【IWJブログ】「立場をわきまえろ」だと!? 安倍政権による陰湿な「沖縄イジメ」の実態!際立つ翁長氏への冷遇と税金を使った「経済制裁」が始まる !? 2015.1.13

記事公開日:2015.1.13 テキスト
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(取材・文:原佑介 記事構成:岩上安身)

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 安倍政権による、沖縄への報復が始まった。

 名護市長選、沖縄県知事選、衆院選。沖縄県民は、繰り返し辺野古新基地建設に「NO!」の声を突きつけてきた。それは同時に、対米追従を深め、「戦争する国」への道をひた走ろうとする安倍政権に「NO!」を突きつけたも同然だった。

 不愉快だったのだろう。政権を上げて力を注ぎ、金を積んでも懐柔できない沖縄に対し、安倍政権は逆襲にうって出た。それは陰湿で、まるで子どもの「イジメ」のような報復である。

 しかし、政府という巨大な権力を使った「イジメ」であるからタチが悪い。そんな「イジメ」の実態は、翁長雄志・新沖縄県知事を通して浮き彫りになった。

「年内に会う予定はない」 政府の露骨な「シカト」

 「辺野古新基地建設を許さない」という圧倒的な沖縄県民の民意を背負い、新県知事に選出された翁長氏は、12月10日、正式に県知事に就任した。

 翁長氏はまず、12月24日に就任あいさつのため上京し、25日、永田町を回った。辺野古新基地建設に反対する考えを直接伝えることが狙いだった。しかし、翁長氏の思いは裏切られる。

 翁長氏は、安倍総理を筆頭に、沖縄基地負担軽減担当大臣を兼任する菅義偉官房長官、山口俊一沖縄担当大臣、他にも外務大臣や防衛大臣などの関係閣僚との会談を希望していたが、日程調整が難航しているなどという理由で袖にされ、結局、25日は誰とも面会できなかった。

 菅官房長官は、25日の定例会見で「私に会いたいということ(要請)は全くない」と会談の要請自体を否定。菅官房長官のこの発言によって、ネットなどの一部では、翁長知事が突如、「アポなし」で上京した「非常識な人物」であるかのような中傷が繰り返された。

 しかし、事実はまったく違う。

 翁長知事側は12月17日頃から上京の日程を調整し、官邸側にも面会の要請をしてきた。現に、19日の段階で、山口沖縄担当相は、翁長知事との面会に前向きな姿勢を示し、「面会の申し込みはあった」と会見で明かしている。一方で、同日、同じく記者会見した菅官房長官は、このときから「(翁長氏から)まだ話は来てない」と述べていた。

翁長氏は「アポ」を取ったのか取らなかったのか

 結局、アポはあったのか、なかったのか。カラクリはこうだ。

 沖縄タイムスによると、「面会を調整した内閣府と沖縄県の事務方との間で、面会目的の照会時期などで認識の違い」があり、「内閣府が25日午後になって初めて官邸へ面会を申し入れた」というのだ。

 内閣府が「要請」をとどめおき、ぎりぎりまで官邸に伝えなかった、というわけである。疑えばきりがないが、これが内閣府の作為によるものかはわからない。

 だが、仮に内閣府側が「認識違い」をしていたとしても、翁長知事の上京は各メディアがさんざん報じており、菅官房長官らも当然、知るところだったはずだ。現に会見で質問も出ている。翁長知事は、内閣府や菅官房長官を非難こそしなかったが、釘を刺すように「お会いして意見交換したい。その声は報道を通じても届いているのではないか」とコメントした。

 菅官房長官の用いた、「面会の要請がない」という主張は、あくまで翁長氏との面会を避けるための方便である可能性は否定できない。2015年1月10日付の毎日新聞の記事によると、菅官房長官は次のように話したという。

 「菅義偉官房長官は9日のBSフジ番組で、(中略)現在実現していない翁長氏との面会については『政治判断』を条件に挙げ、翁長氏が方針転換しなければ困難との認識を示した」

