2012年11月4日(日)13時半から、郡山市のビッグパレットふくしまで、福島県と福島県立医科大学主催の「県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会」が行われた。福島県内の18歳以下(原発事故当時)の約36万人を対象に実施している、甲状腺検査の内容や甲状腺がんの医学的特徴を、実際に検査にあたる専門家が講義するものだったが、会場には空席が目立った。
(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)
2012年11月4日(日)13時半から、郡山市のビッグパレットふくしまで、福島県と福島県立医科大学主催の「県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会」が行われた。福島県内の18歳以下(原発事故当時)の約36万人を対象に実施している、甲状腺検査の内容や甲状腺がんの医学的特徴を、実際に検査にあたる専門家が講義するものだったが、会場には空席が目立った。
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はじめに、主催者を代表して松井史郎氏(福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター特命教授)が、「昨年10月に、県と県立医大による県民健康管理調査の中の甲状腺検査が始まり、これまでに受診した子どもの数は約11万5000人を数える」と報告し、この日が初回となる説明会について、「検査結果の内容がわかりにくい、との県民の声を受けたものである」と述べた。そして「実施中の検査は、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故で、事故から数年後に子どもの甲状腺がんが多発した現実を教訓にしている」と述べ、講師役の鈴木眞一氏(同センター甲状腺検査部門部門長)に登壇を求めた。
鈴木氏は、一般的な甲状腺がんについて、「甲状腺がんは、ほかのがんとは特徴が異なる」とした上で、次のように説明した。「がんは、若い人ほど進行が早いとの通念があるが、甲状腺がんは、年齢が上がるほど進行が早い。20歳代の患者の場合では、診断から3〜4カ月後の手術でも問題ない。仮に、小さなしこりを誤って良性と判断し、2〜3年後に悪性であることが判明しても、手術は可能だ」。
その後、触診、超音波検査といった甲状腺がんの一般的な検査の概要を示した鈴木氏は、「県の検査は、超音波検査と決められているので、触診は行わない」と説明した。CT(コンピューター断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)で、その腫瘍が良性か悪性かを判断することは、一部の例外を除き、不可能とした。「主たる治療法は手術で、手術の範囲を決めるのにCT、MRIが使われることはある。術後の抗がん剤使用は一般的には行われない」と述べた。
チェルノブイリ事故後、放射能に汚染された牛乳の流通によって、子どもたちが内部被曝した前例に触れた鈴木氏は、「日本では、基準値を超えた食品は流通しない。チェルノブイリのような内部被曝は考えにくい」との見方を示した。また、「原爆投下後の広島や長崎のような、外部被曝線量については、現時点では想定されていない」と指摘した上で、「それでも、子どもの甲状腺がんを心配する父母は多い。過度な不安解消のためにも、検査を実施する意義がある」と主張した。
さらに鈴木氏は、日本では、これまで小児甲状腺結節の疫学調査は行われていないことにも言及した。原発事故後4〜5年とされる、甲状腺がん発症期に検査開始を合わせると、被曝とは無関係の甲状腺疾患が混じって発見される可能性があるとし、「現時点での甲状腺の状態把握が必要」と説いた。その上で「県民の不安解消に向け、対象となる人たちを、生涯にわたり見守っていく」と表明した。
質疑応答が始まると、被曝リスクに関する突っ込んだ質問が相次いだ。鈴木氏が、自分の守備範囲外のことには答えられないと発言しても、参加者が追求をやめないシーンが何度か見られ、司会者が質問数を制限しようとすると客席の間から不満の声がわき上がった。
その一方で、「いわき市の場合、避難している子どもの検査が優先されている」「検査結果の即日開示を求めるニーズには、ぜひ対応してほしい」といった声には、鈴木氏はニーズをくむ意向を示した。また、「今日の説明では、一般的な甲状腺がんと、被曝時の年齢が発症に大きく関係する、被曝による甲状腺がんを、混同して理解してしまう」との指摘には、「次の説明会で配慮したい」と応じた。