「次の選挙裁判の判決が違憲選挙を違憲と判断しなかった場合、これまでの選挙裁判と比べ、その破壊力は取り返しがつかないほどの決定打」――。
「全国弁護士グループ」による「1人1票裁判」が、11月25日(水)最高裁大法廷で開廷する。判決に向け、「全国弁護士グループ」の升永英俊弁護士は、切迫した口調で語った。
「1人1票裁判」は、全国全295小選挙区で各1人、合計295人が原告となり、これまでに何度も争われてきた。
今回、升永氏がこのように語るのは、「正統性のない」国会議員、すなわち、選挙区ごとの一票の価値に著しい不平等があるまま行われた違憲状態の選挙で選出された、「国会議員」とは呼べない者たちによって、まさに今、憲法改正発議がなされようとしているからだ。
自民党の憲法改正草案の恐ろしさについて、升永氏が特に強調するのは、98条・99条の「緊急事態宣言」だ。98条には、「内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発することができる」と定めている。さらに、緊急事態の宣言は、「事前または事後に国会の承認を得」れば、発することができてしまう。つまり、事実上、国会に事前承認をとる必要はない、事後で構わない、と認めているのだ。時の総理大臣の独断で、緊急事態宣言が発令できる、ということになる。
また、ひとたび内閣が「緊急事態宣言」を発すれば、「法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」。
すなわち、「緊急事態」のもと、内閣は国会での審議を経ることなく、勝手に法律を作ることができてしまうのだ。内閣は、行政権だけでなく、立法権をも握ってしまうのである。
この98条・99条の「緊急事態条項」の創設について、2015年11月10日、安倍総理は参院予算委員会で、「極めて重く、大切な課題だ」と、創設に強い意欲を見せた。
そのわずか3日後、11月13日に起きたのが、パリ同時多発テロ事件だった。オランド大統領がフランス全土に「非常事態宣言」を発令した。発令後、フランス全土の168カ所で、「捜査令状なし」の家宅捜索が行われた。さらに、国が「怪しい」とふんだ人々は、自宅軟禁状態に置かれている。「基本的人権」の精神的支柱たるフランスで、このような人権侵害が起きている事態は極めて深刻だ。
また、この非常事態宣言は、その後法改正を経て、3カ月の延長が決められた。宣言を出さなくともより強力な治安対策を行えるよう、憲法改正も俎上に載せられている。
日本では、来夏の参院選で、改憲勢力が3分の2議席以上を取れば、このフランスの「非常事態宣言」を上回る、独裁的な権力の行使可能な緊急事態条項が創設されてしまうかもしれない。
これまで、いかなる問題にも先んじて、「1人1票」を最重要視してきた升永氏が、今回ばかりは「1人1票どころじゃない!」と危機感を募らせる。
升永氏が「恐怖」をあらわに語るのに対し、世間の認識は、事の重大さに追いつかない。升永氏は、「ヒトラー率いるナチスは33%しか議席を持たなかったのに、ヒトラーは独裁者になることができた。自公政権が70%以上の議席を持つ中、安倍は、ヒトラー以上に容易に独裁者になれる」と警鐘を鳴らす。
IWJでは、25日の判決の様子を取材する。また、25日に先立つ11月24日21時よりチャンネル1にて、2012年12月21日にIWJ代表でジャーナリストの岩上安身が行った、升永氏へのインタビューを再配信する。
▲升永氏が、2015年の10月中旬以降、新聞各紙に出した意見広告
「恐怖心と無力感と諦観」がナチスを生んだ――参院選まであと7カ月! 緊急事態条項の恐ろしさを拡散して!
