2012年9月26日(水)19時、大阪市此花区の此花区民ホールにおいて、「震災がれきの広域処理を考える学習会」が開かれた。原発や瓦礫広域処理に反対する市民団体「放射能から子どもを守るママの会・大阪市」が主催した。講師として阪南大学経済学部の下地真樹准教授を招いた。
下地准教授は公共経済学が専門で、「近隣迷惑施設の立地手続き」などの研究論文を発表している。実兄が福島県郡山市に在住していることから、「原発事故や放射能被害は他人事ではなく、切実に感じている」と言い、環境省が推進する瓦礫広域処理については、「復興支援や放射線防護の観点からみて、明らかに愚行だ」と批判している。
- 日時 2012年9月26日(水)19:00~
- 場所 此花区民ホール(大阪府大阪市)
大阪市は、岩手県の震災瓦礫の受け入れを表明している。下地准教授は「福島第一原発事故の直後、遠く離れた大阪にも、1平方メートルあたり18.9ベクレルの放射性物質が降っている。これは、震災前ならトップニュースになる高い値だ。しかし、岩手県の放射性降灰物は、大阪の150倍に相当する1平方メートルあたり平均2992ベクレルである」と説明した。そして、「岩手県は福島第一原発から離れているので放射性物質はあまり降っていない、という考え方には疑問がある」とした。
放射性物質の量を計測する上で、セシウムばかりが採り上げられていることにも触れ、「セシウム以外の放射性物質の測定はおろそかである。ストロンチウムやプルトニウムの汚染状況は、まだよくわかっていない」と述べた。さらに、「放射性物質の量を計る上で重要なのは総量。とてつもない量になるが、橋下市長は『すべて調べることなんてできない、測れる範囲で測って判断する』と言っている。非常に危険な考え方だ」と指摘した。震災瓦礫には、放射性物質以外にもさまざまな有害物質を含んでいること、震災瓦礫を焼却した東京都の施設でアスベストを検出した例があることも紹介した。
広域処理を推進する環境省や自治体の姿勢については、「環境省の役人は、内部被曝と外部被曝すら区別できていない」と痛烈に批判。「瓦礫の汚染度を空間線量計で測って、安全だと言っている。全くナンセンスだ」と述べたほか、「埋めた汚染物質が、すべて雨で流されるなどして外部に出てきても、絶対に違反とならない、緩い基準しか定めていない」と述べ、安全基準の策定そのものに大きな問題があることを説明した。
下地准教授は「広域処理に点数をつけるとしたら、0点」と酷評した。その理由として、「被災地支援という名のもと、放射能を全国に『薄めて拡散』する一方、被災者に対して汚染地に留まることを強要している状況はおかしい。広域処理には悪意を感じる」と述べた。さらに、「広域処理と原発推進は表裏一体。核利用国は、少なからず放射能被害を過小評価する傾向がある。放射能被害から逃れるため、被災地から避難している多くの人々が自主避難扱いとされ、避難者が自腹を切っている状況こそ、早急に改善すべき」と指摘した。