市民科学者国際会議 2012.6.24

記事公開日:2012.6.24取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

 2012年6月23日(土)24日(日)と2日間にわたり、福島県猪苗代のヴィラ・イナワシロで「市民科学者国際会議」が開催された。日本を始めドイツやフランスなど各国の研究者・科学者が一堂に介し、一般市民も交え、発表やディスカッションを行った。

■全編動画
・6月23日

・6月24日
 Part.1

 Part.2

  • 日時 2012年6月23日(土)24日(日)
  • 場所 ヴィラ・イナワシロ(福島県猪苗代市)
  • 主催 市民科学者国際会議実行委員会

 実行委員長であるCRMSネットワークの理事・岩田渉氏の挨拶で幕を開けた。「本会議に、日本のICRP、福島県立医大からの出席を要請したが、多忙を理由に断られた。これまで放射線による身体的影響と社会、法、倫理的問題が混同しているのを懸念し、この会議を開催する。フクシマとカタカナで過去の出来事にすることに嫌悪する。

 まだまだ、原発事故は現在進行中。私たちができるのは、自ら思考し、イメージを駆使し、そして自らの声を信じることのできる、自分に対する威厳と自己に対する信頼を育むこと」などと挨拶した。

 研究者代表としてセバスチャン・プフルークバイル氏のレクチャーへと続いた。冒頭、祝辞を述べたあと、「住民も科学者も同じ船に乗っている。今回、3世代の人たちが出席しているし、どの世代にも重要な問題でもある。今まで、核に対しては、確信犯的にウソで固められてきたことは、チェルノブイリで暴露され、今日まで続いている。西ヨーロッパでは、チェルノブイリ事故での健康被害は、証明されないと思われていたが、近年、それが明らかになってきた。それは、幼児の先天異常、ダウン症、死産などが激増している。福島周辺でも起こり始めているのに、多くの専門機関は、相手にしない」などと語った。

 続いて、長谷川浩氏が座長をつとめ、セッション1として、「放射線被曝の健康影響について。複数の科学的・医学的見解」という趣旨で、最初に、フランス国立保健医学研究機構からフロラン・ド・ヴァテール博士のレクチャーが行われた。

 テーマは「フランス領ポリネシアでの甲状腺ガンに核実験、その他の要因が果たした役割」で、疫学、物理学、放射線生物学、遺伝医学などの見地から、検証がなされた。次にECRR科学委員会、オットー・フック放射線研究所のインゲ・シュミッツ・フォイアハーケ博士が登壇し、「100ミリシーベルト基準の欺瞞、慢性低線量被ばく」について話した。講演の後、2人に対して、質疑応答が行われた。

 休憩後、子供たちを放射能から守る福島ネットワークの中手聖一氏が、市民団体を代表してスピーチを行った。引き続き、セッション1の続きを再開。まず、環境科学、放射線生物学のキース・バヴェルストック氏(東フィンランド大学)が「電離放射線の被ばくの影響にはガン、循環器系、およびその他の遺伝的疾患と影響」。

 次に、遺伝学の専門家の新川詔夫氏(北海道医療大学学長)が「放射線の遺伝的影響の基礎」について、レクチャーした。講演終了後、質疑応答が行われた。

 2日目は、岩田氏が座長をつとめ、セッション2「基礎データと計測」がはじまった。まず、核物理工学のブリュノ・シャレロン氏(CRIIRAD)が登壇した。土壌の汚染状況、農作物の現状、大気中の放射性物質の移動経路、ホールボディーカウンター測定による、体内汚染の分析結果などを話した。質疑応答ののち、大気汚染の専門家で、海洋研究開発機構から滝川雅之氏が、放射能の大気・土壌汚染シミュレーション、海水のセシウム汚染などをレクチャーした。

 休憩後、有機農業ネットの長谷川浩氏が「放射能汚染後の福島県と生産物の現状と課題」と題し、報告した。次に、現在、日本の検査に使われているホールボディカウンターの欠陥などを指摘している、物理学教授の早野龍五氏(東京大学大学院)が発表した。

 午後、セッション3を行った。テーマは「放射線被曝の健康影響調査、防護策、アフターケア」と題し、臨床の現場から、子どもたちの健康をどう守り維持していくのかについて、健康相談会や健康調査・被曝調査を実践してきた日本の研究者らが講演した。

 小児科医の高松勇氏、子どもたちを放射能から守る小児科医ネットワークの山田真氏、日本チェルノブイリ連帯基金から神谷さだ子氏が講演をした。また両日ともに、県民と、県外からの参加者、研究者・科学者がともに意見を出し合う「円卓会議」が、鳥薗進氏、セバスチャン・プフルークバイル氏を座長に行われた。

 対話の中でさまざまな意見が引き出される一方、県民よりいまだに続く生活のなかの不安、苦しみを訴える声もあがり、「データ」を重視する研究者とのギャップが浮き彫りになる場面もあった。また、プフルークバイル氏により「子どもたちへの手紙」とする文章が発表された。

 福島の子どもたちへの思いが綴られており、「私たちはあなたたちの未来のために今後も全力で取り組む。諦めない」と、研究者として、また”大人”としての決意を表明した。手紙はその場で読み上げられ、”子ども”代表として、会議に参加していた高校生たちに手渡された。

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