日刊IWJガイド・非会員版「シリアのイラン大使館へのミサイル攻撃に対し、イランが『国連憲章第51条にもとづく正当防衛』としてイスラエルに史上初の直接攻撃!」2024.4.15号~No.4201


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~4月1日のイスラエルによるダマスカスのイラン大使館へのミサイル攻撃に対し、イランが「国連憲章第51条にもとづいた正当防衛」として、イスラエルに史上初の直接報復攻撃!「重要な場所の破壊に成功」と主張するイランに対し、イスラエルは「合計300発以上の飛翔体の99%を撃墜」と発表! 迎撃には米英仏に加え、ヨルダン軍も参加! バイデン米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相に「イランへの攻撃作戦に参加せず、作戦の支援もしない」と伝えるも、「G7首脳を招集し、イランの大胆な攻撃に対する、統一した外交対応を調整する」と、相変わらずのダブルスタンダードの表明!

■経済的にピンチのIWJへの応援・ご支援をお願いします!! IWJへのご寄付・カンパの月間目標額達成率は、先月3月は162万2511円、目標額の41%の達成率でした! 11月から3月までの5ヶ月間は連続して目標に未達で、不足額は合計972万3789円にもなります! 今後も目標未達となると、IWJは活動できなくなる可能性が出てきます! 4月こそは、月間目標額の400万円に届きますよう、また、できれば目標額以上のご支援をいただき、今期の1000万円近い目標不足分を少しでも減らすことができるよう、有料会員登録と、ご寄付・カンパで、財政難のIWJへの強力なご支援をよろしくお願い申し上げます!

■【中継番組表】

■【本日のニュースの一撃!】

■【第1弾! 英国統合軍司令部の元司令官が、「ウクライナは戦意を失い、2024年内に、ロシアに敗北する深刻なリスクに直面している」と警告! 英シンクタンク・英国王立サービス研究所は、ロシアはハリコフ、ドンバス、ザポロージエで前進する可能性があると指摘!】ロシアは、自分で敷いた地雷原のラインに束縛されていて、西へと攻め込めないとも分析するが、それはロシアが、西へ西へと侵略し、新ロシア帝国を作ろうとしているという西側の妄想による、自縄自縛! ロシアの滑空爆弾による空爆の前に、ウクライナはなすすべなし!(『BBC』、2024年4月13日)
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■はじめに~4月1日のイスラエルによるダマスカスのイラン大使館へのミサイル攻撃に対し、イランが「国連憲章第51条にもとづいた正当防衛」として、イスラエルに史上初の直接報復攻撃!「重要な場所の破壊に成功」と主張するイランに対し、イスラエルは「合計300発以上の飛翔体の99%を撃墜」と発表! 迎撃には米英仏に加え、ヨルダン軍も参加! バイデン米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相に「イランへの攻撃作戦に参加せず、作戦の支援もしない」と伝えるも、「G7首脳を招集し、イランの大胆な攻撃に対する、統一した外交対応を調整する」と、相変わらずのダブルスタンダードの表明!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 4月1日にイスラエルが行った、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部へのミサイル攻撃に対し、イランの革命防衛隊は4月13日、史上初めてイスラエルに対し、ミサイルとドローンによる直接攻撃を行いました。

※【イスラエルがシリアの首都ダマスカスで、イラン大使館を空爆! 革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」の上級司令官・ザヘディ准将ら7人を殺害!】イランは「あらゆる国際義務と国際条約への違反」と指摘し、「断固とした対応」を表明! イスラエルは米国を巻き込んでの戦争拡大を狙ってシリアでイラン施設を攻撃か!? イランは、イスラエルによる度重なる軍事的挑発に耐えられるか!?(『ブルームバーグ』、2024年4月2日)(日刊IWJガイド、2024年4月3日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240403#idx-6
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53361#idx-6

 4月12日のこの日刊IWJガイドでもお伝えしましたが、イランの最高指導者ハメネイ師は、4月10日、ラマダーン月明けの祝祭イード・フェトルの礼拝で「外交公館への攻撃は、その国の領土への攻撃だとみなされるのが世界の一般的な認識だ。シオニスト政権はこの犯罪について罰せられる必要があり、実際に罰せられるだろう」と表明していました。

