2013年4月27日(土)13時30分から、奈良市の奈良県文化会館で「世界遺産・平城宮跡 国営歴史公園『整備』を考えるシンポジウム」があった。テーマは「平城宮跡」の遺産価値の保持。国土交通省による国営公園整備の影響で、世界遺産からの登録抹消の可能性も取りざたされている、この史跡の今後の扱われ方について、考察がなされた。
(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)
2013年4月27日(土)13時30分から、奈良市の奈良県文化会館で「世界遺産・平城宮跡 国営歴史公園『整備』を考えるシンポジウム」があった。テーマは「平城宮跡」の遺産価値の保持。国土交通省による国営公園整備の影響で、世界遺産からの登録抹消の可能性も取りざたされている、この史跡の今後の扱われ方について、考察がなされた。
■ハイライト
基調講演はスピーカーが2人。長年、奈良国立文化財研究所で、平城宮跡の保存運動に汗をかいてきた小笠原好彦氏(滋賀大学名誉教授)と上野邦一氏(奈良女子大学名誉教授)だ。「考古学の研究と史跡整備」との演題を掲げた小笠原氏は、「1960年前後から、日本各地で荒っぽい国土開発が一気に始まった。そして、その影響を受けることになったのが、日本の史跡だ」と語ると、日本における史跡整備の歴史に言及した。
小笠原氏は「日本の第2期史跡整備で、平城宮跡は重要な役割を果たした」とし、史跡整備を巡る普遍的な理念や方法は、平城宮跡の整備を通じて確立された、との見識を披露した。「1990年代の朱雀門の整備で採用された、復元と呼ばれる手法は、その後、ほかの史跡の整備にも波及していった」と述べた。そして、「研究を伴わない史跡の整備はあり得ない」と力説すると、「研究が進めば、それまでの整備のやり方が、見直されるのは妥当なこと」と主張。その上で、「遺構(歴史的建造物の跡)を破壊する恐れがある史跡整備は、(研究者の立場からも)あってはならないこと」と力を込め、国交省が打ち出した、平城宮跡中心部分4万5000平方メートルの舗装工事計画を批判した。
一方の上野氏の演題は、「建築史の研究と史跡整備」だった。上野氏は、まず、復元の精度について解説した。復元された朱雀門の写真と、発掘時の写真を比較しながら「7割5分~8割の精度で、復元されていると思う」と述べ、大極殿については、「発掘成果に限れば、平面さえ、わからなかったのが実情だ。が、別の場所から移築されたものであり、移築時に残された情報などを勘案して復元されている」と、復元には大なり小なり推測が伴うことを明かした。
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