参院選の投開票日の翌日である7月11日早朝6時、沖縄県・東村高江の集落を取り囲むように6つのヘリパッドを建設する計画をめぐり、資材を積んだトレーラー数台が米軍北部訓練場に入った。基地建設反対派の伊波洋一氏が、現役閣僚の島尻安伊子氏に10万票差で圧勝した翌朝の、民意を踏みにじる「暴挙」だ。高江米軍基地「N1地区」ゲート前には、抗議の声を上げる市民の排除のため、全国から集められた500~1000人ともいわれる機動隊員が投入されている。
国頭村安波の米軍北部訓練場LZ4地区では、7月14日14時前頃、砂塵を巻き上げて離着陸するオスプレイを市民らが撮影した。河村公子さん(アーティスト)が撮影した動画を、提供いただいたので、以下に掲載する。
- 日時 2016年7月20日(水)
- 場所 沖縄県東村高江
※2016年7月20日午後12時段階のツイートを加筆して掲載しています。ご承知おきください。
20日、不当な自動車検問を市民が抗議、警察が撤退
沖縄米軍北部訓練場のヘリパッド新設工事に向け、政府は反対する市民らの強制排除に動いている。訓練場「N-1」ゲートでは本日7月20日、朝5時半から抗議集会が開かれ、すでに100名以上が参加。現在ラジオ体操中。
沖縄防衛局は「N-1」ゲート前のテントなどを19日までに撤去しない場合、「所有権放棄とみなす」として強制撤去を示唆。期限を過ぎた今日、動きがあるものとして警戒中。
沖縄平和運動センター事務局長・山城博治氏が声を張る。
「1000人の機動隊が排除にくる…これは圧殺だ。森を壊すなと整然と抗議しよう。どんなことが起きるかわからない。昨日は福岡県警が不当な検問をしたが、抗議し、これを排除した。辺野古に来た警視庁は尻尾を巻いて逃げた。また来たのなら追い返そう」
20日午前6時。「高江の誇りを守り抜くために、力を合わせてスクラム固めよう♪」腕を組んで、歌いながらゲートを守る市民たち。その後、「ヘリパッド反対! 強制させないぞ! 工事を止めよう!森を守ろう!」とシュプレヒコールが。米軍北部訓練場「N-1」ゲート前でデモ行進がスタートした。
▲東村の伊佐真次村議
東村高江村議の伊佐真次氏がマイクを握った。
「非暴力で、逮捕者も出さずにやっていきましょう。機動隊が待機していますが、負けない気持ちで。運動は10年になりますが、何も(騒動が)ない日も、県内外からのお客さんに現状を学んでもらい、広めてもらうという活動をしてきました」
東京から沖縄へつい最近移住した小口幸人弁護士がスピーチをする。
「警察は何をやってもいいわけではなく、根拠が必要。このタイミングで、この高江で一斉検問をやるなど、誰がどう考えても弾圧行為、違法です。これは任意のもので、交通違反をしていない車を止める権利はない。『通せ』と座り込むのはいい方法です。
ゲート前の車ですが、防衛局は、『みだりに交通を乱すので道交法に基づき撤去する』というが、現状、機動隊のカマボコ車があってもスムーズに通れている。これで、どう交通の邪魔をしているのか疑問。根拠はなく、所有者を捕まえても起訴はできない。
ここのテントについて。この道路は県道。路側帯だからこそ、道路管理者である沖縄県は、行政指導して任意でどくかどうかを待っている。その中で防衛局や海兵隊などが『どける』と言うのは『どちら様ですか?』という話しだ。県が言うならまだわかるが」
沖縄選出の赤嶺政賢衆議院議員が、19日の検問について根拠を問い質したところ、「道を知らない車がウロウロしていると危ないので、情報提供のために検問した」と回答したという。しかし免許証提示を求め、「引き返せ」などとも述べており、説明になっていない。
息子さんを連れてきたママもスピーチ。翁長久美子・名護市議会議員。