※はじめに~たび重なるイスラエルからのテロ攻撃に、堪忍袋の尾が切れたイランが、ついにイスラエルへの報復攻撃を決意か!? 中東戦争は世界戦争へ!? イランの攻撃は時間の問題! イスラエルは反撃を意思表示! 米国は鉄壁の支持をイスラエルに約束! 日本はエネルギー資源供給国を敵に回すな!!(日刊IWJガイド、2024年4月12日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240412#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53395#idx-1

 4月13日付け『アルジャジーラ』は、イランの革命防衛隊が13日、「トゥルー・プロミス作戦」の名前で、ドローンとミサイルを発射したと、声明を発表したことを報じています。

※Iran launches air attack on Israel, with drones ‘hours’ away(ALJAZEERA、2024年4月13日)
https://www.aljazeera.com/news/2024/4/13/israeli-army-says-iran-has-launched-drones-at-israel

 この『アルジャジーラ』の記事によると、革命防衛隊は声明で「シリアのイラン総領事館を標的としたシオニスト団体(※イスラエル政府)の犯罪に対抗し、無人機とミサイルを使った作戦を開始した」「作戦は占領地(※シオニストユダヤ人によるパレスチナの占領地、すなわちイスラエル)の特定目標を攻撃するために、数十のミサイルと無人機で実行された」と発表したとのことです。

 一方、イスラエル国防軍(IDF)は、イランが「無人機170機、巡航ミサイル30発、弾道ミサイル120発を含む合計300発以上の飛翔体を発射し、その99%が防空網によって迎撃された」と主張しています。

 4月14日付け『タイムズ・オブ・イスラエル』は、IDFスポークスマンのダニエル・ハガリ少将が、13日夜11時に、最初にイランからの攻撃を確認し、「ミサイルのほとんどは、長距離防空システム『アロー』によって迎撃された」「ミサイルは、主にイスラエル領空外で撃墜された」「戦闘機が数十発の巡航ミサイルや数十機のドローンも迎撃した」「無人機や巡航ミサイルは一機もイスラエル領空に侵入できなかった」と発表したと報じています。

※Iran fires some 300 drones, missiles at Israel in first-ever direct attack; 99% downed(THE TIMES OF ISRAEL、2024年4月14日)
https://www.timesofisrael.com/iran-launches-wave-of-drones-at-israel-in-first-ever-direct-attack-idf-braces-to-intercept/

 これに対して4月14日付け『読売新聞』は、革命防衛隊が14日未明に2回目の声明を発表し、「イスラエル軍の『重要な場所』」に対する「ミサイルとドローン(無人機)による攻撃で『破壊するのに成功した』と主張した」と報じています。

※イランの革命防衛隊「標的はイスラエル軍施設」…ミサイルとドローン攻撃で「破壊に成功」(読売新聞、2024年4月14日)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240414-OYT1T50040/?from=smtnews

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■経済的にピンチのIWJへの応援・ご支援をお願いします!! IWJへのご寄付・カンパの月間目標額達成率は、先月3月は162万2511円、目標額の41%の達成率でした! 11月から3月までの5ヶ月間は連続して目標に未達で、不足額は合計972万3789円にもなります! 今後も目標未達となると、IWJは活動できなくなる可能性が出てきます! 4月こそは、月間目標額の400万円に届きますよう、また、できれば目標額以上のご支援をいただき、今期の1000万円近い目標不足分を少しでも減らすことができるよう、有料会員登録と、ご寄付・カンパで、財政難のIWJへの強力なご支援をよろしくお願い申し上げます!

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 しかしながら、IWJの財政は、本当に厳しい状況にあります!!

 3月は31日間で、135件、162万2511円のご寄付・カンパをいただきました。ご支援してくださった皆さま、本当にありがとうございます!

 しかしながら、この金額は、月間目標額の41%の達成率にとどまっています。

 今期第14期、IWJへのご寄付・カンパは、11月から3月まで、5ヶ月連続で目標金額に到達しておらず、この5ヶ月間の不足額の合計は、972万3789円にもなってしまいました。

 もし、4月も目標未達となると、年の半分が未達確定となり、財源不足は深刻な上にも深刻で、IWJは、本当にこの先、活動できなくなってしまう具体的な可能性が出てきました。

 4月のご寄付・カンパの状況は、4月1日から12日までの12日間で、47件、288万1000円です。

 これは、月間目標額の72%に相当します。ご支援してくださった皆さま、本当にありがとうございます!

