山本太郎参議院議員が昨日10日に記者会見を開き、自由党から離党する意向を示すとともに、新党「れいわ新選組」を立ち上げることを表明した。離党について、「これから統一地方選挙の後半戦があります。その間は無理に離党届を出さず、自由党の共同代表として職責を果たす」ことを、小沢一郎・自由党共同代表と話し合ったことを明かした。
新党結成の狙いについては、「違う角度からの野党結集を促すとともに、それがかなわなかったときに、今の窮状を救うような政治勢力に力をお借りしたい」と説明した。
会見では、山本議員がパワーポイントを使いながら「れいわ新選組」の公約を説明する場面もあった。
「8つの緊急政策『政権とったらすぐやります!』」と題したスライドには、「①消費税廃止 ②全国一律! 最低賃金1500円『政府が補償』 ③奨学金徳政令 ④公務員増やします ⑤第一次産業戸別所得補償 ⑥『トンデモ法』の一括見直し・廃止 ⑦辺野古新基地建設中止 ⑧原発即時禁止・被曝させない」という、8つの政策が掲げられた。
しかし、政権奪取に意欲を示す一方で、「野党が結集できたときには、(新党の)旗を下ろそうと思います」とも述べた。
「消費税廃止」を明言しているが、そうした政策実現の道筋や、そもそも「れいわ新選組」をいつまで存続させるつもりでいるのかなど、党の方針の曖昧さがぬぐえない。また、「消費税廃止」というキャッチーな政策を他党が掲げた場合、「れいわ新選組」は選挙戦で存在感を示すことができるのか、疑問符がつく。
山本議員が説明した政策は、政府が積極的に支出していく財政出動が前提となっている。山本議員は、その財源については十分に説明したとは必ずしもいえない。下げ続けてきた法人税の強化や、富裕層への課税を厚くする累進性の強化について言及したが、消費税を廃止したあとに、さらに今以上の財政出動を行う財源がどこから出てくるのかといえば、やはり国債の発行をあてにせざるをえないのではないか。
しかし、現在の日本の政府債務残高は対名目GDP比ですでに200%を超えている。この財政状況は、戦時国債を乱発して財政破綻に至った敗戦直前と同水準にある。
山本議員は会見の中で、経済に関しては、立命館大学の松尾匡(ただす)教授から学んでいると述べた。松尾教授は、緩慢なインフレにより経済成長を維持していくことを是とする、いわゆるリフレ派と呼ばれる経済学者である。松尾教授はアベノミクス批判をしているが、異次元金融緩和について問題だと批判しているのではなく、その不足を批判している学者である。異次元金融緩和は足りなかった、もっとやれ、国債の信認は揺るがない、との考えを、松尾教授は有している。
一例を挙げれば、松尾教授は「黒田(東彦)日銀は、実は肝心なところでお金を出し惜しんできたきらいがあるので、野党が言っているのとは逆に、『足りないぞ』という批判をしなければならない」と発言したことがある。
- ブレイディみかこ・松尾匡・北田暁大『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう レフト3・0の政治経済学』(亜紀書房、2018年)(https://amzn.to/2Uv4P9x)172頁
これに対し、統計不正問題を追及している明石順平弁護士が、今年3月に行われた「岩上安身によるインタビュー」の中で、今の日本の財政危機を楽観視することに強い危機感を示している。ぜひ、以下のURLより、岩上安身による明石順平弁護士インタビューをご覧いただきたい。
また、明石弁護士と松尾教授は、ツイッター上で直接的に議論もしている。トゥギャッターでまとめられており、下記URLから閲覧できる。
- 異次元緩和とマネタリーベースの積み上げで国債暴落&ハイパーインフレ?(明石順平Vs.松尾匡)(togetter、2018年12月28日)
10日の会見を中継したIWJは、緊急事態条項を含む自民党の改憲草案の危険性に関して、「れいわ新選組」がどのようなスタンスをとり、野党共闘にあたって自民党改憲案に一致して反対を示すことができるのかどうか、質問した。すると山本議員は、次のように答えた。
「自民党の改憲4項目の中でも、やはり緊急事態(条項)が一番の本丸だと思っています。他の項目はほぼダミーに近いと思っています」「改憲する必要はないですから、(野党側は)憲法改正について議論を進める必要はないでしょう。議論を進めるということは、ゴールが見えちゃいますよね。(自民党は)そういうことをずっとやってきましたよね」
元大阪府知事の橋下徹氏がフジテレビ系の番組「とくダネ!」で明言したように、維新の会は、公明党を壊滅させると脅しながら、大阪都構想で妥協を迫り、同時に改憲に慎重な声もある公明を安倍晋三政権の望む改憲方向へ引っ張ってゆく、という戦略を打ち出している。野党の一部が橋下氏を担ごうなどと夢のようなことを言っていたが、そんな目論見は泡のように消え、維新が橋下氏の影響下にある改憲勢力であることが明らかとなった。
それに対して、野党はなぜ自民党の改憲案には断固反対という一点でまとまれないのか、歯がゆく思う人は少なくないに違いない。国民民主党の玉木雄一郎代表のツイートに、岩上安身は以下のように引用ツイートをした。
「なぜ、緊急事態条項を含む安倍政権の自民党改憲案だけはノー!で、野党はまとまれないんですかね。他はそれぞれ違ったっていいんですよ。本当の本物のファッショの前に、共闘は当たり前じゃないですか。維新は改憲の方向を向くと橋下氏がテレビで断言した。改憲勢力の自公維と戦う、それ一項で充分」
- 岩上安身ツイート(2019年4月10日)
今後も太郎さんから目が離せない。
山本太郎参議院議員が自由党からの離党と新党「れいわ新選組」の結成を発表!公約では「消費税廃止」や財政出動を強調!山本議員が師事するのは明石順平弁護士と論戦の過去のあるリフレ派経済学者の松尾匡 立命館大学教授! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/446668 … @iwakamiyasumi
https://twitter.com/55kurosuke/status/1116289533908152320