 つまり日程調整以前の問題として、「翁長知事が辺野古新基地建設に非協力的である以上、会うつもりがない」と明言しているのだ。「会いたいなら辺野古の新基地建設に賛成しろ」というわけである。これが圧力でなく、なんだろうか? 日程調整以前の問題として、菅官房長官が頭ごなしにこのような姿勢を取るのでは、アポなど取りようがないではないか。

 結局、翁長知事が上京中に面会できた閣僚は、26日午後に会った山口俊一沖縄・北方担当大臣だけだった。その山口大臣との面会も短時間に限定され、話は沖縄振興予算に関する意見交換以上には発展せず。他省庁に至っては、防衛省が西正典事務次官、外務省は冨田浩司・北米局長が面会にあたり、大臣は顔を出さず、翁長知事に対する冷遇は、誰の目からみても明らかとなった。

約束した予算をあっさり見直し!? 金で票を買う安倍政権

 沖縄に対する、あからさまな「イジメ」は、年明け早々から続いた。その様相は、輪をかけて酷くなっていった。

 政府が冷遇しているのは、翁長知事個人に対してではない。辺野古の米軍基地建設に反対する翁長知事を選出した、沖縄県全体に対して、冷ややかなのである。

 政府は1月8日、次年度の沖縄振興予算を話し合う自民党沖縄振興調査会(以下、調査会)で、2015年度の沖縄振興予算を、今年度の3501億円から1割ほど減額する方針を示した。

 政府は2013年12月、仲井真前知事が公約を反故にし、辺野古新基地建設を認めたことと引き換えに、沖縄振興策を前年度から500億円増額することを決定した。「アメとムチ」の典型で、3501億円もの14年度予算を計上した。これを受けた仲井真前知事は当時、「有史以来の予算だ」と喜び、「いい正月になる」と語った。

 安倍政権はさらに、沖縄県知事選直前の14年8月、15年度概算要求で約300億円上積みし、3794億円へと増額する方針を提示。辺野古推進のため、金に金を積んだ。県知事選の最中、沖縄入りした菅官房長官は、沖縄に「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を政府として誘致する考えまで提案した。遊園地とセットにするから、基地を受け入れろというわけである。まるで、バリューセットではないか。人を小馬鹿にしたような話である。

 だが、沖縄県民の心は金では買えず、遊園地でも釣れず、仲井真知事は翁長氏に10万票もの大差をつけられ、落選。安倍政権は「NO!」を突きつけられた。

 翁長県政が誕生すると安倍政権はあっさりと方針転換し、チラつかせた大金を懐に戻した。いやらしい手口である。

 1月8日の調査会では、「今までが多すぎたので適正な金額に戻す」との考えが示された。表向きの理由は「財政難」だが、仲井真前知事と予算面で差をつけ、新基地建設反対派に経済的な圧力をかけたい思惑があからさまである。

 辺野古を受け入れる仲井真県政には大金を約束するが、辺野古を受け入れない翁長には金は出さない。安倍政権のこうした態度は、金で仲井真票を買おうとする政府ぐるみの買収であり、大がかりな公職選挙法違反ではないのか、という批判は、至極もっともである。

自民「翁長知事には政府とのパイプがないことが示せればいい」

 さらに、自民党はこれまで、歴代の沖縄県知事を調査会に招き、知事や副知事、県執行部から予算の要望を聞くことが通例だったにも関わらず、今回に限っては翁長知事を招かない、という異例の行動に出た。

 ABC放送によると、安倍政権幹部は、会合に翁長氏が出席できなかったことについて、「当たり前だ。立場をわきまえろ」と知事への不快感をあらわにしてさえいるという。なんという言い草だろう。

 「立場」とはわきまえる、とは何のことか。「安倍政権に逆らう不届き者が、我々と顔を合わせ、口を聞けるはずがないだろう」という意味だろうか。どれほどの高みから人を見下しているのだろうか。

 朝日新聞は、この日の舞台裏を次のように紹介した。

 「ある党幹部は『呼ばないのは仲井真知事じゃないから』と話す。会議では『今後、県の要望は自民党県連を通して受ける』との発言も出た。(中略)

