【岩上安身のツイ録】渡辺喜美・前みんなの党を刑事告発 神戸学院大学・上脇博之教授インタビュー 2014.6.2

記事公開日:2014.6.2 テキスト
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※6月2日の実況ツイートをリライトして再掲します。

 6月2日午前、神戸学院大学法科大学院の上脇博之(かみわきひろし)教授らが、東京地検特捜部に刑事告発状を送付した。内容は、みんなの党前代表・渡辺喜美氏の政治資金問題。5月31日、上脇教授に岩上安身が話を聞いた。

上脇博之氏(以下、上脇・敬称略)「渡辺氏の説明は、政治資金規正法について意図的に間違った解釈をされています。検察に立件されないように、『私の行為は違法ではない』と一生懸命言われてきたんだと思いますが、私達からすると、明らかに間違っています。

 法律を正しく解釈すれば、渡辺氏の行為は政治資金規正法違反。公職選挙法違反の可能性も。8億円の問題について『全く問題ない・違法でない』という説明は間違っているので、東京地検特捜部に告発状を提出します」

渡辺喜美氏と吉田嘉明会長の関係

上脇「まず、事実経緯を資料で説明します。3月26日発売の『週刊新潮』がDHC吉田会長と渡辺氏との関係をスクープしました。2009年春、渡辺氏夫人が『新党を立ち上げますが、お金がなく困っています。地元の栃木に不動産があるので、買っていただけないでしょうか。会長、助けてください』と。

 これをうけて吉田会長は、同年6月26日、言い値の1億8458万円で物件(『渡辺美智雄経営センター』名義)を購入しました。代金が新党立ち上げにどう活用されたかは不明です。

 『週刊新潮』のスクープは、渡辺氏と吉田会長の関係に一定程度のひびが入り、吉田会長が手記を書くという形です。その中で出てきた、新党を立ち上げるときの問題が不明なままなので、これに関しては、今回の告発の対象とはしていません。

 物件は吉田会長が買ったみたいですが、渡辺美智雄経営センター名義のものです。売ればどこにお金が入るかというと、渡辺氏ではありません。それがどうやって新党立ち上げに流れていくのかというのが、今のところ分かりません。

 残念ながら、スタートラインのところが分かっていないので、8億円のところだけが分かっても、全てが分かったことにはなりません。それでも、8億円の問題は大きいと考えています。

 2010年、参院選を控えた渡辺氏が、『参院選のための資金を貸してもらえないでしょうか。3億円あれば助かります』と吉田会長に申し出ました。そこで吉田会長は、指定の銀行口座(りそな銀行参議院支店「渡辺喜美」)に3億円を振込みました。

 この貸し借りは、先程のこと(土地取引の件)が分からないと、突然の話に見えてしまいます。やはりその前があるから、3億円というのがつながってくるわけです。

 2012年3月頃、渡辺氏が『次の総選挙で、維新と全面的に選挙協力することになり、両党で100人以上当選する可能性がある。20億円ほどお借りできませんか』と頼んだものの維新の連携はご破算になったので、『5億円でいいことになった』と吉田会長に連絡しました。吉田会長は、りそな銀行衆議院支店「渡辺喜美」に5億円を振り込みます。なお、問題発覚時点で、借入金計8億円を完済しておらず、返済は約2億5千万円です。

 最初の3億円も完済していません。全額返済していないのに、20億とか言って。数字は簡単に言えますが、5億円を目の前にしたら、(私なら)ぶっとびます。3億円を貸して、また次に5億円を貸してくれるとは、すごい関係ですね」

報告書の訂正「明らかに故意」

上脇「一部報道によると、お金の返済については、税金である政党交付金をもらって返済すればいいという話をお二人はされていたみたいです。税金を目当てにしていたというのが、ひとつ重要な点です。

 渡辺氏は、資産公開法に基づく衆院選時点の資産報告では、借入金残高2億5千万円とのみ報告しましたが、事件が発覚し、みんなの党調査チームの『報告書』で、吉田会長以外からも借り入れしていたことが発覚しました。

 渡辺氏は、4月30日に借入金(残高)を2億5千万円から5億5500万円に訂正したものの、資産報告の対象時期を勘違いしたとして、5月1日には借入金を6億5500万円と再訂正。つまり、当初の報告は、虚偽報告であり違法です。

 明らかに故意だろうと思います。金融機関を通じてお金がやり取りされているし、1万円借りたというなら忘れることもあるでしょうが、常識で考えると、億というお金を、『幾ら程度だった』と報告をすることはありません」

みんなの党の「裏口座」

上脇「渡辺氏が、2010年に吉田会長から3億円を借り入れ、『みんなの党調査チーム』の調査までの期間に政治資金として支出した合計金額は、約5500万円。渡辺氏は2012年11月21日に吉田会長から5億円を借り入れ。うち2億円を、同月中に『同志』である夫人・まゆみ氏の名義口座で管理。11月30日に残り3億円のうち2億5千万円を党に貸し付け、残りの5千万円を含め1億円を、12月にまゆみ氏の名義口座で管理(計3億円)。

