シンポジウム「検察、世論、冤罪」 ~登壇 郷原信郎氏 山口一臣氏 八木啓代氏ほか、司会 岩上安身 2011.5.23

記事公開日:2011.5.23取材地: テキスト動画
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(IWJ・八木)

 2011年5月23日、東京都千代田区の明治大学アカデミーコモンで、シンポジウム「検察、世論、冤罪」が行われた。これは、明治大学大学院情報コミュニケーション研究科主催のもと、江下雅之明治大学教授を総合司会、岩上安身を司会に迎えて開催された。さらに、パネリストとして、郷原信郎名城大学教授・弁護士、山下幸夫弁護士、山口一臣週刊朝日前編集長、作家の八木啓代氏、市川寛弁護士が参加した。

■ハイライト

 冒頭、主催者代表で明治大学の大黒岳教授が挨拶を行った。大黒教授は、小沢一郎問題や、原発問題に関するマスメディアの情報隠蔽について、「ミスリード報道がある状況下だが、今回のように大学とネットワークメディアが協力し、実のある議論の場を作ることができる」と期待を述べた。

 岩上は「検察が冤罪を形成する過程で、メディアの検察に対するチェック機能が整っていれば、このようなことは起きない」と主張した。また、」今回のシンポジウムでは、検察とメディアとの関わりから生み出される冤罪の構造を、パネリストにより、さまざまな切り口から議論することを期待したい」と述べた。

 八木氏は、自身が中南米に長く滞在していたことに触れ、日本の検察に対して疑問を持ち始めたのは、小沢事件が発端であることを述べた。これは2005年にメキシコで起きたアムロ氏の事件(※)と似ており、現地では、その事件から検察を政府から独立させるべきという議論が起きたという。さらに、大阪地検による村木厚子さんの事件については、「前田恒彦検事個人の犯罪なのだろうか」という疑問があることや、またそれに関連した検察審査会の不可思議な決議などから、「今後も検察問題についてさらなる検証を続けたい」と熱弁を振るった。

(※)2005年、当時のメキシコ市長であるロペス・オブラドール氏(通称アムロ)が、大統領選挙に立候補し、当選が有力視されていたが、体制側がでっち上げた「政治とカネ」の問題で支持率を落とし、落選した事件

 郷原氏は、「検察=正義という思い込みと、メディアの雰囲気作りが合わさることで、検察問題への世論の関心が薄れてきてしまうこと」を危惧し、「検察の抱える問題点について常にイメージできることが必要だ」と強調した。そして、「検察は大相撲と似ている」と指摘し、「閉鎖的」かつ「組織が自己完結している」ことを共通点として挙げた。

 山下氏は、検察審査会に関する法律改正を切り口に、審査会改正後の不透明な人事や検察との関係と、村木事件、そしてそれらを取り巻く検察の問題についての見解を述べた。

 山口氏は、検察問題の大半はメディアの責任だと述べ、「メディア本来の仕事である権力の監視機能が働いていない」と指摘した。また、5年前のライブドア事件を例に挙げ、メディアの作り出す虚構と世論形成、そしてそれらと検察との関係を語った。

 市川氏は、現役時代に自身が行ってきた取り調べ時の暴言や冤罪について最初に謝罪し、新人時代の上司から「ヤクザと外国人には人権はない」、「生意気な被疑者は机の下から蹴れ」、「(被疑者に向かって)お前の調書じゃない、おれの調書だと言え」と教育を受けていたことを告白した。

 シンポジウムの終盤では質疑応答が行われた。「特捜時代に、自身の理念に合わない圧力を(上司から)受けたことがあるか」という質問に対して、検事経験のある郷原氏は「犯人の知人、友人を徹底的に調べ上げろ」と言われ、「この(特捜部の)世界は変えなければいけない」と思い続けていたと告白した。

 最後に、岩上が「次席検事が、なぜ執着をして事件を成立させたかったのか、その動機は」と質問し、市川氏は「特捜部に入りたかったからだと思う。議員案件や地元の名士を挙げれば、独自捜査ができるとして特捜部に入れると考えたのだろう」と回答した。

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