以下、升永氏の希望によって、同氏のFacebookページにも掲載されたコメントを掲載する。1人でも多くの方々に読んでもらい、拡散していただき、危機感を共有したいと升永氏は願っている。
危機感を共有したい。
2013年7月、麻生財務大臣は都内の講演会で、「…ナチス憲法…」、「あの手口を学んだらどうかね。」と発言した。麻生氏は、今も、財務大臣の地位にとどまっている。
2016年7月の参院選で、自民・公明が77議席をとれば、一気に、緊急事態条項付新憲法の改正となるでしょう。テレビ、新聞が、緊急事態条項付新憲法に反対との報道をするとは思えない。したがって、国民投票でも、過半数は、緊急事態条項付新憲法に賛成でしょう。
緊急事態宣言条項付新憲法反対の世論が生まれず、何事もなかったかのように、2016年7月参院選で、自民公明が77議席以上取れば、現在のような【言論の自由】は、なくなると腹をくくらざるを得ない。
緊急事態条項付新憲法阻止の声を上げようにも、残されている期間は、2016年7月までの僅か8ヶ月しかない。
拡散希望の4文字を付したシェア、希望です。更に、コメントを追加していただくことを、期待します。拡散力が違うので。
世論を創ることが目的です。
市民・升永
緊急事態宣言のドイツの実例:
1. 1932/11/6の選挙で、ナチスの得票率は、33.1%であった。残余・66.9%の選挙人は、反ナチスの政党(複数)に投票した。
2. 1933/2/28に、ドイツでは、ナチスのヒットラー首相は、大統領を介して、「緊急事態宣言」を出した。「緊急事態宣言」発令日(1933/2/28)から数日以内に、約5000人の共産党支持者等が、司法手続きなしで、逮捕・予防拘禁され、行方不明となった。
3. 「緊急事態宣言」下であった、1933/11/12の総選挙(投票率・95%)では、ナチスの得票率は、92%。
【1932/11/6の選挙で、ナチスに反対する政党に投票した、全選挙人の66.9%の、ほぼ全員】が、ナチスを支持したのである。
4. すなわち、1932/11/6の選挙で、ナチスに反対する各政党に投票した、全投票人の66.9%の人々は、ほぼ全員、司法手続きなしの、逮捕・予防拘禁(その後の行方不明)を知って、
恐怖心と
無力感と
諦観から、
ナチスを支持したのであろう。
1933年のドイツ人(1932/11/6の選挙の全投票者の66.9%の人々)は、緊急事態宣言下の司法手続きなしの逮捕・予防拘禁・行方不明を知って、心が折れたのである。
5. 麻生財務大臣は、2013年7月、都内の公開の講演会で、「…ナチス憲法…」「あの手口を学んだらどうかね」と発言した。
6. 仮に、日本で、「緊急事態宣言」条項付新憲法が成立し、1933年のドイツ並みの「緊急事態宣言」が出て、言論の自由、通信の秘密等の人権が、停止されたと仮定しよう。
その「緊急事態宣言」下、今の反政府の日本人(わたし〈升永英俊弁護士〉も含む)は、1933年のドイツ人(1932/11/6の選挙で、反ナチスに投票した、全投票者の66.9%の人々)とは違って、心折れることなく、「政府の国家権力行使に反対」の声をあげられるだろうか?
それは、不可能である。
その理由は、政府反対の声をあげようとしても、「緊急事態宣言」下では、他人に、政府反対の情報を伝える為に必要な、
通信の秘密(電話、SNS,インターネット等)、
報道の自由、
出版の自由
が、停止されてしまうからである。
市民・升永
「緊急事態宣言」で独裁国家を作った「ナチスの手口」に学ぶ、改憲勢力
1. 今、【日本の言論の自由は、このままでは、2016年7月参院選で終わりという、危機感】を1人でも多くの市民と共有したい。
わたしは、この危機感を200人のガンガン拡散する市民と共有したい。そして、この危機感をガンガン拡散したい。2016年7月参院選で、世論ができなければ、言論の自由は、死ぬ。
今でさえ、FBで、グルメや写真には、コメント、「いいね」がつくが、国家権力に反対する政治の話には、コメントが少ない。自らの政府に反対の政治的意見を他者に知られるのは、控えたいということであろう。恐怖心からである。
マハトマ・ガンジー曰く、「インド独立運動の敵(ENEMY)は、憎しみ(HATE)ではなく、恐怖心(FEAR)である」。
ナチスは、ナチス反対派(共産党支持者、社会民主党支持者ら)の大量逮捕・監禁(緊急命令発令日の1933年2月28日から、数日以内だけでも、約5000人という規模)により、ドイツ市民に生じた恐怖心を利用して、ドイツに、わずか20日間で、独裁国家を作った。
2016年7月参院選で、自民・公明が77議席取り、緊急事態条項付新憲法になり、その後、ナチスばりの緊急事態宣言が出れば、言論の自由は、終わりとなる可能性がある。
2. 【麻生財務大臣の発言(2013年7月・都内講演会)】
「ワイマール憲法がいつのまに変わっていてて、ナチス憲法の変わっていたんですよ。だれも気が付かないで、変わったんた。あの手口、学んだらどうかね。」
恐ろしい!
市民・升永
緊急事態条項の創設阻止は、7ヶ月後に迫る参院選で、いかに改憲勢力の議席獲得を阻むことができるかにかかっている。
大阪維新の会や民主党右派議員ら、野党が今後どのような動きを見せるか。11月23日の大阪ダブル選挙では、府知事選・市長選ともに、橋下徹氏の率いる「大阪維新の会」が圧勝した。
11月16日には、民主党議員らによって「EMPOWER JAPAN! これが我らの野党再編・政権奪還戦略だ!」と題して、細野豪志議員、長島昭久議員ら民主党右派の議員によるセミナーが開かれた。そこにはなんと、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」共同代表の櫻井よしこ氏が駆けつけたという。「美しい日本の憲法を守る会」は、2014年10月に結成され、2015年11月10日には、「今こそ憲法改正を! 1万人大会」と称する集会を主催した。櫻井氏がゲストとして駆けつけ、それを喜々として迎える長島議員や細野議員らは、もはや与党の改憲勢力となんら変わるところはない。
現実を直視しなければならないところまで、我々は来ているのだ。