 4月こそは、月間目標額の400万円に届きますよう、また、できれば目標額以上のご支援をいただき、積み重なっている今期の1000万円近い目標不足分を少しでも減らすことができるよう、有料会員登録と、ご寄付・カンパで、財政難のIWJへの強力なご支援をよろしくお願い申し上げます!

 ぜひとも、サポート会員様におかれましては、会員をそのままご継続いただき、一般会員様におかれましては、サポート会員へのアップグレードをお願いします!

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店番号 022
預金種目 普通
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 どうぞ、皆さま、権力に対し、一切忖度しないで真実をお伝えする独立メディアIWJの存在意義と必要性について、多くの人に口コミでも、SNSを通じてでも、広めてください!

 岩上安身拝


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◆中継番組表◆

**2024.4.15 Mon.**

調整中

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◆中継番組表◆

**2024.4.16 Tue.**

調整中

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

新潟・柏崎刈羽原発への燃料装填が始まっている!「まだ原発を続けるとは、なんという脳天気」~4.12原発反対八王子行動
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/522491

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■【本日のニュースの一撃!】

■【第1弾! 英国統合軍司令部の元司令官が、「ウクライナは戦意を失い、2024年内に、ロシアに敗北する深刻なリスクに直面している」と警告! 英シンクタンク・英国王立サービス研究所は、ロシアはハリコフ、ドンバス、ザポロージエで前進する可能性があると指摘!】ロシアは、自分で敷いた地雷原のラインに束縛されていて、西へと攻め込めないとも分析するが、それはロシアが、西へ西へと侵略し、新ロシア帝国を作ろうとしているという西側の妄想による、自縄自縛! ロシアの滑空爆弾による空爆の前に、ウクライナはなすすべなし!(『BBC』、2024年4月13日)

 英国統合軍司令部の元司令官であるリチャード・バロンズ大将は、『BBC』の取材に対し、「ウクライナは2024年内にロシアに敗北する深刻なリスクに直面している」と警告しました。『BBC』は、13日付で、このバロンズ大将の談話を発表しました。

 バロンズ大将は、「ウクライナはまだその時点には至っていない」と苦しい留保をつけながらも、ウクライナが敗北するとしたら、それは「ウクライナ人が、勝てないと感じるようになるかもしれないからだ」と述べています。

 そして、「その(勝てないと感じる)ような状況になったとき、人々はそれ以上戦い、死ぬことを望むのだろうか」とも続けています。

 実際には、「まだウクライナは勝てないと感じる時点に至っていない」どころではありません。

 4月10日付の、日刊IWJガイドで報じた通り、ウクライナでは、銃をとって戦う意志のある者は、今や人口のわずか8%しかいません。しかもこの調査は、外国によるものではなく、ウクライナ自らによるものです。ウクライナ国民は、とっくに音をあげているのです。

※【西側がいくら武器を送りつけても、武器を取ってロシアと戦う意思があるウクライナ国民は、わずか8%しかいない! しかも、ウクライナ軍にはもう兵士がいない!】それでも、ウクライナ軍部は50万人の兵士増強をもくろみ、14歳の少年まで拉致徴兵! ゼレンスキー大統領は男性の徴兵最低年齢を27歳から25歳に引き下げる法律に署名! さらに、ウクライナ軍の旅団は50代の兵士で占められ、71歳の戦車兵も! 女性も例外なく徴兵の方向へ!(『RT』、2024年4月2日ほか)(日刊IWJガイド、2024年4月10日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240410#idx-6
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53391#idx-6

 これが、欧米日の、「G7大本営発表」プロパガンダ報道では、まったく報じられない、ウクライナ国民の現実です。

 ウクライナ軍は、西側の主力級戦車や昨年の「反転攻勢」の大失敗で、領土を取り戻すことができませんでした。そして現在、ウクライナの軍備は、弾薬、兵力、防空網が絶望的に不足している状況です。

