【IWJブログ】反政府デモ隊狙撃のスナイパーの背後にいるのは新政府!?EU外相とエストニア外相の電話会談の内容がリーク~ロシア国営メディアが報道 2014.3.12

記事公開日:2014.3.12 テキスト
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(翻訳:ゆさこうこ、記事構成:野村佳男、文責:岩上安身)

 ウクライナの首都キエフで2月18日から断続的に続いた、治安部隊と反政府デモ隊の衝突では、デモ隊を狙撃するスナイパーによって、70人以上が殺害されたと言われている。

 メディアの報道では、スナイパーは、「ヤヌコビッチ政権の後ろ盾だった、ロシアの特殊部隊の犯行だ」との疑いが強いとされ、動画サイトでは、治安部隊とみられる男がカラシニコフ銃を構える姿も報じられた。

※毎日新聞 2014年02月24日「ウクライナ:「殺害が目的」市民に怒り デモ隊狙撃」(記事リンク切れ)

 一方、ロシアのプーチン大統領は、3月4日の記者会見で、ヤヌコビッチ氏が率いていた政党「地域」のキエフ事務所への攻撃によって、建物内にいた高齢のエンジニアが殺害された事件を説明。スナイパーの殺害は、ロシア側の犯行ではないと主張した。

 そして、その翌日の3月5日、ロシア政府の国営メディアであるロシア・トゥデイ(RT)が、スナイパー狙撃事件についてEU外相のキャサリン・アシュトン氏とエストニア外相のウルマス・パエト氏の電話会議が、オンライン上にリークされたと報じた。

 その会議では、パエト外相がアシュトン外相に対し、「スナイパーの背後にいるのは、ヤヌコビッチではなく、新しい連合の誰かだという認識が今ますます強くなっている(”So there is a stronger and stronger understanding that behind snipers it was not Yanukovych, it was somebody from the new coalition”)」と、報告している。

 以下、ロシア・トゥデイの英文記事を独自翻訳したものを掲載する。あくまで現段階の仮訳であり、また元記事もロシア語記事の英訳を経ており、必ずしも正確ではない可能性があることを、注意しておきたい。

【以下、該当記事仮訳】

■マイダンのリーダーに雇われたキエフのスナイパー——EUのアシュトンの電話の会話がリーク(公開日時:2014年3月5日12:41、更新日時:20143月6日13:03)

 オンライン上にリークされたEUのキャサリン・アシュトン外相とエストニアの外務大臣との電話の会話によると、 真偽のほどは確かではないが、キエフで抗議する人々を狙撃していたスナイパーと警察はマイダンのリーダーたちによって雇われていた。

 Urmas Paetは会話の中で、「スナイパーの背後にいるのは、ヤヌコビッチではなく、新しい連合の誰かだという認識が今ますます強くなっている」と言った。アシュトンは「調査したいと思う。そのことを摑んでいなかった。興味深い、ほんとに」と答えた。

 この電話は、 ウクライナの首都でEU派の抗議者たちと治安維持隊の衝突のピークの後の2月25日にエストニアのUrmas Paet外相がキエフを訪れた後になされたものだ。

 Urmas Paetの2/25のTweet「キエフでウクライナ最高議会代表と会った。新しい政府を早急に作ることが重要だ」

 Paetはキエフでスナイパーに撃たれた人々を治療する医者との会話も思い出している。彼女は、同じ人間が抗議者も警察も撃っていたと言っていた。「それから、非常に憂慮すべきことは、Olga Bogomoletsも、スナイパーによって殺された人々は警察と通りの両方から撃たれていて、両側から人々を殺したのは同じスナイパーだということを全ての証拠が示している」とエストニア外相は強調した。

 アシュトンはこの情報に対して「そう、それはひどい」と答えた。

 「それから彼女は私に何枚かの写真を見せてくれて、医者として彼女は、それが同じ筆跡で、同じ種類の弾丸だと言えると言った。新しい連合が実際に何が起こったのかを調べたがらないのは本当に憂慮すべきことだ」とPaetは言った。

 Olga Bogomoletsは、キエフで暴力的な抗議が行われた際、マイダンの移動診療の中心となった医者だ。彼女は重傷の人々を治療し、重傷者を治療してくれる近隣国への移送を組織するのを手伝った。始めから、Olgaはスナイパーが死傷者を出していることを非難していた。彼女は、クーデターで成立した体制によって人道問題の副首相のポジションをオファーされたが、断った。

 エストニア外相はこのスナイパー問題全体を「憂慮すべき」と表現し、「すでに最初から新しいウクライナ政権は信用できない」と言った。

 キエフへの1日の訪問のあいだに見たものついての全体的な印象は、「悲しい」ものだったと、Paetは会話の中で言った。

 彼は、ウクライナの人たちがマイダンのリーダーたちを信用しておらず、まったく反対に、新しい政府に参加する予定の政治家たちは「汚い過去を持っている」と強調した。

 このファイルは、追放されたヤヌコビッチ大統領に忠誠を誓うウクライナの治安部隊の役人たちがPaetとアシュトンの電話をハックし、ウェブにアップロードされたと言われている。

