2010年1月15日(金)、岡田外務大臣オープン記者会見の模様。1月12日に行われたハワイでの岡田外相とクリントン長官との日米外相会談をうけ、いわゆる「日米同盟の深化」についてその定義や見解を述べた。
2010年1月15日(金)、岡田外務大臣オープン記者会見の模様。1月12日に行われたハワイでの岡田外相とクリントン長官との日米外相会談をうけ、いわゆる「日米同盟の深化」についてその定義や見解を述べた。
前回のエントリーの続き。
1月15日岡田外相オープン記者会見。12日にクリントン国務長官との会談を終えて帰国したばかりの岡田外相に、どのような会談となったのか、質問した。それに対して、
日米外相会談は、「静かに」行われた。あるいは5月までは、今の「静けさ」は続く、という見通しを岡田外相は示した。
「静か」という言葉を、岡田外相は二度用いて、非常に控え目ではあるけれど、ついこの前までの、日米同盟が今にも崩壊するのではないかというセンセーショナルな「報道の嵐」が収まったことを示した。「アメリカ側のスタンスも従来から変わらない」、つまり変わったのは日本のメディアの姿勢なのだ、ということもにおわせた。
結びには、「何度も強調するが」と言いながら、アメリカの姿勢を日本の記者たちに伝えても、なかなか伝わらないと、これもまた「静か」な口調で、苦言も呈した。
マスコミのこの2,3ヶ月間におよぶ興奮と突然の沈静化が、さしたる理由のない、「気分」的な波なのか、何か思惑あっての操作なのかは、今はまだ、確実なことはいえない。
しかし、必要以上に日米間の危機を煽ることは、結局は国益を損なうことは間違いない。悪気のないいたずらかどうかはともかくとして、「日米安保」「日米同盟」という外交問題を担保にした危険なゲームはやめてもらいたいものだとつくづく思う。
日米関係について、他の記者達から関連質問が続く。
上杉「フリーランスの上杉隆です。
先ほど岩上さんからの質問があったとおり、同じなんですが、ハワイの開かれた日米外相会談に出席できなかったので、その件について、もう一度、お尋ねしたいんですが、先週の会見で、大臣は『密約問題について、意見交換というか意見報告はする』とおっしゃってましたが、結果として密約問題についてクリントン国務長官と何か意見を交換されたのでしょうか」
岡田「密約についても一言、私から言いました。今、第三者による検証を行っているということと、その作業は若干遅れ気味であるということも申し上げました。それから、この問題は、ほとんどは、アメリカで、法に基づいて情報公開されている話であると。したがってあまり目新しい話、アメリカから見ればないかもしれないけれども、日本としては今まで、そういった密約はないというふうに言ってきたことを、今、事実はどうだったのか、ということを明らかにしようとしているんだと、いうことであります。このことが日米同盟にとって何かマイナスの影響を及ぼすということがないように、事前によく、少なくともですね、連絡をすると、緊密に連絡していくということは申し上げました」
上杉「クリントン米国務長官は、それに対してどのような言葉を」
岡田「私の記憶ではあまりこのことにコメントがなかったような気がするのですけれども。うなずいていたぐらいじゃないですかね」
ブルームバーグ 坂巻「ブルームバーグニュースの坂巻と申します。
同盟深化についてなのですけれども、大臣はしばしば『日米同盟が今後30年、50年と持続可能なようにしたい』ということをおっしゃっているのですが、通常、『持続可能』というと、景気が先割れするのではないかというような、持続できないんじゃないかという想定をしやすいのですが、それは例えば地域の情勢に何か同盟が持続できなくなるような状況を考えていらっしゃるのか、それとも単に政権交代とかそういうことがあっても、ということを考えているのか、どういうコンテキストでこの『持続可能』という言葉を使っていらっしゃるのかご説明ください」
岡田「普通、同盟というのはそう永続するものではないんですね。環境は変わりますし、お互い細心の注意と多大な努力を払って同盟というのは持続できるものだと基本的にはそう考えております。しかし、日米同盟が果たしている役割は非常に重要ですので、私は30年、50年持続可能なものにしたいと、その思いを率直に述べたところです。
私は30年、50年、同盟が持続可能なものになるように、その深化のための議論もしたいということを、9月にクリントン米国務長官と初めてお目にかかった時に申し上げた訳ですけれども、今日たまたまアメリカンエンタープライズ研究所(AEI)の所長がお見えになって、そこに同席されていた方が、私がですね、数年前に『日米同盟を50年間持続可能なものにしたい』ということを述べていたと言われていまして、『ああ、自分の言っていることは変わっていないのだな』と改めて確認をしたところです」
「日米同盟の深化」とは、いったい何か? この点を岡田外相にはっきり聞かなくてはならない。私だけでなく、おそらくその場にいた記者の多く、そして国民の大半は「日米同盟の深化」という言葉が指し示すものがいったい何か、よくわからないままであると思われる。私はここで、再び挙手して、質問を求めた。
http://youtu.be/LMZVNITz0Aw
岩上「フリーの岩上です。
先ほど、同盟の話が出ましたが、同盟の深化という言葉、これは岡田外相になる前に、ずっと前から使われている言葉ではあります。何となく我々、わかったような気にはなっていますけれども、よく考えると、その意味するところが、ちょっと不確実なところもある。同盟を深めていくというのは、一体どういう方向に向かっていくことをさすのでしょうか?
前回、質問させていただきましたけれども、日米安保と日米同盟というのは、厳密に言うとニュアンスが違うということも質問させていただきました。日本を守るという方向に特化していくということが、もしかしたら日米同盟を深化させることなのか、あるいはアメリカが広く世界に展開していく戦略に、寄り添って、アメリカについていくということが、同盟の深化なんでしょうか。方向性はいろいろあると思うんですが、同盟を深化させるということの定義を、教えていただきたいと思います」
岡田「ここは色々、議論があるところですね。ですから、今、言われたこと以外にも、日米同盟という中で、狭い意味での安全保障以外の部分にさらに、今のところそうなんですが、日米同盟という名の下に、先ほど言った、地球温暖化とかですね、核の問題とか、色々と議論しているわけですが、そういうものをさらに広げていくという考え方もあると思います。
同盟ということを広く考えればそういうことですけれども、ここは意見がまだ、おそらく日本政府の中でも、あるいはアメリカ政府もそうかもしれません、必ずしも、まだきちんと固まっていない。同盟の骨格の部分というのは、安全保障なので、そこのところをよりしっかりと踏み固めるべきだと。こういう方向性の議論と、もちろん安全保障が骨格であることは間違いないけれども、より幅広いものとして日米同盟を考えていくべきだと、こういう議論と、両方ありうるんだというふうに思います」
岩上「外相ご自身は、どういうふうに定義されてるんですか」
岡田「今はあんまり、自分の意見を言ってしまわない方が、いいというふうに思います。
基本的に僕は、両方、必要だと思うんですけれどね。しっかりと、日米安保のところをより、しっかりとしたものにするということと、しかし同盟というのはそれだけではないと。もう少し幅広いものとして、考えて、より広範な範囲での日米協力ということを考えていくと。それは何も軍事面の問題にとどまるものではないと。そういうふうに思ってますが」
岩上「ありがとうございました」
岡田外相の、日米同盟を軍事以外の分野に広げていく、という言葉は、どう解釈したらいいか。これについては、「日米同盟の正体」を著した元外務相国際情報局長の孫崎享氏へのロングインタビューをのちほどアップし、同氏の分析を手がかりにしながら、改めて論じていきたい。