原発保有国が抱えるリスクは、地震による事故だけではない~ベルギーでは、元原発作業員がISに加入か?――日本でも懸念される、“原発テロ”の可能性 2016.4.21

記事公開日:2016.4.21 テキスト
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(IWJ翻訳チーム、記事構成:山本愛穂)

 熊本地震の発生から1週間が経った。今月14日、熊本県益城町を震源地に起きたマグニチュード6.5の地震発生から、現時点までで、48人の死亡と1100人以上の負傷が確認されている。九州の広域で頻発する地震で、懸念されるのは、現在、日本で唯一稼働中の鹿児島県・川内原発である。

 こうした懸念を他所に、16日、日本政府は、九州電力による川内原発第1、2号機の運転継続を容認する方針を明らかにした。熊本地震の震源地から、川内原発までの距離は、100km以上離れてはいる。しかし、今回の地震は中央構造線沿いに連動して起きており、東西への波及が懸念される。東へ伝播していけば伊方原発、西南へ伝播すれば川内原発の立地である。川内原発といえば、2015年の8月11日以降、原子力規制委員会の指摘にもかかわらず、免震重要棟が新設されないまま稼働されている。この原発が、今後の地震により何らかの事故を起こすことになれば、どれほど甚大な被害が及ぶか想像に難くない。

 熊本地震の発生後、IWJでは九州緊急特派チームが支援物資を持って急遽現地入りし、連日、取材と情報発信を行うとともに、各分野の識者への緊急取材や、岩上安身が京都で立命館大学の高橋学教授に緊急インタビューを行い、今回の地震が「南海トラフ地震の前兆」である可能性を指摘した。南海トラフ地震と原発事故の被害想定等については、以下の取材記事をぜひお読みいただきたいが、本記事では、もうひとつ別の視点から、原発の危険性を検証したい。

 それは、原発保有国が抱える、『原発テロ』のリスクである。

※IWJによる、熊本・大分大地震に関する取材は、以下をご覧ください。こうした動画アーカイブはサポート会員にご登録いただくことで、全て無料で視聴することができます。財政難の折、どうか会員登録への切り替えをご検討ください。

※岩上安身による、緊急インタビューはこちら↓

記事目次

ベルギーで起きた『原発テロ』を匂わす事件~2016年3月22日のベルギー・ブリュッセル同時多発テロ後、放射性物質研究所の警備担当者が射殺されていた!?

 九州中部地震の衝撃で、彼方へ押しやられた感があるが、現地時間3月22日、ベルギーのブリュッセルで、同時多発テロが起きたのは3月22日。まだ1カ月も経っていない。そのベルギーで、不気味な事件が起きていたことをご存知だろうか。

 テロ発生2日後の現地時間3月24日、ベルギー・フルリュス放射性物質研究所の警備責任者が、自宅で死亡しているのが発見された。3月26日付のAFP通信によると、警備責任者は射殺されていたという(注1)。この件に関し、シャルルロワ市の検察当局は、「事件とテロとの関係はない」としており、検察当局も警視庁広報も、事件が捜査中だということで、現在それ以上のコメントを控えていると、3月26日付のニューヨーク・タイムスなどが報じた (注2)。

 この事件と、同時多発テロ事件との関連性が疑われる“サイン”は、他にも見つかっている。

 実は2015年11月13日に起きたパリでの同時多発テロの捜査の際に、ベルギーの原子力当局高官の行動を撮影した10時間におよぶ動画が発見されているのだ(注4)。撮影したのは、パリ同時多発テロに関与した容疑者であると見られ、テロリストが原発を狙っていた有力な「証拠」とみなされている。

 実際に、テロが発生したブリュッセルから80kmほどの距離にあるティアンジュ原発は、テロ発生後に必要最低限以外の職員たちを避難させており(注3)、これは「核テロ」の可能性を真剣に憂慮した結果であると考えられる。

 こうした国際的テロ組織による核テロへの懸念が強まるなかで、現地時間3月31日から4月1日、米国ワシントンにおいて、第4回目の核安全保障サミットが開催され、56カ国と機関が参加した。同サミットで採択されたコミュニケでは、核物質と核関連施設の安全確保が、国家の基本的な責任であることが確認され、参加国であるベルギーも、サイバー対策などの対策費として30万米ドルをIAEA核セキュリティ・ファンドに拠出すると約束した(注5)。

 しかし、これで、ベルギーにおける”原発テロ”への懸念が払拭されたとは到底言いがたい。そして、これは、現在54基の原発を抱える日本にとっても他人事ではないのだ。

テロとの関わりを示唆する事件は、すでに起きていた!?~2012年、ベルギーのドエル原発・元従業員2名がISに加入――パリ同時テロの首謀者と同じ旅団に参加か

 実は、ベルギーの原子力施設では、以前からテロとの関連性を示唆するような事件が頻発していた。

 2012年にはドエル原発の従業員2人がシリアでイスラム武装勢力に加入し、ISに忠誠を誓うにいたった。2名はともに、パリ同時テロの首謀者とされるアブデルハミド・アバウド容疑者と同じ旅団に所属していたとされている。

 その内の1名は戦死したとされているが、もう1名は、2014年にテロ関連とみられる犯罪で逮捕され、昨年釈放されたと報じられている(注6)。彼らがドエル原発について、IS側になんらかの情報提供をした可能性は否めない。

▲パリ同時テロの首謀者とされるアブデルハミド・アバウド容疑者(ウィキメディア・コモンズより転載)

▲ベルギーのドエル原発 2016年1月28日(ウィキメディア・コモンズより転載)

核テロで、メルトダウンが起こる日~「恐ろしいのは、内外からの攻撃で冷却装置が止まること」!? 2014年、何者かがベルギー・ドエル原発第4号機に侵入。運営会社広報担当も「意図的な妨害行為」と認めたが…

 ドエル原発は、過去にも「テロ未遂事件」に見舞われている。

(…会員ページにつづく)

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「原発保有国が抱えるリスクは、地震による事故だけではない~ベルギーでは、元原発作業員がISに加入か?――日本でも懸念される、“原発テロ”の可能性」への2件のフィードバック

  1. 清沢満之 より:

    【広瀬隆】全国のみなさま・・・熊本大地震に関するデマについて
    http://hibi-zakkan.net/archives/47368680.html

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    原発保有国が抱えるリスクは、地震による事故だけではない――日本でも懸念される、“原発テロ”の可能性 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/298459 … @iwakamiyasumi
    日本政府は原発へのテロや武力攻撃の危険性に対し、そうした事態の想定すらしていない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/909185293386899456

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