「『美味しんぼ』の鼻血問題、最初はあまり信じていなかった。だが、福島原発由来の放射性微粒子によるレントゲンフィルムの感光を見て、鼻血との因果関係も疑うようになった」──。
2014年5月18日、神戸市勤労会館で、小児科医の入江紀夫氏(医療問題研究会)を講師に招き、「放射能社会を生きる連続セミナー第5回『放射能から子どもを守るために』」が行われた。この日までに50人が確認されている福島の子どもの甲状腺がんの問題について、入江氏が見解を語った。また、3月にドイツで行われた原発事故の影響に関する会議の報告も行われた。
入江氏は、妊婦への放射線検査により10歳未満のがん発症リスクが上昇するというイギリスの調査や、10ミリシーベルトごとに3%、がん発症リスクが上昇したとするカナダの報告、また、5歳未満のがんや白血病の発症率は原発に近いほど高い、という結果が出たドイツの疫学調査(2007年)などを示して、低線量被曝の危険性を訴えた。
- 講演 入江紀夫氏(小児科医、医療問題研究会)「放射能の人体への影響ー福島における甲状腺がんの多発を考える」
不安を払拭するための甲状腺検診
入江氏は、「小児甲状腺がん多発は放射能による健康被害 〜レベル7(深刻な事態)が意味するもの」という講演タイトルを掲げて話し始めた。「福島の18歳以下の甲状腺検診は、住民の不安を払拭させるためだった」と述べて、検査の方法と調査結果などを説明した。
そして、「悪性が増えている。しかし、専門家は放射線との因果関係を否定する。彼らは『スクリーニングの結果だ、検査機器の性能がいいからだ』と主張する」と話した。
全国より10倍以上高い、福島の甲状腺がん発症率
入江氏は「患者数74例となると、いろいろな面が見えてくる」とも語る。「福島の発症率は、全国より10倍以上高い。また、福島県内での比較では、二本松市と本宮市などは低い地域に較べて6倍も高い。また、甲状腺被曝線量100ミリシーベルト以下では発症しない、などと言われているが、チェルノブイリでは、甲状腺被曝線量100ミリシーベルト未満でも発症している」として、その数値をスライドで説明した。
続いて、福島原発の爆発で拡散された、放射能のほこり(入江氏は『東京電力ダスト』と呼ぶ)に含まれる、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の違いを説明。高崎市にある包括的核実験禁止条約(CTBT)の高崎放射性核種観測所のデータや、福島原発由来の放射能ダストが感光させた医療用X線フィルムなどのスライドを見せ、「東北から関東一帯、1000万人の地域が、放射線管理区域以上の汚染をされた」と指摘した。
福島の甲状腺がんは、放射線被曝によるもの