8月5日午後6時半過ぎから、「統一教会との出会い、合同結婚式、23年間の信徒生活から『脱会』まで~なぜ人々が統一教会に騙されるか』その理由を考える」岩上安身による元・統一教会信者、『となりのカルト』著者 榊あまね氏インタビューを、IWJ事務所から中継した。
榊氏は、1990年代に統一教会に入信してから、23年間を信徒として過ごした。23年間の信徒生活にけじめをつけ、苦しんでいる人にとって少しでも救いになればという思いから、信徒生活をまとめたご著書『となりのカルト』を2020年にキンドルで出版した。
榊氏は、『となりのカルト』の読書会などを通じて、社会がより良い方向に向かうよう、活動を続けているという。
岩上は、1978年に大学に入学した当時は、原理運動が真っ盛りであったと振り返った。岩上は、友人の家族が統一教会に入り、「珍味売り」などをして家族がバラバラになっていった当時を思い出す、その当時と「統一教会は今でもまったく何ら変わっていないんですね」と述べた。
7月8日に安倍元総理が銃撃されてからもうすぐ1ヶ月になる。岩上はこの安倍元総理銃撃事件について榊氏の受け止めをうかがった。
榊氏「もう1ヶ月になるんですね。早いですね」
岩上「安倍元総理の銃撃事件を最初に聞いた時、統一教会との絡みを思いましたか? 統一教会の信者の方の息子さんが大変苦しんだ挙句、この凶行に至ったということは、想像できましたか?」
榊氏「いえ、第一報のときはまったく。何が起きたんだろうという感じで。おいおい、山上容疑者、容疑者って言いたくはないんですが、山上さんのことを報道で知って、『ついにここまで来てしまったか』という」
岩上「なんというか、『ああ、痛い』という感じでしょうか?」
榊氏「本当に痛いです」
岩上「現行犯逮捕された山上容疑者なんですが、旧・統一教会について『絶対成敗しないといけない』と言っています。その後の取り調べで、母親が旧・統一教会に入会して、多額のお金を振り込んだ影響で破産し、家がメチャクチャになったと」。
岩上は、山上容疑者の凶行によって、統一教会は「反日的カルト」なのに、自民党は一体化しているという異常さが浮き上がってきた、ネトウヨや右派も目を背けるべきではない、と指摘した。
岩上「勝共連合とか統一教会と言っても、その教義の中には日本を『サタンの国』と言って、日本からは金を巻き上げて、韓国のメシアと自称・詐称する詐欺師・文鮮明、それからその一族と、その団体に献金を迫るという、これもう本当に許しがたい『反日的カルト』だと思うんですけれども。
反日カルトと自民党一体化しているということに、これまで安倍政権安倍信者っていうのはすごく多かったと思いますけど、本当に気づいてもらいたいと。(略)
もし、この機会に考えないとしたら、日本は本当に根こそぎおかしくなってしまうと思うんです」。
岩上は、山上容疑者も見たと述べている、2021年9月にUPF(家庭連合系NGO、天宙平和連合)の会合で行われた、安倍元総理のスピーチに言及した。
岩上「(このスピーチを見ると)安倍さんは本当に、(統一教会との)かかわりが深かった人だなということが分かります。
朝鮮半島の平和的統一に努力してきたと、韓鶴子さんへの敬意を表わした。この人は文鮮明さんの奥さんですけれども、三番目の奥さんですね。そして、東京五輪が無事閉幕したことに感謝を述べた。
全体主義国家と民主主義国家の対立、自由で開かれたインド太平洋、台湾海峡の平和と、安定朝鮮半島の平和的統一に言及したと。
宗教団体に対してこうしたメッセージを送るということ自体、すごく違和感を感じませんか? 宗教団体に何をやらせているだろうと」
榊氏「まったくもって履き違えている。履き違えているというか、そもそもそれが目的なんですね」
岩上「まさに、かつては共産主義、ソ連がありましたから。そして中国も今のような市場経済はなかったわけですね。北朝鮮も。
『反共』を掲げさえすれば、その足元が、ぼそぼそと人からお金を盗み取るような、あるいは、要求をするようなカルトが、『反共』という皮をかぶっていれば、全部見逃された。
そして、自民党に献金したり、人を送ったら、全部その犯罪が許された。そいう産物だと思うんですよね」
榊氏「独善的と言うにもほどがある。自分たちの主張が、もう、完璧であり完全であり、もう天下無敵と勘違いをしている」