 先月のキエフの独立広場での警察と抗議者のにらみ合いでは94人が殺され、900人が負傷した。

※YouTube上にリークされた電話会議の様子(動画削除)

 その後、同じくロシア・トゥデイが、パエト外相が、この電話が本物であることを認めたと報道。「反政府派が犯行に関わったと査定した、という主張ではない」という外相の声明内容も報じた。

【以下、該当記事仮訳】

■エストニア外相が、リークされたキエフのスナイパーについての電話が本物であることを認めた(公開日時:2014年3月5日15:02、更新日時:2014年3月7日10:34)

 エストニア外相が、EU外相との電話の会話の録音が本物であることを認めた。Urmas Paetは、キエフで抗議者たちと警察を狙撃していたスナイパーがマイダンのリーダーたちに雇われたと言った。

 PaetはRIA-Novostiニュース・エージェンシーに、先週キエフから戻ったとキャサリン・アシュトンと会話したが、それ以上のコメントは控えると言い、「まずテープを聞いてください」と言った。

 「そのような監視が行われていたことは非常に残念だ。この会話が今日ウェブ上にアップロードされたというのは偶然ではない」と彼は強調した。「アシュトンとの会話はわたしがキエフから戻った直後に行われた。そのとき、わたしはすでにエストニアにいた」とPaetはつけ加えた。

 また、Paetは水曜日にリークされたテープについてのプレス会議を行い、人々が殺されたキエフでの劇的な出来事は独立した捜査の対象となるべきだと語った。

 また、エストニア外相は、ウェブサイトで声明を発表し、リークされたPaetとアシュトンの電話の会話の録音は「本物」であると言った。

 キエフの街頭で暴動が起こった直後、エストニア外相がウクライナを訪問し、その訪問から戻った後の2月26日にこの電話の会話はなされた、と外相はつけ加えた。

 「敵対者が暴力にかかわっているとPaetが査定したという主張ではない」、外相はキエフ訪問中に聞いたことの概観を伝えているだけだとと声明は強調している。

 ロシア・トゥデイは、アシュトンのスポークスマン Maja Kocijancicに連絡をしたが、Kocijancicは「リークされた電話の会話についてはコメントしない」と言った。

 アメリカ政府はキャサリン・アシュトンEU外相とエストニア外相の間の電話の会話のリークについてコメントを拒否した。スポークスマンの Jen Psakiはこの件について言うことは何もないと言ったとイタル・タス通信が報じている。しかし、彼女は、テープのリークについてロシアを非難し、「ロシア人がどう動くかを示すひとつの例だ」と言った。

 同日、日本のメディアの一部でも、このニュースは報じられた。反政府デモ隊を殺害したスナイパーは、親露の治安部隊側なのか、それとも新欧米の新政権側なのか、事態は混迷を極めている。

※産経新聞 2014.3.6 「スナイパーの背後にいるのは新政権だ」 EU高官の電話会談、ネットに流出(記事リンク切れ)

※毎日新聞 2014年3月6日 ウクライナ:「新政権側が狙撃か」エストニア外相が指摘(記事リンク切れ)

 時事通信によると、ロシアのラブロフ外相が8日、欧州安保協力機構(OSCE)に、スナイパーの正体を捜査するよう要求。ウクライナ情勢について「あまりにうそが多過ぎる。客観的事実とは逆の方向へ欧州の世論が導かれている」と訴えている。

※時事通信 2014/03/08 「ロシア、狙撃手の正体解明要求=ウクライナのデモで多数射殺」(記事リンク切れ)

 現在この件については、IWJも継続して取材を行っている。新たな事実が判明し次第、速報としてみなさんにお届けしたい。

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「【IWJブログ】反政府デモ隊狙撃のスナイパーの背後にいるのは新政府!?EU外相とエストニア外相の電話会談の内容がリーク~ロシア国営メディアが報道」への1件のフィードバック

  1. Thomas Johns より:

    いつも大変に注目して読ませて頂いております。
    今回のウクライナ情勢については、大手マスコミが実に扇情的な記事を載せていたときに、きちんと取材をし、批判すべきところはきちんとするという、ジャーナリスト魂溢れる論考に、こうした議論を読むことができる我が身の幸いを思いました。
     私は、45年ほどまえから、ヨーロッパで勃興をしていた緑の党や、その全身となった68世代の動き、そして、2009年に具体的に海賊党というかたちをとることになったIT技術者の動向に注目をしています。
    日本では、68世代も、緑の党も、そしておそらくは海賊党さえも、まがいもので終わりかねないことに危惧の念を強く持っています。
    欧米のそうした新潮流の中では、海賊党(pirates movement,日本のいわゆる「日本海賊党(須澤秀人代表)はこの国際組織からは謝絶されていることはご承知の通りです。)がウクライナ情勢に深く関わっていますね。
    ウクライナ海賊党活動家が、どういう経緯か、ウクライナ政府から殺害や暴行などの激しい弾圧を受けていることから、当初から明確にウクライナ政府(今は変化しつつありますが)に対し、人権尊重を訴えて、ヨーロッパ議会議員らに強いアピールを続けています。
     そういう事情など、いつか情報交換が出来れば素晴らしいことと存じます。

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