 政治資金として支出した金額は5500万円ということですが、調査チームの報告書では、人的な関係、飲食や旅費関係に使ったというような形になっています。渡辺氏は、党の代表です。党の政治活動のために使ったのでしょう。

 吉田会長には、『選挙のためにお金を貸してください』と。3億5億と。ということは、これは、党のお金をたまたま渡辺氏と夫人が管理していたということになります。ということは、これは党の『裏口座』。

 渡辺氏の口座に振り込んでもらった。そのお金を夫人の口座に移した。ということは、党のお金を、渡辺氏と夫人の2つの口座で管理していた。これは、党のお金を『裏』の金として管理していたとみるべきです」

吉田会長以外からも借入があった

上脇「渡辺氏が、2012年に吉田会長から5億円を借り入れて以降、みんなの党調査チームの調査までの期間に夫人の名義口座で保管した金額は、計5億円。夫人が政治資金として支出した金額は、計約3500万円です。

 みんなの党調査チームの報告書。『A』や『B』という記述がある。個人か法人か分からないが、吉田会長以外からも渡辺氏がお金を借りていたことが書いてあります。Aからは、3月と6月に合計9千万円を借りています。Bからも、2010年6月18日に4千万円を2回、合計8千万円借りています。AとBから借りた1億7千万円分は、吉田会長から2010年6月に3億円借りて、同年7月に返済したことになっています。

 渡辺氏が、同年3月26日にAから借りた5千万円は、3月29日にみんなの党に貸し付けられました。また、Aから6月18日に借りた4千万円と、Bから借りた8千万円は、6月22日に党に貸し付けたことになっています。

 AとBから借りたお金は、正直に党に報告しています。政治資金規正法に基づく収支報告書では『貸し付けた』というのは出てくます。ところがAとBが誰なのか分からない。果たしてこんなやり方でいいのでしょうか。

 調査チームの調査結果は、今までにないものを明らかにしたという限りにおいては評価できますが、AとBが分からないのは不十分です。渡辺氏が党にお金を貸し付けているという事実は、みんなの党ではなく、渡辺の党だということを意味します」

説得力に欠ける渡辺氏の弁明

上脇「渡辺氏は、次のように弁明しています。『党首が個人の活動に使った分は、政治資金規正法上、政治家個人には報告の義務はない。そのような制度がない。個人財産は、借金も含めて、使用・収益・処分は自由にできる』。

 『そもそも政治家個人が借入分を含む自己の財産を、個人の政治活動や議員活動に支出したとしても、公職選挙法および政治資金規正法に報告の制度がないので、報告のしようがない』

 『私が個人で使用した分について、政治家がポケットマネーを使って政治活動をしていない場合、その収支について収支報告書の制度がないことを総務省に確認。政治資金規正法上、違法な点はない』

 みんなの党調査チームの報告書にも、次のようにあります。『渡辺前代表個人について、吉田氏からの借入れや当該借入金の使途は、帳簿の作成備付および収支報告等の作成提出義務はなく、政治資金規正法上の問題は生じない』

 渡辺氏や、みんなの党調査チームの説明は、犯罪として検察に立件されることを回避するために、政治資金規正法について意図的に間違った解説をしたものであると考えられます」

「渡辺氏は罪を犯した」

上脇「政治資金規正法には、『政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が≪国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため≫、政治団体の届出、政治団体に係る≪政治資金の収支の公開≫並びに、政治資金は、『国民の不断の監視と批判の下に置かれる』わけだし、そのために『政治資金の収支の公開』があるわけですから、法律の主旨からして『報告しなくていい』」というのを認めている法律ではありません。

 私(上脇教授)を含む研究者(学者)16名が、渡辺氏の行為を政治資金規正法等違反として東京地検特捜部に告発をしました。第1に、渡辺氏の2012年の5億円に関する被疑事実として、次の3つのいずれかが成立します。

 まず、渡辺氏が5億円をみんなの党の政治活動として支出するために、吉田会長から借入していた場合は、党の政治資金収支報告書に『渡辺喜美から5億円の借入金』または『吉田嘉明から2.5億円の借入金』と、党の会計責任者に記載させるべきでしたが虚偽記載をさせました。これが、政治資金規正法違反です。

 会計責任者は、報告を受けていないから、間違った報告をします。吉田会長からは、党のためにと借りているわけですし、党のためにお金を使い、党のためにお金を保管したのだから、本来なら『渡辺喜美氏から5億円借りた』か、実質は吉田氏から借りているわけだから、『吉田氏から2億5千万円借りた』とするかどちらかでしょう。