岩上「めちゃくちゃだと思いますけどね。ええっ!? って思いますよ」。
岩上は、統一教会が50年代にできてから、60年代には大学などに入り込んできて、岩上自身が学生であった70年代末から80年代初頭、それから40年を経て、今なお、名前を変えながら同じようにやっているという、歴史の「長さ」について触れた。
岩上「最初に聞いたのは、『イエス・キリストの再来だ』と、『お前、ふざけたことを言うなよ』って本当に思ったんですよ。キリスト教会はこれを聞いて、本気になって怒らないのかと。
キリスト教から文句言われたか何かしたのか、『イエスは別のところにいて、私は再臨した』と。でも、再臨主って言葉は、一回来たことがあるということでしょう? だから『一体、イエスとの関係はどうなんだよ』とか。大真面目に。
当時何回か、統一教会の信者の人と、原理研の人間と接触する中で議論したんです」。
岩上は、岩上と友人がくつろいでいた下宿に、女子大生の統一教会の信者2名が上がってきたときに、議論した話を披露した。
岩上「キリスト教では、イエス本人が再臨することになっています。それ自体もどうかと思うんですが、僕はカトリックだろうかプロテスタントだろうが、復活の日が来るとはまったく思っていませんが、(文鮮明氏は)自分が、その『(再び)現れたメシア』なんだと、断言してるんですか?」
榊氏「していましたね」
岩上「でも、イエスから言われた、とも言ってますよね?」
榊氏「それも言ってました。本当に、よくよく冷静に考えると、どれが本当なのって、思います」
岩上「第一のアダムっていうのはアダムとイブとして、次はイエスで、第三のアダムとして私が来た、と。『じゃあ、別人じゃん』って話じゃないですか」。
岩上は学生であった当時から、「全部胡散臭い」と思っていたと述べた。岩上は、マインド・コントロールされると、矛盾した教義も絶対的なものに見えてしまうのだろうか、と問うた。
榊氏は、今の日本社会には宗教に対するバイアスのかかった見方が広がってしまっているので、多くの人は、カルトに対する免疫がない、と指摘した。
榊氏「そうですね。日本人がいつの頃からか、『宗教イコール怪しい』というバイアスがかかってしまっていて。宗教そのものを、ちゃんと、岩上さんのように議論をしたりせず、バイアスを掛けて考えてしまうようになって。だから免疫がないんですよ」
岩上「免疫がないから、突然、『アホか』みたいな話を信じられちゃう、と」
榊氏「そうなんです」
岩上「既成の宗教も含めて、おかしなところはいっぱいあるので。それも含めて、『ここはまともだな』、『ここはダメだな』という、相対的に見られる視点を養うことは大事ですよね」。
岩上は、統一教会の異常さは、貪欲なまでの「献金」への執着だと指摘た。
岩上「この人たちは誰に指示されてなくても、猛烈に(金集めを)続けようとしますからね。この、存続と継続のために、金を得ようという意思というか、貪欲さっていうのはすごくないですか?」
榊氏「もう、狂気の沙汰です。本当に、これだけ、毎日毎日、もうお金のことしか言われない宗教団体ってどうなのって」
岩上「毎日のことなんですか」
榊氏「はい。日曜日にはやっぱり、礼拝があるんですけれども、礼拝の、牧師の立場の方が説教をする、その説教のオチすらも『献金しなさい』なので。
もうあの聖書の聖句を引用して、それをどうにか屁理屈をこねくりまわして、オチは献金っていう」。
岩上「10分の1献金というのも、拒めないんですか?『今日は持っていないので、すみませんって』とか」。
10分の1献金というのは、収入の10%を教会に献金することである。
榊氏「礼拝に行った人に、その日に献金する、10分の1というのもありますし、韓国の神殿の建設費であるとか。とにかく何かしら理由をつけて、ウン十万、ウン百万単位を、いつまでに献金できるか報告しなさい、みたいな話であったり」
岩上「あなた自身が献金しなさい、あるいはチームで売り上げて、その仕入れ値をさっ引いて出しなさいとか、そういうことですか。すごいですよね。
そういうところに我が総理は行って、こんな大きなテーマである『朝鮮半島の平和的統一のために』をやっていて素晴らしいと敬意を表すとか。本当に自国民を愛していない人なんだな、この人は。
岸家・安部家、三代に渡って深いかかわりがあるので、統一教会・勝共連合の正体なんて知らないわけもないと思うんですけれども。(中略)