バロンズ大将「大砲や弾薬で5対1の優位に立つロシア軍は、最前線に殴り込みをかけ、新型兵器を使用し、余剰人員を補強している」。

 ウクライナ紛争に深く関与してきた英国の内側から、ウクライナの敗戦がこれほどはっきりと語られたのは初めてではないでしょうか。

 4月7日付『フィナンシャル・タイムズ』によると、ロシア軍が今年3月頃から、大量に使用している「FAB滑空爆弾」は、ソ連時代の「ダム爆弾(航空機から投下された後、水面を跳ねるように進み目標物を破壊する反跳爆弾)」をリフォームし、安価なポップアップ式の翼と、衛星ナビゲーションシステムを追加した爆弾です。

 ドネツク東部地域で戦っているウクライナ側の兵士は、「爆弾1発でいくつかの建物を破壊できるのに、数十万発の砲弾を使うよりもはるかに安い」と述べています。

 「砲弾よりもはるかに安い」というウクライナ側の兵士のこの証言は重要です。

 IWJでは、2023年9月3日のジョン・ミアシャイマー教授の論文を、号外として仮訳し、あたかもウクライナが優勢で、ロシアが劣勢かのような宣伝がなされている時に、砲撃力に勝るロシアが勝利するという見通しをお伝えしました。

※【IWJ号外】ジョン・ミアシャイマー教授の9月3日付最新論文『負けるべくして負ける~2023年のウクライナの反攻』全文仮訳! 第1回「西側は消耗戦回避のためウクライナ軍に古典的な電撃作戦を実行することを望んだ」! 2023.9.5
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/518338

※【IWJ号外】ミアシャイマー教授の最新論文『負けるべくして負ける』仮訳! 第2回「マスメディアが伝えない『反転攻勢』の現実! ウクライナ軍の電撃戦略に対して深層防御戦略を採るロシア軍の優位性!!」 2023.9.6
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/518350

※【IWJ号外】ジョン・ミアシャイマー教授の9月3日付最新論文『負けるべくして負ける~2023年のウクライナの反転攻勢』全文仮訳! 第3回「反転攻勢」の幻想を打ち砕き悲惨な戦後まで予言! 2023.9.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/518364

 実際、砲撃力そのものだけでなく、大砲と砲弾を、自国の国営工場で量産できているロシアと、そのような工業力はなく、武器も弾薬も資金も外国からの施しに頼り、人員だけを自前で無慈悲に動員して、いたずらに兵力を損耗してきたウクライナに、正邪や善悪とは無関係に、強弱、勝敗という軸で考えてみて、勝ち目はどう考えてもないと、我々、IWJは伝え続けてきました。

 そこに、さらに加えて、砲弾よりも、安価で、確実で、破壊力のある滑空弾を、この戦時中に開発して、実戦投入し、ウクライナ軍を圧倒し始めたのです。これは、ウクライナ軍の敗北まで、時間が加速されたようなものです。

 「FAB滑空爆弾」は、500キロ(FAB-500爆弾)から1.5トン(FAB-1500爆弾)の爆発物を60キロ以上運び、最大幅20メートル、深さ6メートルのクレーターを残すとされています。

 別のウクライナ側の兵士は、「FAB滑空爆弾」の破壊力は、「非常に恐ろしく、非常に致命的」で、「1キロ離れていても、爆風で建物のドアが蝶番から剥がれてしまう」と述べています。

 ウクライナのドミトロ・クレバ外務大臣は、『フィナンシャル・タイムズ』に対し、ウクライナの兵士達は、「我が国の陣地を壊滅させる誘導滑空爆弾による大規模な、そして日常的と言っていいほどの攻撃を受けている」と語っています。

クレバ外務大臣「滑空爆弾は本質的に非常に単純なので、妨害することも、それらから隠れることもできない。滑空爆弾から、身を守る唯一の方法は、この爆弾を搭載した爆撃機を撃墜することだ」。

 この発言も、重要です。

 ロシア軍の爆撃機を撃墜できる、高性能の高射砲や、戦闘機、地対空ミサイル、あるいは「機能している」とずっと宣伝をされてきた米国製のミサイル防衛網などがすべて健在で、ウクライナ軍に備わっていて、上空をロシア空軍に思うままにさせないのであれば、「唯一の方法」である、「爆撃機の撃墜」をすぐに敢行すればいいのです。

