2011年11月18日(金)10時、東京都内において、超党派国会議員や有識者らによる「TPPを慎重に考える会」の第19回勉強会が開かれた。11月12日にワシントンで開かれた日米首脳会談で、野田佳彦総理大臣がオバマ大統領に対し、「全ての品目・分野を交渉のテーブルに乗せる用意があると表明した」との報道がなされ、野田総理大臣の発言の真相について問題となっている。これに関連し、経済産業省の枝野幸男大臣が首脳会談前日に開かれたカーク米通商代表との会談時に手にしていた資料に「国民的議論の末、野田政権としてTPP交渉参加を決断した」「全ての品目・分野を交渉のテーブルに乗せる用意がある」と書かれていたとのテレビ報道を受け、野党側が国会で枝野大臣を追及する事態となっている。「国民的議論を経て慎重に判断する」という政府見解に反する重大事案ということで、前日17日に続き、連日の勉強会開催となった。
冒頭、同会代表を務める民主党の山田正彦前農林水産大臣が挨拶に立ち、「とんでもない話だという怒りの声が出ている。TPP交渉参加を前提としない事前協議だと承知していたが、交渉参加ということであれば事態は変わってくる」と語気を強めた。続いて、勉強会に呼んだ外務省および経済産業省の担当者による経緯説明および質疑応答を行った。出席者からは、「党や政府の中でも意見が分かれており、閣議決定された事実もない。政府として参加が固まっているのか、いないのか」と追及する意見が出た。
前日の勉強会で歯切れの悪い回答に終始した経済産業省官僚の宗像直子氏は、今回の勉強会で「別の会談の古い資料と差し替わっていなかった。テレビ報道で映った『古い資料』をもとに、会談での発言が行われたとの誤解が生じている」と釈明し、会談に影響がないとの見解を述べた。これに対し、出席者からは「回答には到底納得することができない。あなた方は、国家的重要課題の資料を差し替え忘れたという釈明で許されるような政府なのか、官僚なのか。こんな対応で、国家的な交渉事ができるのか」など、政府や霞ヶ関官僚のお粗末かつ独善的な対応を厳しく批判する意見が相次いだ。
同会は、今回の首脳会談に関し、「全ての品目・分野を交渉のテーブルに乗せる用意があると表明した」とするオバマ大統領報道官の発言や米政府ホームページ記載内容への訂正を求めないと日本政府が表明していることについて、「今後行われるTPPの事前協議に著しい障害となる」として、「米国政府への訂正および削除の要請」を日本政府に求めていくとする決議文を出席した官僚らに手渡し、善処するように求めた。