどうかが課題です。

 水害の被害というのは、1階部分が使えなくなっているということ。それが今約5000戸ある。これだけの膨大な数を、これから数ヶ月で全部直せるかどうかが最大の課題。それができないと自宅に戻れない。

 あるいは戻ったとしても、十分な生活ができない状況ですから。つまり、生活再建と住宅の改修。これが後1、2ヶ月で全部できるかどうか」

 常総市にあるかません旅館、水海道スカイホテル、水海道第一ホテル、そして、ホテル野村屋の4箇所が第二避難所として使用されており、被災者の方はそこで新年を迎えることになるという。

来年2月の作付けに間に合わせるために、田畑の瓦礫を取り除く――さらなるボランティアの参加を呼びかけ

 高杉市長がふたつ目の課題として上げたのが、農業、工業、商業の復活だった。

 この日は、その一つである農業の復活のために、来年2月の作付けに間に合わせるべく、田畑に流れ込んだ瓦礫を取り除いてゆく「田畑クリーンクリーンプロジェクト」が三坂地区で行なわれた。同地区で開催するのはこの日が2回目とのこと。

 茨城県立下妻第一高等学校野球部、下妻第ニ高等学校野球部、水海道第二高等学校ボランティ部を始めとする周辺地域の人々や地元住民、フェースブックの告知を見て駆けつけたボランティアなど、約200名が参加した。

▲参加者約200名が三坂地区の田畑の瓦礫を手作業で撤去した

 参加者は各自ゴミ袋を持ち、等間隔に横一列に並び、いっせいに田畑に入って手作業で瓦礫の撤去を行った。水害により稲刈りが行えず、稲穂がそのまま枯れて残っている田畑も多かった。参加者は泥でぬかるんだ足を高く持ち上げ、陸上のハードル競技のように稲穂をまたいで前に進まねばならず、現役の高校生野球部員などにとっても体力の消耗するきつい作業となった。

 瓦礫の中には、マットレス、便器の蓋、おもちゃの人形、家族写真などの家財道具に加え、水流で地面から根こそぎむしり取られたような低木などが多数目についた。

 田畑の反対側では、「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」という紙が貼られた軽トラックが待機し、参加者は分別してそれぞれの軽トラックの荷台に瓦礫を積み込んでいた。

▲稲刈りが出来ず稲穂が枯れたまま残っている田畑もあった。参加者は泥でぬかるんだ足を高く上げ、稲穂をまたぎ前に進まなければならなかった

▲水流によって折られた枝や、地面から根こそぎ取られたような低木が数多くみられた。木の枝を片付けるIWJ中継市民の斯波すみれさん。ボランティアの参加を呼びかけた。

▲軽トラック40台も参加。田畑から撤去された瓦礫を集積所まで運んだ

 このクリーンプロジェクトに携わり、IWJの中継市民でもある斯波すみれさんは、さらなるボランティアの参加を呼びかけた。斯波さんは、常総市のとなりにある下妻市出身である。

 「このような200人、300人規模の作業を、今日までで多分6回くらい実施していると思うんですね。終わっているのは、それでやっと常総市の水没してしまった田畑の3割弱ぐらいだと思います。この程度の人数で全部終わらせるとすると、単純に計算してあと4000人くらいが必要になるんです」

 「2月中旬までにゴミを撤去して、土をならせておいて、やっと作付けできるので、それまでに終わらせようとすると、後何回も実施していかなくてはいけない」

(…サポート会員ページにつづく)

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