2023年2月20日、午後4時より、東京都新宿区の都庁第一本庁舎にて、「都立高校入試へのスピーキングテスト導入の中止を求める会(以後、「中止を求める会」)」、「都立高校入試英語スピーキングテストに反対する保護者の会(以後、「保護者の会」)」の主催により、「中学校英語スピーキングテストESAT-Jを都立高入試選抜に用いることの問題点の説明と都議会文教委員会の正常化を求める保護者記者会見」が行われた。
会見が行われたこの日、2月20日は、都立高校入試の第1次試験の前日であり、ESAT-J(English Speaking Achievement Test for Junior High School Studentsの略)(※)が、都民の懸念・反対の声、実施当日の多くのトラブルを証言する生徒や試験監督らの証言があるにもかかわらず、合否判定に使われようとしている理不尽な状況のど真ん中での会見実施となった。
- 中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)について(東京都教育委員会)
- 都立高校入試へのスピーキングテスト導入の中止を求めます!(change.org)
ESAT-Jの中止を求めると同時に、東京都の教育施策が審議される場である、東京都議会文教委員会の人権侵害、正常とは言えない委員会の運営状況に抗議することもこのたびの会見の目的である。
一体、都議会文教委員会では何が起こっているのだろうか?「中止を求める会」の柏村みね子氏が読み上げた抗議文の内容は次のようなものだ。
「2月9日の都議会・文教委員会での伊藤ゆう氏(都民ファーストの会)の攻撃的不規則発言と不正常な委員会運営に抗議します。
私たちは、2月9日の都議会・文教委員会において、ESAT-Jの実施報告と質疑がされると聞き、インターネット中継で当日の質疑を固唾を飲んで見守っていました。
しかし、途中から再三不規則発言が続き、質問者がその声に応えざるを得ない状況に違和感を禁じ得ませんでした。
会議が長時間にわたる中、次第に苛立ちを見せ、何度も繰り返される不規則発言の声の主は都民ファーストの伊藤ゆう議員であることがわかりました。
特に青柳有希子議員(日本共産党)の発言時には、発言にかぶせるように大声で不規則発言を繰り返し、青柳議員の声が聞き取れない場面もありました。
『やめてください』という声にも、伊藤議員は『やめないよ』と発言し、質問を妨害する瞬間もありました。伊藤議員の不規則発言はあまりに執拗で攻撃的なハラスメントであり、青柳議員の人格を傷つけるもので、ネット中継(※)でその一部始終を見た私たちも非常に大きな打撃を受けました。
- 【質疑妨害】英語スピーキングテスト(ESAT-J) 2023年2月9日 東京都議会 文教委員会(フリージャーナリスト・犬飼淳氏のYoutubeチャンネルより)
正視できない状況でした。青柳議員は委員長に不規則発言を制止するよう言いましたが、入江のぶ子委員長は伊藤議員の不規則発言を止めることはしませんでした。教育庁指導推進担当部長の瀧沢佳宏氏は、青柳議員の質問に対し、不規則発言に乗る形で『質問の意味がわからない』と半笑いで応じました。
浜佳葉子東京都教育長は、質問に対してほとんど応えず、事態を正すことなく黙認しました。モラルも人権意識もない異様で異常な委員会でした。都民の声を代弁する声、それを封じ込めるような暴挙は、都民の思いを踏みにじる行為に匹敵します。
ESAT-Jをはじめ、東京都が直面している教育課題は山積している中、子供たちを思い描いた真剣な質疑が行われるべき都議会・文教委員会で、堂々と、執拗に、攻撃的な『不規則発言』が女性都議に浴びせられ、その状況を全く制止できなかった委員会運営に私たちは強い憤りを感じ、抗議の意を表します」。
また、当日、主催者側から配布された資料によると、東京都教育委員会は、ESAT-Jについて、口では「丁寧に説明、周知します」と繰り返してはいるものの、丁寧な説明を行なったことなど一度もなく、ESAT-Jの運用にいたっては、個人情報の扱い、テスト当日の音漏れ、出題ミス、採点ミス、不受験者の扱い、そして、合否の逆転等々、入試においては「一発アウト」レベルの問題が続発しているのが現状であり、「運用中止」の気配も一向にないようだ。
ESAT-Jの問題点の数々については、この件について取材を続けているフリーランスライターの黒坂真由子氏の以下の記事を参照頂きたい。
- 大紛糾の「都立高校入試」乱暴すぎる改革の中身(東洋経済オンライン)
- 「英語スピーキングテストは愚策」と、認知科学者が断言する理由(日経ビジネス)
- 不公平で場当たり的な対応に不信感(AERA)
- 配慮不足で“排除”された生徒たちも(AERA)
- 中学生では習わない文法を出題(AERA)
- 「逆転現象」のカラクリ(AERA)
2月9日の文教委員会でのヤジ、妨害行為、そして女性蔑視の発言や上述のESAT-Jのたくさんの問題点について、現状、一向に報道されることがなく、生徒の保護者ら関係者は、「どんな利権が働いているのか」、「何かの圧力がかかっているのか」との疑念を感じているようだ。
2月21日、この記者会見の翌日に行われた都立高校入試一次試験の合格発表は本日3月1日である。一人でも多くの生徒が納得のいく結果を得ることができるように祈りたい。
詳細についてはぜひ全編動画をご視聴ください。