2012年4月21日(土)、埼玉県の寄居町中央公民館で行われた、「資源循環工場と整備センター情報交換会」の模様。
(IWJ東京・工藤)
2012年4月21日(土)、埼玉県の寄居町中央公民館で行われた、「資源循環工場と整備センター情報交換会」の模様。
■ハイライト
第一部 大沼淳一氏講演「水質調査について」
冒頭、進行役の橋本氏から、寄居町三ケ山に立地されている「彩の国資源循環工場・埼玉県環境設備センター」に関して、施設内容や関わっている民間企業について簡単に説明があった。
大沼淳一氏は講演で、環境問題は南北問題(構造)の中で起こるとの分析を展開し、原発事故後に特に露呈した東北と首都圏の関係を例にあげた。また愛知県で環境センターの研究員としての経歴を生かし、木曽川の水を享受する下流都市域名古屋と疲弊する上流域という視点も提示。その差別構造を詳細に説明した。
そして、三ケ山も同様であると、水処理施設の構造や問題点を指摘した。実際2年前から調査が進められており、施設地図周辺の水源・川の水質と県の環境基準値を示して解説。県の発表では不透明な部分があり、もっと住民が監視していることを伝えて厳しく追求する必要があると訴えた。また、ある地域内の各所で採取した水資料の分析結果を比較する際に有用な手法としてしばし用いられるという「オクタダイアグラム」も使って、施設近辺の水質の汚染具合を示した。
第二部 青木泰氏講演「放射能廃棄物について」
青木氏は環境ジャーナリストとして、各地で講演を行っている。西日本ではほとんど原発事故による放射能汚染はないはずなのになぜ講師として呼ばれるのか当初疑問に感じていたが、実際に行ってみると、被災地から避難した土地に汚染の可能性があるがれきを受け入れることに対し、避難者の間で不安が広がっていることがわかったという。
震災がれきの広域処理に関する環境省の方針には、多くの非難の声があがっている。物を輸送するには、輸送距離に比例してコストがかかる。広域処理のためのがれき輸送のコストは高額であり、地元で処理をすれば、予算1兆円の約半分の金額で処理できるのだから残り半分は被災地復興等へ使えばいいと青木氏は指摘する。地元に処理施設を作れば、雇用も生まれる。津波被災地の問題は人口流出で、大きな原因は先が見えないことだと語った。
被災地では「『(広域処理は)2割弱』という数字をがれき処理の遅れの理由にしてほしくない」との声もあるという。3年とされているがれき処理の期間を3年8か月で計画すれば、地元で全て処理が可能であると指摘し、政令指定都市でもあることから自前で処理の目途を建てることができた仙台市の例を紹介。そのような見本があるにもかかわらず、国も県も地元処理は検討せず、逆に足を引っ張る結果となっていると批判した。
また安全性に関して、東京新聞で報じられた「環境省に放射能についての知見がない」との記事を示し、「宮城県・岩手県のがれきは汚染されていない」としているのは環境省の認識不足とした。バグフィルターに関しては、基準が不明確で不合格になった例がなく、「試験焼却」そのものに意味がないと指摘し、環境省の無責任な対応を批判した。
第三部 森田緑氏(生活クラブ生協理事)報告「松葉調査について」
植物も呼吸するという特性を生かし、資源循環工場の施設内外の2年目の松葉を取って、1年間でどれだけ汚染されているかの調査を、工場稼働1年前の2004年から開始。ダイオキシンと重金属に関する調査で、ダイオキシンは減ったものの水銀が異常に増えている状況だという。昨年12月に県へ「環境調査の要望書」を出したが、文書での回答は無く、口頭でのみ「県の測定では問題無い」との説明があった。しかし追及すると施設外での調査結果と判明、指摘をしても県の回答は曖昧。そんな暖簾に腕押しな状態ではあるが、引き続き調査を行い県を動かしていくと、強い意志をにじませた。