 しかし、実際には、ウクライナの上空はロシア空軍が、すでに制空権を握っており、もはや、防空のすべはない、ガラ空き状態となっています。プーチン大統領もたびたび、制空権を握っていると発言しており、停戦交渉をロシアは望んでいると発言しています。

 この点については、稿を改めて、詳述し、滑空爆弾に話を戻します。

 ウクライナ国防当局者らによると、ロシアは今年2024年だけで、誘導滑空爆弾を約3500発を攻撃に用いており、その使用数は、2023年に比べて16倍に増加しているということです。

 『フィナンシャル・タイムズ』は、戦争研究所(ISW)の報告を参照し、特に、ロシア軍は、2月中旬のアヴディーイウカをめぐる攻防で、数百発の滑空爆弾攻撃を使用し、ウクライナ軍を撤退させた、と伝えています。

※Military briefing: Russian ‘glide bombs’ pound Ukrainian troops and towns (Financial Times、2024年4月7日)
https://www.ft.com/content/0d6612f2-5d59-4ce2-bb2f-592309991430

 バロンズ大将は、「この夏のある時点で、ウクライナの防衛線を突破するために、小手先の戦果を上げる以上のことをする、ロシアの大規模な攻勢が予想される」「もしそうなれば、ロシア軍がウクライナ軍を突破し、ウクライナ軍が阻止できない地域に侵入する危険性がある」と、警鐘を鳴らしました。

 『BBC』のフランク・ガードナー安全保障特派員は、英国王立サービス研究所(Rusi)の陸戦上級研究員であるジャック・ワトリング博士に、ロシア軍がこの夏に、大規模攻勢をかける可能性がある地域を訪ねています。

 ワトリング博士は、ハリコフ州、ドンバス(ルガンスク州とドネツク州)、ザポロージエ州の3つの地域を、ロシア軍の攻勢が及ぶ危険性のある場所としてあげています。

 ハリコフ(ハルキウ)州の州都ハリコフは、ウクライナ第2の都市であり、ハリコフ州はロシア国境に接しています。ロシア側としては、ウクライナ軍によるロシア領内へのテロ攻撃を防ぐために、ハリコフを支配下に置くことは重要です。

 ワトリング博士は、「ハリコフは確かに脆弱」であり、ウクライナは、ドローン偵察機、巡航ミサイル、弾道ミサイルの致命的な攻撃を防ぐのに十分な防空態勢をとることができない、と指摘しました。

 ガードナー特派員は、「ハリコフが陥落すれば、ウクライナ軍の士気と、ウクライナの経済にとって壊滅的な打撃となるだろう」と分析しています。

 第2の候補地であるドンバスは、もともと、2022年2月24日始まった「特別軍事作戦」の目的であるロシア語話者、ロシア系住民の保護にとっては重要な場所です。

 アゾフ湾沿いの港湾都市マリウポリから、セベロドネツク、バフムート、アウディーイウカなどの激戦地は、このドンバス地方の諸都市です。

 ウクライナとNATOが、2014年のユーロマイダン・クーデター以降、ロシアが武力介入をためらっている8年の間に、これらの都市に強固な要塞を築いて、分離自治を求めるルガンスク人民共和国やドネツク人民共和国と戦い、ロシア軍を待ち受けてきたのです。

 2022年9月、ロシアは、住民投票によって、ルガンスク州、ドネツク州、ザポロージエ州、ヘルソン州をロシアに併合しましたが、その時点ではまだ、4州の全域がロシア軍の支配下にあったわけではありません。

 ルガンスク州の一部、ドネツク州・ザポロージエ州の北部、ヘルソン州の一部(住民投票後、ヘルソン州のドニエプル川西岸からは、カホフカダム決壊のリスクを避けてロシア側が自ら引き上げた)などはまだ、ウクライナ軍の支配下にありました。

 上記『BBC』によると、在欧米軍司令官のクリストファー・カボリ大将は、米国がウクライナに武器と弾薬を大幅に投入しない限り、戦場では10対1で劣勢に立たされると述べています。