 沖縄県選出の自民党国会議員は『翁長知事には政府とのパイプがないことが示せればいい』と狙いを明かす。別の県連幹部は『普天間問題で政策が異なる知事の要請を受ける理由はない』と言う」

 「立場をわきまえろ」「仲井真知事じゃないから」「翁長知事には政府とのパイプがないことが示せればいい」――。

 行政の公平性などカケラもない、露骨な差別的扱いが、公然と行われているのである。

 翁長知事に限らず、県知事とは、選挙で選ばれた、県民の民意を代表する存在だ。翁長氏との面会拒否は、沖縄県民の意思を無視すると宣言したも同然である。安倍政権による沖縄への「いじめ」は、地方自治、住民自治を蔑ろにした、民主国家にあるまじき差別行為ではないか。

農水大臣にも面会拒否された翁長氏

 それだけではない。翁長氏は、再び閣僚にも面会拒否されていた。

 8日に開かれた調査会に先立ち、1月6日から再び上京していた翁長氏は、サトウキビ交付金に関した西川公也農水大臣との面会を7日に要望していた。だが、やはり農水省側は日程を理由に面会を見送った。またも閣僚との面会は実現に至らなかった。

 他方で西川農水大臣は同日、沖縄県さとうきび対策本部長の新崎弘光JA沖縄中央会長や、衆院選小選挙区で落選し、比例復活した西銘恒三郎衆院議員ら地元自民党議員らの要請には応じた。辺野古推進派議員とは「パイプがある」ことを見せつけ、反対派との違いを際立たせたわけだ。

 例年行われるこの要請行動には、これまで毎年、仲井真弘多前知事が同席していた。つまり、翁長氏との面会見送りは、スケジュールの調整がつかないため面会延期、などという理由は成り立たず、あからさまな面会拒否だった。

知事選で翁長氏を支援した県内業者を発注先から排除!?

 安倍政権は「財政難」を理由に沖縄振興予算の減額を決める一方で、新基地建設費は増額するという「暴挙」にも出た。あくまで「金は辺野古新基地建設にしか出さない」という決定的な意思表示である。毎日新聞は次のように報じている。

 「政府が14日に閣議決定する2015年度当初予算案で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設経費として、今年度の2倍に当たる約1500億円を計上する方針を固めたことが6日分かった。(中略)

 政府は今年度当初予算で、移設関連経費としてまず53億円を計上。昨年7月1日の閣議決定で普天間代替施設の建設事業予算に予備費から142億円、国庫債務負担行為などで545億円の追加支出を決め、今年度の移設予算は計740億円に拡大していた。

 さらに昨年11月の知事選後の来年度予算編成で、防衛省が倍額の約1500億円の計上を要求し、認められる方向になった」

 さらにこれについて、産経新聞は1月11日、次のように続報を出した。

 「平成27年度予算案の防衛費のうち約1500億円を計上するとみられた米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設経費について、防衛省が約300億円上積みしたことが10日、分かった。300億円は陸上の施設整備に充てる。9日に閣議決定した26年度補正予算案に計上した約185億円を加えると2千億円規模まで拡大し、補正を含めない26年度分(約740億円)の3倍近くに上る見通しとなった」

 沖縄振興予算を約300億円減らし、辺野古移設費を約300億円上積みする。何がなんでも辺野古を推進する、というあからさまなメッセージである。国民の税金を使った「イジメ」。さらに驚くべきは、先ほどの毎日新聞の続き、次のくだりだ。

「同省関係者は『沖縄関連の予算は今後、振興から基地関連にシフトする』と説明。移設に関する政府調達では『安全保障に関わる調達の品質を確保するため』として、知事選で翁長氏を支援した県内業者を排除する可能性にも言及している」