「昨日は息子とここに泊まりました。「Xデー」が今日か明日か分かりませんが、もしかしたら今日も泊まることになります。理解ある旦那に家を預けてきましたので、共に頑張りましょう」
県外から抗議にきたという市民が挨拶。兵庫からきたという女性は「参院選では、3分の2議席を改憲勢力に許してしまった。負担を沖縄にまた押し付けることになってしまうことを危惧している」と語った。
沖縄県議団も高江に駆けつけた。
まずは社民会派、照屋大河氏である。
「高江の問題が参院選後に動き出したが、県民の思いを受け、議会の中で取り組みを進めている。今後もヘリパッド建設を認めない戦いを進めていきます」
続けて、県議会会派「おきなわ」から挨拶。
「私たちは政党に属さず、県民のために働くという思いで『沖縄』と名付けました。参院選でもオール沖縄の意思を示したが、その翌日からこれ。沖縄の意思をもっとアピールしよう」
共産党県議団議員が続く。
「10トン以上のトラックが通るには、村長の許可が必要な道路がある。19日現在、通行の申請は来ていない。東村高江の村長は、基本は移設容認だが村長を激励し、みんなの力で止めよう」
午前9時前、機動隊は集まってはいるものの、まだ動きを見せず。それでも「N-1」ゲート前では抗議集会が続いている。県議会では明日、高江ヘリパッド反対の決議が上がるという。
▲「高江ヘリパッドいらない住民の会」安次嶺現達氏
ヘリパッドいらない住民の会・安次嶺現達氏「明日、県議会でヘリパッド反対の決議があがるという。嬉しいが、『やっとか』という思いもある」
安次嶺氏「ヘリパッドはすでに2つ作られた。私の子どもたちは爆音で睡眠不足となり、学校も行けず、今、避難している。子どもにそんな思いをさせていいのだろうか。これ以上作られると、私たちは高江に住めなくなってしまう」
再びデモ行進がスタート。「県民は負けないぞ!」「政府に屈しないぞ!」「森を守るぞ!」「安倍に渡さんぞ!」「米軍基地にさせないぞ!」「弾圧やめろ!」「機動隊は帰れ!」「沖縄くるな!」「地元へ帰れ!」
「N-1」ゲートより約4キロ南で、昨日に続いて再び福岡県警が検問を敷こうとしていたところ、市民らが駆けつけ、「不当」であると抗議。現場は警官、機動隊合わせて100名近く待機していた。
市民の抗議を受け、車両内に撤退した福岡県警。山城氏は「県民の怒りを考えなさい!警察官の矜持はあるのか!?」と訴え、市民らによる機動隊車両に向けた抗議のシュプレヒコールが後に続いた。
▲20日、反対集会に集まった市民の数は100人以上
山城博治氏が警察の違法な検問を指摘。どのように対峙したか、説明した。
「今日も違法な検問がありました。逐一免許証提示を求め、Uターンを求める。これを赤嶺政賢議員が問いただしたところ、『道案内だ』と警察は言っているという。今日この矛盾を突いたら帰って行きました。
明日はここで1000人規模の集会があります。そこで警察が突っ込んでくるとは思えません。工事が22日なので強行排除があるなら、今日の夕方から夜、もしくは未明から朝方ではないか。明日も5時に「N-1」ゲート集合でお願いします」
沖縄の人々の「戦い」は不屈である。この土地を失ったら行き場所はない。二度とこの地を戦場にしてはならない、という死にもの狂いの思いが、思想の壁を超えて人々をつなぎ、座り込みとシュプレヒコールを継続させている。
誰でもいい、ここへ来て、一緒に座ってくれ。沖縄県民(ウチナンチュー)でも、本土の人間(ヤマトンチュー)でも、誰でもかまわない。国籍も問わない。
ウチナンチューとヤマトンチュー、日本人と外国人という対立の垣根は、この場に来て座り込みの輪に加われば消えてしまうのだ。喜んで、沖縄の人々はそうした祈るような気持ちで、戦争と基地に対する反対を叫び続けている。