 カボリ大将は、米国の将軍らしく、武器と弾薬のことしか言いませんが、兵士がいなければ、戦争は、どうにもなりません。米軍兵士も、欧州各国の兵士の投入もできなければ、勝敗は、時間の問題です。

 兵員と武器・弾薬の量で圧倒的に勝るロシア軍は、時間の経過とともに西へ西へと支配域を広げていく可能性があります。

 もちらん、ロシア語話者が多い地域はロシアに併合し、住民を保護し続けるでしょうが、ウクライナ語話者が多数の地域にまで、一時的に支配地域を広げたとして、ロシアがどこまでその支配を維持したいのか、それはまた、別の問題です。

 ロシア軍が侵攻して支配下に置く可能性が高い第3の候補地は、ザポロージエ原発を擁する、ザポロージエ州です。

 ザポロージエ原発は、南部一帯に電気を送っているので、その守備は重要です。

 ちなみに、このザポロージエ原発をロシア軍が確保して守備しているのに、ロシア軍が砲撃していると、散々、ウクライナも西側諸国の政府と主要メディアは、愚劣な虚偽の宣伝を繰り返し、いまだにそのデタラメを訂正していません。

 ザポロージエ原発を含めて、この地を安定的に支配下に置かないと、いつ、ウクライナ側の核テロに見舞われるか、わかりません。ここを守ることができなければ、クリミアも失います。それは、ロシアにとっては受け入れ難いことです。

 ガードナー特派員は、「スロヴィキン・ライン(ロシアが築いた防衛線)は、3重の防御線からなり、世界最大かつ最も密集した地雷原が張り巡らされて」いるため、「強固な防衛線は、今やそこからのロシアの進行を複雑にしている」と分析しています。スロヴィキン・ラインを越えるには、自ら築いた地雷原を進まなければならないからです。

 ワトリング博士は、「この(ロシアの)攻勢は、どちらの側がどうなろうと、紛争を決定的に終わらせるものではない」という前提から、ロシアの目的は「領土」よりも、「(ウクライナ人の間に)絶望感を生み出そうとすること」だと分析しています。

 バロンズ大将は、「最もありうる結末は、ロシアが優勢にはなったが、突破口は開けないというものだろう。(ロシアには、ドニエプル)川まで突き進むのに十分な規模も実力もないだろう」とい見解を示しました。

 ワトリング博士にせよ、バロンズ大将にせよ、半分当たっているような、半分は確実に外しているような分析です。

 ロシアは、どこまでも西に西にと版図を広げ、新たなロシア帝国を築こうとしている、という、西側が勝手に流布した妄想を前提にし、思考が自縄自縛となっているから、このような分析になるのではないでしょうか。

 ロシア語話者が多い地域、ノヴォ・ロシア(新ロシア)と呼ばれる東部は、もともとロシア領であり、ソ連のフルシチョフ時代に、境界線を東にずらされて、ウクライナに組み入れられただけの地域です。

 ここには、黒海への出口があり、不凍港があり、工業地帯もあります。何よりも、ロシア人がウクライナ領に編入される前から、住んでいます。

 ロシア軍が、この地域の「領土」の奪還を目的としていない、というのは、ロシアの歴史を知らな過ぎます。

 もちろん、必要性に応じて、ロシア軍は、西漸(せいぜん・勢力や文化などが次第に西方に移っていくこと)し、中部にある首都キエフも落とすかもしれませんが、中部よりも以西のウクライナ西部の征覇と支配に、どこまで固執するか、その必要性とコストを考えたら、野心も意味も、あるとは思えません。

 西ウクライナのガリツィア地方は、ウクライナ語話者が多数を占め、ナチスと同化したバンデラを崇拝するネオナチの巣窟であり、過去の歴史を振り返れば、ポーランドの一部となったり、リトアニアの一部となったり、ナチスに同化したり、独立したウクライナの歴史を持ちません。中部のキエフのような、古都としての歴史もありません。

 ここをロシア軍が、地上軍によって、面として、征覇し、支配する意味は感じられません。ロシアからすれば、NATOの軍事拠点にさえならなければいいので、それは空爆ですみます。

 米国のバイデン大統領は、戦闘機F-16をウクライナに供与すると公言していますが、それに対して、プーチン大統領は、F-16がウクライナに入ってきた途端に破壊する、と断言しています。