 知事選で翁長氏を支援した県内業者を排除する――。

 理屈も何もあったものではない。これでは「経済制裁」である。これでは恐ろしくて、ゼネコンやJAなど、すべての企業や団体が、政府与党の推す候補者以外の候補者を、選挙で応援できなくなってしまうだろう。こんなやり方が許されるのであれば、日本は民主国家ではない。独裁国家そのものである。

市民レベルから国家レベルへと増長する「沖縄差別」

 翁長氏らが保革の壁を乗り越え、「オール沖縄」として共闘した背景には、「建白書」の存在がある。

 当時、那覇市長だった翁長氏が代表を務めた「オスプレイ配備に反対する県民大会実行委員会」は、オスプレイの配備撤回、辺野古の県外移設を求めた「建白書」を作成し、2013年1月28日、翁長氏らは上京し、安倍総理に直接、建白書を手渡した。

 建白書には沖縄全41市町村長や議会議長らの署名が入っており、建白書の内容はまさに「オール沖縄」の意思そのものだった。建白書提出に先駆け、前日の27日には日比谷公園で集会し、請願デモを行った。

 しかし、そこで翁長氏ら「オール沖縄」を待ち受けていたのは、「ヤマトンチュ」による悪意に満ちた沖縄差別だった。田母神俊雄・元航空幕僚長を筆頭に、無数の「日の丸」を掲げた在特会などの差別主義者らが、銀座でデモ隊を待ち受け、「非国民!」「売国奴!」「ゴキブリ!」「スパイ!」「日本から出て行け!」などといったヘイトスピーチを雨あられと投げつけたのである。

 デモに参加した翁長氏ら沖縄県民は、沖縄では経験したことがない、汚い罵声と凄まじい悪意、そしてむき出しの差別に心底驚き、戸惑い、悲しみ、悔しがった。

 沖縄選選出の参議院議員・糸数慶子議員は岩上安身のインタビューにおいて、この日のことを、こう振り返っている。

 「『オール沖縄』による静かな訴えのデモでしたが、『売国奴!』『裏切者!』と罵倒されました。泣きたい思いで行進しました。ひどい差別です。私たちが復帰した日本とは何だったのかと、悔しく思いました」

 本土で激しい差別を目の当たりにして以降、沖縄は、保守も革新もなく「沖縄差別」と戦ってゆく決意を新たにした。沖縄で取材すると、多くの県民や識者がそう語る。

 その差別は今や、田母神氏や在特会などの一部の特異な差別主義者らによるヘイトスピーチだけではなくなった。政権を握った安倍・自民党が、より激しく、より露骨に、国策として、「イジメ」同然の沖縄差別を展開している。侮辱しつつ、服従しろ、従え、と迫っているのである。

 安倍政権がまれにみるヘイト政権であることは、もはや誰の目にも明らかである。安倍政権による沖縄差別は、沖縄が辺野古新基地建設を拒否し続ける限り、今後も続くのだろう。

 基地を力づくで押しつける、ということは、「最前線の戦場」を沖縄はじめ、南西諸島に押しつける、という思惑でもある。政府のその思惑については、伊波洋一・元宜野湾市長が、岩上安身のインタビューに応じて、余すところなく語っている。自衛隊の広報ビデオひとつ見ても、その意図は明白である、と伊波氏は語る。

 こちらの岩上安身による伊波氏インタビューを、1月14日、午後8時から会員限定で再配信する。是非、この機会にご視聴いただきたい。

 沖縄が戦場になる。その時は、沖縄は人の住む所ではなくなってしまう。そういう切実な危機感が、沖縄の人にはある。

 翁長氏は、知事選前に、同じく岩上安身のインタビューを受けて、なぜ基地に反対するか、簡潔に答えている。

 「現代の戦争では、まず、基地をミサイルで狙う。沖縄はミサイル2発で吹き飛びます。我々沖縄の人間には帰る所がなくなるんです」

 岩上安身による翁長氏インタビューを、伊波氏インタビューの翌日、1月15日に再配信する。こちらも是非、合わせてご視聴いただきたい。

 日本政府による「沖縄イジメ」を等閑視していいのかどうか、本土に住む人間こそ問われている。

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