 渡辺氏は、そのことを会計責任者に黙っていました。党のお金を裏口座で管理したままで、会計責任者に黙っていた。これは、渡辺氏本人が犯罪を犯したことになります。

 次に、渡辺氏が吉田会長から借りた5億円のうち2.5億円は、みんなの党の政治活動のために借り、残り2.5億円は2012年の自らの衆議院選挙の選挙運動費用のために借入していた場合(猪瀬前都知事の事件と同様)です。

 渡辺氏の選挙運動費用収支報告書に『渡辺喜美から2.5億円の借入金』または『吉田嘉明から2.5億円の借入金』と出納責任者に記載させるべきでしたが、全額不記載です。これは、公職選挙法違反にあたります。

 3番目が、渡辺氏が吉田会長から借りた5億円のうち2.5億円は、みんなの党の政治活動のために借り、残り2.5億円は自らの『公職の候補者』の政治資金として、吉田会長から借入していた場合です。

 資金管理団体の『温故知新の会』の収支報告書に、『渡辺喜美から2.5億円の借入金』または『吉田嘉明から2.5億円の借入金』と会計責任者に記載させるべきだったのに、全額不記載となっています。これは、政治資金規正法違反にあたります。

 渡辺氏は、『選挙ではない』と言い張っているから、そうであるなら、渡辺氏個人の政治活動であるということになります。法律では、資金管理団体で扱うことになっているから、資金管理団体である『温故知新の会』の不記載ということになるわけです。

 第2に、渡辺氏が政治活動として支出した計5500万円、夫人が支出した3500万円に関する被疑事実。(1)渡辺氏が、5500万円の支出がみんなの党の政治活動として費消されていた場合の渡辺氏の被疑事実。

 同党の2010年分、2011年分、2012年分の政治資金収支報告書において、会計責任者にその支出を知らせず、同党の各政治資金収支報告書に不記載または虚偽記入を行わせた、政治資金規正法違反。

 (2)渡辺氏が、5500万円の支出が渡辺氏の『公職の候補者』の政治活動として費消されていた場合の、渡辺氏の被疑事実。『その者のために政治資金の拠出を受けるべき政治団体』である資金管理団体、『温故知新の会』の2010、2011、2012年分の政治資金収支報告書において、会計責任者にその支出を知らせず、同団体の各政治資金収支報告書に不記載または虚偽記入を行わせた、政治資金規正法違反。

 『同志』である夫人(まゆみ氏)が費消した3500万円についての渡辺氏の責任。(1)3500万円が、みんなの党の政治活動として支出された場合。同党の2012年分及び13年分の政治資金収支報告書において、会計責任者に同党の各政治資金収支報告書に不記載または虚偽記入を行わせた、政治資金規正法違反です。

 『同志』である夫人に「裏口座」を管理させているが、そのお金は党のものとして、渡辺氏が政治活動に使っていて、それを会計責任者に報告していない場合、その責任は渡辺氏にあります。

 吉田氏には、3億あるいは5億を選挙のために貸してもらっておいて、プライベートに使ったとすれば、詐欺でしょう。返したからといって犯罪がなくなるわけでもありません。

 (2)3500万円が渡辺氏の『公職の候補者』としての政治活動に支出された場合は『温故知新の会』の2012年分及び13年分の政治資金収支報告書において、会計責任者に不記載または虚偽記載させた政治資金規正法違反。

 渡辺氏は、将来の政界再編に備えて蓄えていたという主旨の弁明をしています。それは、政治資金だろうと。(新たに)政治団体をつくる前にカネを扱ってはいけないので、既存の政治団体で使わないといけません。もし、純粋に自分達の党のためではないとしても、将来、新しくつくる党のためとは言えません。

 政治資金に税がかからないようにするためにも、党に付けた形での報告をしたほうが良い。ところが報告をしたくないというのは、そのお金を表に出したくない使い方を考えていたんだろうと勘繰らざるをえません。

 税金による政党交付金をもらっている政党が、億というお金を裏口座で管理しているのは、悪質としか言いようがない。渡辺氏のあんな弁明が通用するんだったら、みんな真似をします。

 『他人から借りたものは報告しなくていいんですね、全部裏で使えばいいではないか』と。今回は悪質なので、同じようなことをやらせないようにするためにも、告発に踏み切りました。

 私達は、辞任だけでは不十分と評価しました。私達の告発を東京地検が受理すれば、捜査義務が発生するので、一定程度の捜査をやらざるをえなくなります。厳正な捜査をしてもらえるものと期待しています。

 この問題に関する、(渡辺氏による)あんな言い逃れで、億と言うカネを隠し持っていても罪に問われないのだったら、『政治家って特権があるんじゃないのか』と勘違いされてしまいます」

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「【岩上安身のツイ録】渡辺喜美・前みんなの党を刑事告発 神戸学院大学・上脇博之教授インタビュー」への1件のフィードバック

  1. ルートおやじ より:

    渡辺は政治的詐欺師の典型。2世議員で政党を私物化している。こんな政党に投票した有権者もなめられていることに気づくべきだ。

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