亡くなった方を悪く言っちゃいけない、というのは日本でもよく言いますが、それとこれは別ですよ」。
岩上は、山上容疑者が、そうした安倍元総理と統一教会の関わりをよく知っていたのだろうと述べ、3日にインタビューした櫻井義秀教授の言葉を引き、山上容疑者に関して、本当に報道しなければならないことは、私憤や「無敵の人」といった問題ではなくて、「統一教会とは何か」だ、と指摘した。
榊氏もこのままでは「日本国民全員が今、向き合わなければいけないものを提起してくれているのに、それが一切無駄になる」と強い言葉で応じた。
岩上「桜井さんに、今連続してインタビューしてるんですけど、『(今のメディアの)報じ方は間違っている、拡散しすぎだと。
山上容疑者について本当に伝えるべきは、『統一協会とは何か』であって、『自民党の関係がどのようなものか』ということに収斂していかなきゃいけないって、おっしゃってるんですよね。どう思いますか?」
榊氏「まさしくその通りで。もうここで本当に、山上容疑者が、単なる『無敵の人』で、やけを起こして凶行に及んだと、そういうふうに結論付けられていくとしたら、日本国民全員が今、向き合わなければいけないものを提起してくれているのに、それが一切無駄になると思います」
岩上「彼も死ぬつもりで、あるいは罪を受けるつもりでことに及んだ。
安倍元総理も改心していれば死ぬ必要はなかったと思いますが、その家系に生まれて、お祖父さん、お父さんも全部どっぷり浸かってきたから、三代目としてそのシステムができ上がったところで身動きも取れなかっただろうし。
だけれども、彼(安倍元総理)の死も無駄になるんですよね。
彼の死を契機に、日本がこのような組織犯罪的な団体に、寄生されてしまっていて、そして政治も歪められている。個々人も信者も犠牲になっている、そういう悲劇を何十年、ミクロとマクロの両方で問題なので。
それを直視しないことになっちゃいますもんね」
榊氏「この事件があって、初めて統一教会を知ったという人もいれば、もう何十年と見てきた方々もいて。まだやっているのかと思われる方々もいて。あまりこの問題に対して知らない方も多いし、知っている方との温度差がひどいんですが。
この日本にどこまで入り込んでいるのかわからないぐらい、問題の根を引きずり出したら、どこまでつながっているのか分からないぐらいの問題を、(山上容疑者が)こうやって投げかけて、明るみに出してくれている。
ここに向き合わずして、どうするのかと」。
岩上は、山上容疑者が事件の前日、フリージャーナリストであり、「火の粉ブログ」を運営していた米本和弘氏に宛てた手紙について、以下の部分を抜粋して紹介した。
「世界中の金と女は本来全て自分のものだと疑わず、その現実化に手段も結果も問わない自称現人神。私はそのような人間、それを現実に神と崇める集団、それが存在する社会、それらを『人類の恥』と書きましたが、今もそれは変わりません」(山上容疑者から米本和弘氏へ)
岩上は山上の凶行は裁かれるべきだが、この手紙は「達意の文章」であり、山上容疑者は「全然狂った人ではない」と評し、榊氏に「御覧になってどう思いますか」、と問うた。
榊氏「真正面から統一教会というものと向き合ったというか、『何なんだろう、この団体は』というところと真摯に向き合った。彼は、本当の姿を見たんだと思うんです。信者たちに見えてない本当の姿を。
(多くの信者に)見えていないからこそ、言わなければいけない。そういう思いに駆られていたと思います」。
榊氏は、自分自身は親子関係の問題などから自分の居場所がないと感じていたため、優しくされて入ってしまったが、「それは割とありがちなこと」だとして、もう一度、自分が脱会にいたるまで学んだことなどから、「なぜ人々が統一教会に騙されるのか」という理由について説明した。
榊氏「宗教に対して免疫がない。(宗教は怪しいという)バイアスをそもそもかけてしまっていて、宗教ひとつひとつの教義なり、活動内容なりを、フラットに見る目が養われていない、というのがすごくあるな、と思ったんですね」。
このあと、インタビューでは、榊氏の著書『となりのカルト』を軸に、統一教会との出会い、統一教会の勧誘の手法、「地味だが徹底的な洗脳」の手法、統一教会の教義、「献身(出家)」した信者の生活について詳しくおうかがいした。
詳しくはぜひ、IWJ会員となって、全編動画を御覧ください。