11月21日(金)、衆議院が解散した。
安倍総理は、その日の夕方に開かれた記者会見で、「この解散は、アベノミクス解散だ」と宣言。「私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか、本当に他に選択肢があるのか、国民に聞きたい」と語り、アベノミクスの是非が今回の選挙の争点であると強調した。
しかし、アベノミクスだけが選挙の争点なのだろうか。問われるのが安倍政権の信任ならば、他の政策への賛否も問われてしかるべきではないだろうか。
2012年末に発足した第2次安倍政権は、まさに国論を2分する多くの政策について、圧倒的な数の力にものをいわせ、時にはNHKをはじめとする大手メディアを巧みに利用し、少数派の「正論」をねじ伏せて、次々と断行してきた。
国民の「知る権利」を侵害する恐れのある特定秘密保護法の制定、日本の国富をまるまる米国に譲り渡すTPP交渉への参加、2期連続のGDPマイナスをもたらした消費税増税、自衛隊を米軍の傭兵として差し出すための解釈改憲による集団的自衛権行使容認、河野談話見直しの動きを中心とする歴史修正主義の台頭と日中・日韓関係の悪化など、あげれば枚挙にいとまがない。
これらはいずれも、今回の解散総選挙において、重要な争点であるはずである。しかし、政府・自民党は、今回の解散をあくまで「アベノミクス解散」であると位置づけ、その他の争点を、意図的にぼやかそうとしている。菅義偉官房長官は、11月19日の記者会見で、集団的自衛権行使容認や特定秘密保護法について、「いちいち信を問うべきではない」などと述べ、争点にはならないとの認識を示した。
※集団的自衛権争点でない 菅官房長官、秘密法も(共同通信、11月19日【URL】http://bit.ly/1uvhTlO)
しかし、自民党のすべての議員が、こうした安倍政権による暴走を、追認していたわけではない。
単騎、盲従を拒んだ議員がいた。村上誠一郎衆議院議員である。
村上誠一郎衆議院議員は、国会に特定秘密保護法が上程された際も、自民・公明間で解釈改憲による集団的自衛権行使容認が議論された際も、ひとり、自民党の中で、真っ向から反対する論陣を張った。
自らを「ザ・自民党」と称する村上議員が、なぜ、政府と自民党執行部が強引に成立に持ち込もうとした、特定秘密保護法と解釈改憲による集団的自衛権行使容認に反対したのか。
選挙選が実質的に幕を開けた今、安倍総理の言う「アベノミクス解散」という言葉に惑わされず、争点をしっかりと見極めるためにも、必読のインタビューである。
集団的自衛権行使容認に反対する理由と、政治家としての覚悟
▲岩上安身の取材に応じる村上誠一郎氏(右)
岩上安身(以下、岩上)「ジャーナリストの岩上安身です。本日は、いまや時の人といいましょうか、たいへんインパクトのあるゲストをお招きいたしました。自民党衆議院議員の村上誠一郎さんです。村上先生、よろしくお願い致します」
村上誠一郎議員(以下、村上・敬称略)「よろしくお願いいたします」
岩上「村上先生には、以前、ずっと昔の話なんですけれども、文藝春秋に『二世の時代』というルポを書くときに、取り上げさせていただいた機会があったんですが、それ以来、すれ違いになってしまいまして、いつかお会いしてお話をうかがいたいなと思っておりました。
また、先般、特定秘密保護法に反対されたときに取材の申し込みをさせていただいたんですけれども、お忙しいということで、残念ながらその時は取材の機会をいだけませんでした」
村上「どうも失礼しました」
岩上「いえいえ。いま、先生は、集団的自衛権の行使容認に、自民党のなかでただ一人、反対論陣を終始一貫張り続けておられ、その姿勢に、全国から、感動した、感服した、あるいはいろいろ考えさせられたという声があがっています。
私どもIWJの、先生に関連した記事についても、アップした動画、あるいはアップしたテキストが異例の回数で見られたり、あるいは読まれたりしていまして、注目度が大変高いのです。こうした中で、今回は取材をお受けいただくことができ、本当に感謝申し上げます。よろしくお願いいたします」
村上「よろしくお願いいたします」
岩上「今日は、お時間がだいぶおありとのことですので、たっぷりお話をうかがいたいと思っております」
村上「なんでも聞いてください」
岩上「ありがとうございます。そこで、おうかがいしたい論点ですが、いくつかあります。
まず、集団的自衛権容認をめぐる手続きの問題、このようなものをこういうやり方で変えていいのかという点、また、憲法とはなんぞや、立憲主義とはなんぞや、という問題です。
それから、集団的自衛権と個別的自衛権の中身の問題、安全保障の中身の論議もあるだろうと思います。
あるいはその法律論とは別に、安全保障環境の変化といわれるものが、集団的自衛権行使の容認を急ぐ背景としてあげられますけれども、その実態はどうなのか、そこで、何か我が国なりにすべきことがあるとしたら、それは何なのか。こうした点についても、それぞれ少し区切りながら、お考えをうかがってまいりたいと思います。
それでは最初に、ストレートにお聞きしたいのですが、今回、閣議によって憲法の解釈を変更しようとした、あるいは、したと称していることについて、これは、許されないと村上先生はおっしゃっておられるわけですが、なぜ許されないのでしょうか?」