2021年4月19日、「袴田事件」に関する記者会見が、日本外国特派員協会で開催された。登壇者は袴田巌氏の姉の袴田秀子氏、弁護団長の西嶋勝彦弁護士、弁護団事務局長の小川秀世弁護士で、司会進行はジャーナリストの神保哲夫氏が務めた。
今回の記者会見は、1966年に静岡県清水市(現・静岡市)で一家4人が殺害された強盗殺人事件「袴田事件」で死刑が確定した袴田巌さんについて、最高裁判所第3小法廷(林道晴裁判長)が、再審・裁判のやり直しを認めなかった東京高等裁判所の決定を取り消し、高裁で再び審理するよう命じる決定を、2020年12月23日に下したことを踏まえて行われた。
- 「袴田事件」で、最高裁判所が、再審・裁判のやり直しを認めなかった東京高等裁判所の決定を取り消し! 高裁で再び審理するよう命じる決定!(日刊IWJガイド、2020.12.24号)
西嶋勝彦弁護士は、袴田氏の犯行時の着衣とされた、血痕が付着した5点の衣類の写真を示して、最高裁がその証拠能力に疑問を呈する形で、高裁に再審理を求めた経緯を説明した。
5点の衣類は、犯行現場近くの工場の味噌タンクから発見されたものだが、犯行直後にタンクに隠され、1年以上味噌漬けにされていたとされるが、その割に血痕の色が不自然だとして、発見直前にタンクに入れられた「捏造された」証拠の可能性を弁護側が指摘している。最高裁の判断は、これに応えたものだった。
現在、浜松市で姉の秀子氏と暮らす袴田巌氏の散歩姿などをとらえた映像上映後、秀子氏は「(裁判は)50年かかって、やっと明かりが見えてきた」「最高裁の高裁の差し戻しは、ほんとうに私は喜んでおりました」「巌にもそう言いましたら、(勘違いをして)『再審が終わった』と申しておりました」「巌の無実はもうじき証明されます」と、喜びと期待を語った。
しかしその一方で、袴田氏は仮釈放後、現在に至るまで、男性の訪問者を避けるなどの拘禁反応を見せているとのことである。
小川秀世弁護士は、「最高裁が袴田事件が間違っていた、『誤判』であることを認めた。これは画期的である」と評価した。
小川弁護士は、「これまで日本では、1980年代に再審で無罪となった、免田、財田川、松山、島田の4事件が、死刑事件の誤判とされてきた」としたうえで、「今回の最高裁の決定は、再審開始は認めなかったが、誤判を認めたことは、画期的だった。この決定で、わが国の5件目の死刑事件の誤判になったということ」と、その意義を強調した。
さらに、証拠「捏造」の理由を神保氏から質問された小川弁護士は、「警察が真犯人を知っていて、擁護しようとした」と、事件直後から袴田氏を犯人に仕立てようとした警察の対応を踏まえて語った。
ぜひ、動画で、会見の詳しい模様を御覧いただきたい。