 実際、ほとんどの兵器は、陸路で西ウクライナに入ってから中部・東部へ送られてくるので、西部に入ってきた段階で、破壊してしまうと、東部の前線には届きません。制空権を支配している限り、それは可能です。

 むしろ、彼ら英国人が見落としている、あるいはあえて言及していないのは、ウクライナ第3の都市であり、港町である、オデッサをロシアが落とすことであり、その先の沿ドニエストルとの回廊を開くことではないでしょうか。

 親ロシアの沿ドニエストルは、国境を南北に長く接するモルドバ共和国が、領有を主張して、過去に戦争となっています。

 この時には、ロシアと沿ドニエストルが勝利しましたが、ロシアと切り離された、孤立状態であると、いずれまた、領有を巡る戦争が起きかねませんので、ロシアがオデッサから、沿ドニエストルへと攻勢をかける可能性はゼロとは思えません。

※Ukraine could face defeat in 2024. Here’s how that might look(BBC、2024年4月13日)
https://www.bbc.com/news/world-europe-68778338

★ウクライナ軍が、絶望的な兵員不足にあり、さらに、現在従軍している兵士の希望を打ち砕くかのごとき動員法修正案を可決したことは、『日刊IWJガイド』4月13日号でお伝えしました。

※【第2弾! ウクライナ議会が、動員法修正案から除隊条項を削除! 3年以上兵役を務めた者の除隊権利を奪われ、徴兵逃れも厳罰化される!? 世論が反発!】(『ウクルインフォルム』11日、ほか) ウクライナ兵士は、除隊できず、戦死するか、不具者となって廃兵となるか、どちらかしか「出口」がない「永久兵士」とされてしまった! ウクライナ軍兵士は「誰かが、この国を内側から破壊しようとしている」とSNSに投稿! レーガン政権で外交アドバイザーを務めた保守系の論客ダグ・バンドゥ氏が2年前に「ワシントンはウクライナ人が最後の1人となるまでロシアと戦う」と予告し、IWJが当時、紹介した通りの展開に!
(日刊IWJガイド、2024.4.13)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240413#idx-7
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53402#idx-7

 ロシアでは、プーチン大統領が8割を越える支持を集めて3選し、その直後に、モスクワ近郊のクロックス・シティ・ホールがテロ集団に襲撃されて以来、自国を守ろうとする戦意が高揚し、ロシア軍への入隊希望者が激増しました。

 ロシア国防省によると、2024年頭からの入隊者10万人以上のうち、1万6000人はクロックス・シティ・ホール襲撃後の10日間に入隊した、と、『AFP』が4日付で報じています。

※ロシア軍への入隊、モスクワ銃撃後に急増(AFP、2024年4月4日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3513347

 また、西側諸国による過酷な制裁を受けてきたにもかかわらず、ロシア経済は順調に成長しており、2023年には実質GDP成長率は3.6%でした。

※2023年の実質GDP成長率は3.6%、内需が牽引(ジェトロ、2024年2月20日)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/02/f4a91dde588f6366.html

 ロシアの軍需産業も「何倍も拡大」しています。

 プーチン大統領は、2月2日、「ロシアの軍需産業の仕事は現在3交代制で休みのない、膨大なものとなっている。年間でみると何倍も増産している」と述べています。

 つまり、ロシアは、兵員、士気、兵器、経済のいずれをとっても、ウクライナを圧倒しています。時間が経てば経つほど、ロシア軍が有利になることは否定できません。

 プロパガンダを率先してきたNHKすらも、ミアシャイマー教授の卓見の発表から、6ヶ月も経過してから、「兵器、何倍も増産」と、ようやく報じました。

 ここでもしかし、「侵攻継続の姿勢示す」としていますが、ロシア側が、ずっと停戦交渉を求めていることは報じません。プロパガンダの鉄則である、ハーフ・トゥルース(半分は事実を交えたうえで、情報操作を行うこと)を崩していません。

※プーチン大統領「兵器 何倍も増産」侵攻継続の姿勢 改めて示す(NHK、2024年2月3日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240203/k10014345901000.html

(IWJ)

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 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

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IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵)

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