2010年12月9日(木)、岩上安身が、「検察の在り方検討会議」のメンバーに選ばれたジャーナリストの江川紹子(えがわ・しょうこ)氏にインタビューを行った。
江川氏は、郵便不正事件でえん罪にされた元厚労省局長の村木厚子さんを深く取材、事件を振り返り解説をした。また、オウム真理教の取材でも有名な江川氏は、元は神奈川新聞の社会部記者であり、過去に取材されてきた冤罪事件について、さらに、取り調べ可視化の必要性についても語った。
インタビュー内容
◎Part1
江川さんは、郵便不正事件に関連した村木さんの冤罪事件を取材されてきました。事件を振り返り解説していただきました。
◎Part2
オウム真理教の取材で有名な江川さんは、元は神奈川新聞の社会部の記者でした。過去に取材された冤罪事件について、また、取り調べ可視化の必要性についても訴えています。
冒頭、岩上が「まだ中継取材までは許されないが、最高検の定例記者会見が、オープンに開かれるようになった。この発端になったのが、大阪地検特捜部の郵便不正事件だった。柳田前法務大臣の主導で、検察あり方検討会が設置され、そこに江川氏も選ばれている」と語り、郵便不正事件について、江川氏に尋ねた。
江川氏が「この事件は、障害者団体の郵便料金の優遇措置を悪用した事件で、初動は正しかった。その捜査線上にあがった凛の会から、厚労省上村係長と村木局長らにつながり組織的犯罪と断定、逮捕にいたる。6月15日付新聞記事には、民主党石井一議員の関与が取りざたされた。このようなストーリーは、すでに検察内で出来上がっていたのだろう。そして、取り調べでは、上村係長は単独犯だと主張していた。しかし、検察は調書を一切、とらないなど、精神的ハラスメントも加えられ、村木局長の関与を偽証した」と、事件のあらすじを語った。
岩上がテロップを示しながら、別の切り口を説明した。「2009年2月26日、大阪地検特捜部が広告会社社長を逮捕。3月3日、西松事件で大久保秘書逮捕。5月下旬、上村氏が逮捕され、小沢民主党代表辞任、また民主党石井議員の関与も言われた。国策捜査の印象もぬぐえないが」と江川氏に訊くと、「国策というより、むしろ大阪地検が、東京を意識して動いた、という方がわかりやすい。凛の会倉沢会長が、昔、石井議員の私設秘書だったので、検察は議員案件と見立てた。石井議員も早い段階で、アリバイが立証され、担当した前田主任検事もあっさり引き上げている。裁判が始まると、検察が呼んだ証人や、上村係長自身も証言を覆した。中でも上村氏の被疑者ノートと公判証言の一致が影響した」と、江川氏は、岩上に説明を求められた被疑者ノートについて、可視化ができないことへの、自衛手段として考え出されたメモと説明し、村木氏の話に移った。
「村木氏も、実は危なかった。検察ストーリーでは、2004年6月上旬に、指示を受け、証明書の発行したことになっていた。しかし、証拠開示され収監中の村木氏に、弁護士がその文書を見せたところ、プロパティの日付が6月1日になっており、検察の指摘の矛盾を発見した。たまたま、その証拠開示がなかったら有罪だったかもしれない。あと、上村係長の裁判での真摯な証言も大きかった。それから、裁判所の村木局長無罪判決が、どうも検察に上告されないような、とても気を遣った判決文の印象が強い」と、今回の無罪判決のキーポイントを示した。
江川氏は、前田主任検事について「普段は、憮然として口数が少ない人だ。以前、反対尋問を見たが、とてもずさんでパッとしないイメージ」と述べると、岩上が「前田主任検事は、FD改ざんで逮捕になった。ところで、この改ざん行為は、単なる、証拠隠滅罪だけで済むのか、それとも、もっと大きな目的も含んだ、特別公務員職権濫用罪にあたるのではないか、との意見もあるが」と江川氏に意見を訊いた。
江川氏は「村木局長の逮捕以前の、事件捜査段階から、前田主任検事と國井弘樹検事は、6月1日という日付は知っていた。つまり虚構のうえで捜査が始まっているとしたら、職権濫用にあたる」と私見を述べ、指摘した。
また、今回の事件の検察の組織での、決裁の流れとその責任の所在についての疑問や、前田、大坪、佐賀検事逮捕に際して、今後の検察の取り調べのあり方など、話しあった。